航空事故調査の完了が世界的に遅れている。最終報告までたどり着くのは半数以下。これでは空の安全確保がままならないとIATA/ICAOが警鐘を鳴らしている。

 



  • Photo: kcube - kaan baytur | Shutterstock


  • IATAが事故調査のコンプライアンス強化を求める


  • 最終報告書が作成される事故は、世界で半数に満たない

- 事故報告のコンプライアンスは世界的に低迷し、航空業界が事故から学び、安全基準を向上させることが困難になっている

- IATAの最新統計によると、2018年から2023年で事故242件のうち、最終報告書が提出されたのは47%で、うち12カ月以内に提出されたのはわずか39件だった

- リソース不足、熟練スタッフの不足、航空会社やパイロットによる犯罪化への恐怖などが要因だ



国際航空運送協会(IATA)は、事故報告のコンプライアンスと質の向上を目指しており、先月開催されたIATA世界安全運航会議(WSOC)で計画を発表した。

事故報告遵守の遅れ

民間航空旅行は今日、世界で最も安全な交通手段だが、IATAや国際民間航空機関(ICAO)は、業界のすべての利害関係者が厳格な安全基準に合致するよう努力している。

安全性の重要な側面のひとつは事故報告だ。事故原因に関する詳細情報がなければ、航空業界は事例から学び、改善ができない。残念ながら、世界中の事故調査機関はこの点で遅れをとっている。

IATAのウィリー・ウォルシュ事務局長は6月に以下述べた、

「事故調査プロセスは、世界的な安全基準を構築する上で最重要な学習手段です。しかし、事故から学ぶためには、完全かつアクセスしやすく、タイムリーな報告書が必要です」。

本誌は、9月にハノイで開催されたIATAのWSOC会議で、IATA安全担当グローバル・ディレクター、マーク・サールに話を聞いた。過去10年間、航空業界全体の安全基準は大幅に改善されたが、事故報告は年々悪化している。

IATAの最新の数字によれば、2018年から2023年の間に報告された242件の事故のうち、最終報告が出たのは113件(47%)に過ぎない。ICAO付属書13では、事故調査官は30日以内に予備報告書を提出し、その後12カ月以内に詳細な最終報告書を提出しなければならないとある。この期間内に最終報告書をまとめることは必ずしも可能ではないが、12カ月以内に提出できた最終報告書は113件のうち39件しかなかった。

複雑な問題

報告書の水準が十分でない理由には、さまざまな要因が絡んでいる。まず最も明白なのは、多くの国家が調査を適切に進めるリソースを欠いている。業界全体で深刻な人材不足があり、調査機関も適切な人材の確保に苦労している。

香港エクスプレス航空のルーベン・モラレス安全・リスク管理部長によると、航空会社やパイロットによる「犯罪化への恐れ」も調査プロセスを妨げ、事故に最も近い立場にある者が自由に情報を漏らすことを躊躇させる。

さらに、複数機関が調査に関与することが多く、ある程度の競争が生じている事実もある。

これにどのように対処できるだろうか。ICAOには事故調査機関に罰則を科す権限がないため、業界間の調整に重点を置き、事故報告の重要性を強調している。多くの地域では、高レベルの事故調査を行うリソースや訓練が不足しているため、IATAは訓練基準を強化し、各国に十分なリソースを確保したいと考えている。

IATAのサールは一部地域でリソースをプールするアイデアも提案した。独立した事故調査官を擁する国は世界で約40%に過ぎないため、地域調査機関を設立すれば、基準が大幅に上がるだろう。

報告書を提出するだけでなく、質の高い詳細な情報の提供を強調する声が業界に多い。事故では予備報告書の提出を必要とするが、調査官が詳細な最終報告書をまとめることができないのが現状だ。■

IATA Calls For Greater Accident Investigation Compliance

BY

LUKE BODELL


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