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2025年11月18日火曜日

ドバイ航空ショー:エミレイツが777Xを65機追加発注、777-10の事業化調査を支援(Aviation Week)

 


Emirates order announcement

エミレイツ航空会長兼CEOのシェイク・アハメド・ビン・サイード・アル・マクトゥーム(中央)が、ボーイングのステファニー・ポープとGEのマヘンドラ・ナイルに挟まれ777X発注調印式に出席した。

クレジット:ビリーピックス

ドバイ発―エミレイツは、ドバイ航空ショーで777X型機を65機追加発注して、777Xのさらに大型型の開発・投入をボーイングに説得しようとしている。

エミレイツ会長兼CEOのシェイク・アフマド・ビン・サイード・アル・マクトゥームSheikh Ahmed Bin Saeed Al Maktoumは、ショー初日に、777-10の開発に向けた「事業化調査」を同社が支持すると表明した。また、ボーイングがこれを進める場合、新規注文を777-8または将来の-10のいずれかに変更する権利を有すると述べた。

アル・マクトゥームのこの発言は、ボーイングの上級幹部たちを驚かせたようだ。ボーイングの製品戦略・製品開発・開発プログラム担当上級副社長マイク・シネットMike Sinnettは「現時点では777-9、-8F、-8にのみ注力している」と述べた。

シネットはさらに、同社は他の機種の製品開発調査を継続しているが、潜在的な777-10の延長型構成がどのようなものになるか結論を出すには「時期尚早」だと付け加えた。この発注は、同僚のステファニー・ポープが777-9が数日中に次の認証段階へ進むことを確認した翌日に発表された。

ただしシネットは、777-9に搭載されているGEエアロスペースのGE9Xエンジンが、機体延長型に必要な推力を余裕で賄えると認めた。777-9向けGE9Xの定格推力は105,000ポンドだが、地上試験では既に134,000ポンドの推力を実証済みだ。

エミレイツのティム・クラーク社長の過去のコメントから推測すると、777-10は、ベースラインの777-200から777-300/300ERや777-9への当初の飛躍と比較すると、比較的控えめな延長となるだろう。オリジナルの777-300ERは全長242フィート(約73.8m)に延長され、エアバスA380より約4フィート(約1.2m)長くなった。これは後部胴体を9フレーム(189インチ/約4.8m)延長し、前部胴体を10フレーム(210インチ/約5.3m)増設した結果である。 777-9では、さらに9フィート(約2.7m)の胴体延長が行われ、同時に主翼端延長部(6.5フィート=約2m)を追加することで翼幅を212フィート(約64.6m)に拡大した。

エミレイツは数ヶ月間、大型双発機の導入を積極的に推進しており、ボーイングに対し777Xのさらなる延長を、エアバスに対しA350-1000を超える旅客収容能力を持つA350派生型大型機の開発を迫っている。

ボーイングが777Xのさらなるストレッチ型を検討する姿勢を示したことで、エアバスはA350の大型派生型機開発を迫られる形となった。エアバスのギヨーム・フォーリーCEOは今年初め、本誌に対し、そのような機種は長期的には論理的な一歩となり得るが、現時点では現行機の生産拡大に注力していると述べていた。

エミレイツはA380の最大運航会社であり、2040年代初頭まで同機の運航を継続する計画だ。同社はA380に可能な限り近い座席数を備えた代替機を求めている。同等の客室レイアウトで比較すると、777-9はA380より140席少ない。「エアバスがA380生産を停止した後、777-9が最大の航空機だ」とアル・マクトゥームは述べた。

今回の777X追加65機の発注は、既に発注済みの777X(-8、-9、-8Fを含む)205機に上乗せされる。エミレイツは現在、ボーイング機315機(787型機30機を含む)の未納入分を抱えている。アル・マクトゥームによれば、777Xの納入は「2038年まで継続する」という。「各機体がエミレイツの成長計画に慎重に組み込まれていることを保証する」と同氏は付け加えた。

エミレイツは当初2020年に最初の777-9を受領予定だった。ボーイングは最近、初号機納入時期を2026年から2027年に延期したため、同社の成長計画達成は困難となっている。これに対しエミレイツは、777-300ERのリース延長や、現役機への新型ビジネスクラス座席の装備などに対応している。

エミレイツはGEエアロスペース製GE9Xエンジンを130基追加発注した。エミレイツ副社長アデル・アル・レダは、787の注文には変更なく、交渉の対象にもならなかったと述べた。■

イェンス・フロタウ

ドイツ・フランクフルトを拠点とするイェンスは、エグゼクティブ・エディターとしてアビエーション・ウィーク・ネットワークの民間航空担当グローバル記者チームを統括している。

ガイ・ノリス

ガイはアビエーション・ウィークのシニア・エディターとして、技術と推進システムを担当している。コロラドスプリングスを拠点とする。


Emirates Orders 65 More 777Xs, Supports 777-10 Feasibility Study

Jens Flottau Guy Norris November 17, 2025

https://aviationweek.com/air-transport/aircraft-propulsion/emirates-orders-65-more-777xs-supports-777-10-feasibility-study



2025年11月17日月曜日

エミレイツは大型の新型機材を望んでいるのに誰も耳を傾けてくれないと不満(Aviation Week)

 

Emirates

ルフトハンザグループの主力航空会社のCEOとして、イェンス・リッターは多様なワイドボディ機を管理することに慣れている。同社は長距離路線でエアバスA330、A340、A350に加え、ボーイング787と2世代の747を運航している。ルフトハンザの系列会社であるスイス航空、オーストリアンエアラインズ、ブリュッセル航空を加えると、ボーイング777や767などさらに多くの機種が混在する。

しかしリッターが最近振り返ったように、長年にわたる機材更新計画を経て、ルフトハンザは次期ワイドボディ機である777-9の納入を待つ身であり、その後継機については明確な計画は存在しない。ボーイングとエアバスはそれぞれ2030年代に新型ナローボディ機を提供する可能性について議論している。しかし、次に商業運航に投入される完全新規のワイドボディ機は、中国のCOMAC C929となる可能性が高い。あるいは、真の長距離飛行を想定していない外部からの破壊的技術であるJetZeroのZ4ブレンドウィングボディ(BWB)となるかもしれない。

  • 新ワイドボディ機の計画はCOMACのC929以外見当たらない

  • エンジンメーカーは高推力要求に対応可能

中小型ワイドボディ機では、787とA350がそれぞれ14年と10年の運用歴を持つものの、比較的新しい機種として利用可能だ。これらの機体は、ボンバルディアが開発したエアバスA220を除けば、ボーイングとエアバスによる最新の新規開発機である。しかし大型ワイドボディ機となると、A380に採用された技術は概ね前世代のものであり、747-8は1960年代の象徴的なボーイング機を基にしている。無論、A380も747-8も生産は終了している。

大型ワイドボディ双発ジェット機は、現代の高容量航空輸送システムの基幹を担っており、420名以上の乗客を収容可能なボーイング777-9の登場により、さらに大型化が進む。

しかし全長251.9フィート(約77.2メートル)、重量775,000ポンド(約352トン)に達するこの大型双発機は、進化の頂点に達したのだろうか?仮にさらに大型の双発機が実現可能だとしても、そんな巨大機に対する市場は存在するのか?

「ビジネスケースは見当たらない」とエアロダイナミックのリチャード・アブラフィア社長は語る。しかしエアバスA380の導入を主導したエミレイツのティム・クラーク社長によれば、最大級の双発機であるA350-1000と777-9のさらなる大型化は実現可能であるばかりか、業界の長期的な成長に不可欠だという。

「私は(ボーイングに)777-10の開発を強く求めている」とクラークはスペインで開催されたAPGワールドコネクト会議で述べた。「我々は基本的に同機が欲しいと伝えている」。777XとA380の投入を主導した航空会社幹部として、クラークは大型機を理解している。同様に重要なのは、より高容量の航空機の開発可能性だ。

こうした成長計画の核心は、エンジンメーカーが大型機に必要な追加出力を処理できる能力にある。第二世代大型双発ジェット機(A330と777)のエンジン出力向上は、1990年代に現在のA330neo、A350、777-300ER、777X、787向けにさらに大型エンジンを開発する基盤を築いた。アブラフィアは「GEでなければ、他の分野での存在感が危うくなる」と指摘し、大型エンジン開発に必要な巨額の投資を強調している。

双発機のエンジン推力増加率は、初代ワイドボディ機(双発・三発・四発機)向けターボファンエンジンの世代より急激に進んだ。この傾向は、空力特性と軽量構造の改善と相まって、過去20年間で双発機が不釣り合いなほど大型化する要因となった。

推力成長率がより速い理由は単純だ。双発機は単発エンジン故障時でも安全な離陸を継続できる必要があるため、三発機や四発機に比べエンジン1基あたりの推力が大幅に大きい。離陸時にツインジェットがエンジンを1基失うと、総推力は50%減少する。一方、三発機四発機では単発エンジン故障時の総推力減少率はそれぞれ33%、25%に留まる。ツインジェットは上昇に必要な最小推力の2倍を供給しなければならないが、三発機は150%、四発機は133%で済む。

この計算に基づき、GEエアロスペースが出力規模の上位分野で優位性を確立したのは1999年である。当時ボーイングが777-300ER向けGE90-115Bエンジンの開発を同社に委託したことを受け、GE90への追加投資を決定した。2013年には777X向けGE9Xエンジンの単独供給契約を獲得し、その地位を確固たるものとした。

エミレイツのA380は2026年末までに110機へ拡大予定だ。クレジット:エミレイツ

ロールスロイスはエアバスと同様の立場にあり、A330neo向けトレント7000とA350向けトレントXWBを供給している。XWBは最大推力10万ポンドに達するが、英国のエンジンメーカーは現行A350用エンジンの段階的改良を計画し、ギア付きウルトラファンエンジンで高推力を提供する方針だ。

「GEは『問題ない、対応可能だ』と表明している」とクラークは述べた。「これはエミレイツの未来を担う機体だ。150インチ(約3.8m)、おそらく14フィート(約4.3m)の延長は可能だろう。対応範囲内であり、ボーイングも我々の意図を理解している」ので、提案されている777-10は、クラークの見解では、ベースラインの777-200から777-300/300ERや777-9への当初の飛躍と比較すると、比較的控えめな延長となる。

基本型777-200と比較すると、777-300ERは全長242フィート(約73.8m)に延伸された。これはA380より約4フィート(約1.2m)長い。具体的には後部胴体を9フレーム(189インチ=約4.8m)延長し、前部胴体を10フレーム(210インチ=約5.3m)増設した。翼幅も6.5フィートの翼端延長部を追加し、212フィートに拡大された。

777Xはこれらをさらに発展させ、機体を全体で9フィート延長。全長は251フィート8インチとなった。

しかし777-9における最も大きな寸法変更は、巡航効率向上・高高度飛行・航続距離延長を目的とした翼幅26フィート(約7.9m)の拡大である。翼幅を238フィート10インチ(約72.7m)に拡大するため、全く新しい高剛性複合材製主翼を採用し、空港対応性を確保する12フィート(約3.7m)の折り畳み式翼端部を組み込んだ。翼の揚力対抗力比向上に伴い、搭載されるGE9Xエンジンの離陸推力は105,000ポンド(約47.2トン)が必要となり、777-300ERのGE90-115Bエンジンより10,000ポンド(約4.5トン)低くなった。

「そもそも-9型について言及していたのは当社だけだった」とクラークは述べ、-10型の延長によりエコノミークラスに最大6列を追加できると付け加えた。「現時点で-10型は当社にとってかなり独自のものだが、他社がこちらの取り組みを見れば、おそらく同様のものを求めるだろう」と彼は指摘する。

仮にボーイングが大型の777Xを投入しても、同社の需要予測には届かない可能性があるとクラークは指摘する。特にエミレイツがA380の段階的廃止を計画している現状ではなおさらだ。「需要との差は縮まるが、依然として大きなギャップが残る」と彼は語った。

「現在の需要は極めて強い」と彼は付け加えた。「販売する座席1つにつき、3人が待機している。これを直線的に推計すると、10年後にはどうなるか?本当に機体サイズを縮小すべきか?最終的に退役する100機のA380を考えてほしい。現時点で最も近い代替機は777-9だ」と彼は言う。「即座に140席のギャップが生じる。つまり、私が対応すべき需要増加分は小型機では賄えず、より大型機が必要だ」。

しかしエンジンメーカーが推力増強要求に対応可能と主張する一方、エアバスとボーイングは新型派生機の開発意欲があるのか?ボーイングに関しては、クラークは現実的な見解を示している:「(ボーイングを)責めるつもりはない。彼らは数々のプログラムを苦境から脱却させ、軌道に乗せようとしている。777は痛手だが、それでも徐々に前進している。当社の取締役会は『新たに200億ドルを投じて新機体を開発する』とは考えていない」

エアバスのギヨーム・フォーリーCEOは6月の本誌でこう語った:「当社は慎重に物事を考える必要がある。777XはA350-1000よりやや大型の機体だ。だから当然の疑問だ。-1000は既に就航しており、生産は拡大中だ。ワイドボディ市場の大きなシェアを成功裏に占めており、需要が供給を上回っている。だから、生産能力の拡大が限られている状況で、製品ラインの多様性を増すような追加の措置を取る必要性は感じていない。短期的には、製品ラインナップを複雑化させる必要はない」(AW&ST 6月16-29日号、58ページ)。

ただしフォーリーは「将来的に、-900型から-1000型を経て、さらに全長・容量を増大させ、座席数で777Xに迫る性能を備えた機種へと進化させるのは、製品ラインの自然な流れだろう」と付け加えた。

重要な問題は、エミレイツ以外の超大型機市場が存在するかどうかだ。787とA350の就航以来、業界では分断が進んでいる。一方でA380と747の受注は減少している。しかし777Xは、遅延にもかかわらず受注残が堅調だ。大型航空機は主要ハブ空港で必要とされるかもしれない。しかしインディゴーなど新規参入企業はA350やA321XLRに賭けており、これは市場細分化の加速を示しているようだ。「ボーイングは(市場細分化を)正しく予測していたが、その予測がどれほど正確か理解していなかった」とアブラフィアは述べた。

将来のワイドボディ機では機体延長も選択肢の一つだが、現在の中型・大型双通路機の後継機となる次世代機の基本設計となり得る他の代替案も登場しつつある。選択肢は、ロールスロイス・ウルトラファンのような先進エンジンを搭載したneo式アップグレードによる現行A350や787のエンジン交換から、従来の胴体と翼の組み合わせから脱却するBWB機のような長期的コンセプトまで多岐にわたる。

BWBは本質的に多客室断面構造でワイドボディの概念を再定義するが、そのコンパクトな構成から、対象市場の大半は中型セクター、あるいは現行の大型単通路機と小型ワイドボディ機の間のグレーゾーンに収まる可能性が高い。しかしカリフォーニアに本拠を置くBWBの開発企業ジェットゼロは、2027年に実物大実証機の初飛行を目指す中で、自社の設計は主流のワイドボディ機セクターへ拡張可能な十分な柔軟性を有すると述べている。

JetZero

同社が「Z4」と命名した初期BWBは170~290名の乗客を輸送可能であり、提案中の後継機「Z5」は300~370名の収容が可能だと同社は説明している。同社は、NASAの「環境持続可能性のための先進航空機コンセプト(AACES)2050」プログラムにおいて実証契約を獲得した。同プログラムは将来の単通路機およびワイドボディ機向け技術に焦点を当てている。

NASAの先進航空輸送技術プロジェクトとしてAACESは、先進航空機プログラムに属し、新たな航空機システム向け技術の評価・開発および有望な航空旅行コンセプトの探求を行う。最近の厳しい予算削減で縮小が予想されるものの、初期段階では代替航空燃料、推進システム、空力技術、機体構成などの技術領域に焦点を当てている。

エアバス、ボーイング、欧米のスタートアップや研究グループ以外に、注目すべきワイドボディ機プロジェクトは中国の新鋭機COMAC C929とC939だけだ。標準レイアウトで282名の乗客を最大6,500海里(約12,000km)運航する設計のC929-700は、787-9と同等のサイズと性能を持つと見込まれている。■


Emirates Wants Larger Jets, But Will Anyone Listen?

Guy Norris Jens Flottau Victoria Moores November 13, 2025

https://aviationweek.com/air-transport/aircraft-propulsion/emirates-wants-larger-jets-will-anyone-listen




2025年11月11日火曜日

エミレイツはエアバスA380を豪華な空の旅の象徴に変えた(Simple Flying)

 


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Credit: 

Shutterstock | Simple Flying

エアバスA380は史上最大の旅客機でプレミアムなイメージを大きく形作っている。この機体は静粛性、広々とした空間、良好な機内気圧でも有名だ。だがこれらは全て製造元であるエアバスの功績だ。時には機体そのものだけでなく、航空会社による構成で機体のイメージを決定づけることもある。

エミレイツはエアバスA380を豪華旅行の象徴へと昇華させるため多大な貢献をした。多くの人々が豪華な空の旅を想像する時、小型のビジネスジェットか、この巨大な二階建ての四発旅客機のいずれかを思い浮かべるだろう。エミレイツがA380をステータスシンボルへと形作った経緯について知っておくべきことを以下に述べる。

エミレイツはエアバスA380に「全面的に賭けた」

Emirates Airbus A380 at Dubai International airport (DXB) in the United Arab Emirates.クレジット:Shutterstock

エミレイツはエアバスが販売したA380スーパージャンボ(251機)の半数(123機)を購入した。このジェット機に「全面的に賭けた」唯一の航空会社であり、2番目に多い発注社(24機)はシンガポール航空だ。エミレイツはA380を自社の主力機種の一つ(もう一つはボーイング777)に据えた。これほど多くのA380を購入したことで、エミレイツはほぼ単独でA380プログラムを支えた。そして同社が39機の注文を削減したことが、エアバスにプログラム終了を発表させる原因となった。

ほとんどの航空会社は、A380を処分したか、機材を縮小したか、あるいは後継機となる777XやA350が到着次第、すぐに手放そうと躍起になっている。これらの航空会社にとっての問題の一端は、小規模あるいは中規模の機体数で運航する場合、少数の同型機を維持するため高価な物流・整備・訓練システムを維持しなければならない点にある。2024年、エミレイツは世界で最も収益性の高い航空会社だった。これは同社がA380をいかに収益性の高い形で運用してきたかを物語っている。

エミレイツはA380を非常に高く評価しており、エアバスに対し改良型「エアバスA380neo」の生産再開を要請した。しかしエアバスは真剣に検討していない。同機は高コストであり、エミレイツ以外の買い手を見つけるのは困難と想像できるからである。エミレイツのティム・クラークCEOは、他社航空会社がA380を注文しなかったのはエミレイツを弱体化させるためだとまで発言している。

エミレイツのプレミアムキャリアとしての地位

Emirates cabin crew boarding passengersクレジット:Shutterstock

エミレイツはA380を豪華な象徴として位置づけることに大きく貢献した。とはいえ、エミレイツの役割を過大評価すべきではない。A380は長距離路線向けに設計されており、こうした路線は国営航空会社が支配している。つまり、この機体を運航する全航空会社(例:BA、シンガポール航空、カタール航空、ルフトハンザなど)も、同機でプレミアム座席とサービスを提供している。

エミレイツはスカイトラックスの世界トップ100航空会社ランキングで常にトップ5入りしている(ただし1位と2位は通常カタール航空とシンガポール航空だ)。2025年にはキャセイパシフィック航空に次ぐ世界第4位、ANAを上回る評価を得た。他社同様、エミレイツもA380に豊富なプレミアム座席オプションを装備し、ほとんどの機体でファーストクラスを提供している。

エアバスA380の主要顧客(エアバス調べ)

エミレイツ航空 123機

シンガポール航空 24機

ルフトハンザドイツ航空 14機

ブリティッシュ・エアウェイズ 12機

カンタス航空 12機

とはいえ、エミレイツのA380プレミアム座席が必ずしも最高とは限らない。例えば、エミレイツがファーストクラスに割り当てた床面積には14のスイートが詰め込まれている。同じ面積でエティハドは10スイート、シンガポール航空はわずか6スイートしか設置していない。つまり、これら2社と比べると、エミレイツのファーストクラス座席あたりのスペースはかなり限られている。

エミレイツの「空のバー&スパ」

Emirates Airbus A380 in flight cocktail bar and lounge.

クレジット:Shutterstock

エミレイツがA380の豪華さを象徴する要素として導入した注目すべき施策の一つが、バーとシャワースパの設置だ。これらはファーストクラスとビジネスクラス客向けのデッキ上部に位置する。シャワースパとバー付き機内ラウンジを利用すれば、まるでプライベートジェットで飛んでいるような気分になれる。機内ラウンジの奥には大型テレビまで設置されており、衛星テレビの生中継を視聴可能だ。

機内ラウンジ導入の決断はリスクを伴うものだった。当時エミレイツは人気が出るか確信がなく、ビジネスクラス8席追加のコストに相当するため高額だった。ラウンジは96時間でビジネス席に再構成可能な設計となっていた。しかし間もなくラウンジが大成功であることが明らかになった。乗客は足を伸ばす口実を得て、専用のバーフードメニューを楽しめるのだ。

皮肉なことに、ボーイング747ジャンボでは逆の事情があった。ボーイングは当初、上層デッキをラウンジとする構想を持っていた。これが初代747-100の上層デッキ窓が極端に少なかった理由の一つだ。しかし航空会社はこのスペースをプレミアム座席に充てた。エミレイツA380のファーストクラスやビジネスクラスに搭乗した経験を持つ者は少なくても、機内にシャワーやバーが設置されていることは広く知られている。

A380とエミレイツブランドの結びつき

A380の半数を購入したことで、エミレイツは同機を自社の象徴とすることができた。他のどの機種も、これほど単一航空会社に独占されたことはない。エミレイツはボーイング777の最大運航会社でもあるが、同機は多数の航空会社が大量に運航しており、777をエミレイツのブランドイメージと結びつける機会は同程度には存在しない。

おそらく、コンコード以来の出来事だ。コンコードは誰もが認識できる唯一無二のジェット機であり、一般に広く知られる存在となった。ブリティッシュ・エアウェイズとエールフランス(短期間シンガポール航空も)のみがコンコードを運航した。これらの航空会社は特殊な機体を活用してブランドイメージを構築し、大西洋横断の高速路線を提供する唯一の航空会社となった。同様に、エミレイツはプレミアムキャリアとしての自社ブランドイメージを活用し、A380に対する認識を形成してきた。

コンコルドとスーパージャンボで共通する利点がもう一つある。認識のしやすさだ。航空機マニアの大半はA330、A350、787、777を容易に見分けられるが、一般の搭乗客はそれができない。巨大な2階建てのA380を見れば、ほぼ誰もが即座に認識する。対照的に、シンガポール航空がA350を主力機として導入しても、乗客の大半は見ただけではA350と787の区別がつかないだろう。

エミレイツの今後の展開

Boeing 777X newly built aircraftクレジット:Shutterstock

今後、エミレイツはA380の客室改装に数十億ドルを継続投資する。これにより全座席とレイアウトが近代化されるが、最も重要な点は通常エコノミー席を減らして56席のプレミアムエコノミー席を追加することだ。次の構成ではファーストクラス14席とビジネスクラス76席の数は変わらない。

エミレイツはA380と777の2機種体制からも脱却しつつある。同社は2024年末に初のA350を受領し、現在65機の注文機を急速に引き取っている。まもなく787ドリームライナーの受領も開始する。しかし最も注目すべきは777Xの大量発注だ。777Xは、エミレイツがA380と同様に大幅な影響力を及ぼす機種になるかもしれない。

ボーイング777Xの主要発注状況(ボーイング発表)

エミレイツ航空 205機

カタールエアウェイズ 124機

キャセイパシフィック航空 35機

シンガポール航空 31機

ルフトハンザドイツ航空 27機

777Xの確定発注565機のうち、エミレイツ航空だけで205機、ライバルであるカタールエアウェイズが124機を発注しており、2社だけで現在の受注の約半分を占める。中東の航空会社が次世代トリプルセブンを豪華旅客機としてA380の後継機に変えられるかは時間の問題だ。とはいえ777XはA380とは違う。777Xは生産中の機材として世界最大となるが、A380ほどの独自性や革新性は持ち合わせていない。

エアバスA380対ボーイング787ドリームライナー

エミレイツ航空がA380のイメージ構築で成し遂げたことは、ボーイングが787ドリームライナーで実現したものと類似点があると言える。違いは、ボーイングが先進複合材料を主体とした次世代旅客機を初めて開発した点だ(A350はその4年後に登場)。787は大型調光窓を導入した。重要なのは、窓は一般乗客が実際に気づく部分だということだ。

ドリームライナーは、より高い客室気圧や湿度向上など、ボーイングがマーケティングに活用できた数々の革新技術をもたらした。その驚異的な航続距離により、従来は大型機が独占していた世界の長距離幹線路線を運航可能にした。A380キラーでありハブ破壊機とも報じられたが、どちらも部分的に真実だ。ボーイングが787を「モダン」と謳う一方、エミレイツはA380を「豪華」と位置付けた。

時に些細な要素が、極めて複雑な製品のイメージ形成に大きく寄与する。ボーイングが「ドリームライナー」という名称を採用した点自体、見事なマーケティング戦略だったと言える。今後、エミレイツのA380機群は中堅年齢に達し、新型787や777Xへの置き換えが進むにつれ、その数は減少する見込みだ。エミレイツはまた、一部を稼働させ続けるために、自社機群をますます食い潰す必要に迫られるだろう。エミレイツがA380で達成したマーケティングの成功を、新型777Xで再現できるかは時が証明するはずだ。■


How Emirates Turned The Airbus A380 Into A Luxury Icon The World Can’t Forget

By 

Aaron Spray

https://simpleflying.com/emirates-airbus-a380-luxury-icon/


アーロン・スプレイ

アーロンは飛行と世界旅行に情熱を持っている。世界中の航空博物館を訪れることを心がけながら、世界一周飛行を何度も経験した。ニュージーランド出身で、航空分野はじめ様々な分野に精通している