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Showing posts from September, 2022

エナジーインフレで航空宇宙産業が直撃を受ける予想は本当? 

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    金融アナリストは、エナジーコストが長期的な問題になった場合、エンジンサプライヤーが最も影響を受ける可能性があると述べている Credit: MTU     冬 を前に航空宇宙・防衛産業では、エナジーコスト上昇により事業が冷え込むと懸念する声が聞かれる。しかし、この見通しは正しいのだろうか? 北半球の秋の始まりとともに、航空宇宙・防衛を担当する金融アナリスト陣は、ヨーロッパでのエナジーコスト上昇に注目している。ロシアからのエナジー供給に長く依存してきたヨーロッパ諸国は、2月にウクライナ侵攻を開始したロシアとの間で、この冬、経済戦争の悪化に直面している。 メリアス・リサーチのアナリスト、ロブ・ワートハイマーRob Wertheimerは8月29日、「この1、2週間で目にしたヨーロッパのエナジー価格に関するネガティブなニュースの中で、最も衝撃を受けたのは、天然ガスが原油1バレル相当で500ドルになるとしたニュースだった」と述べた。 9月2日、オランダのアルミニウムメーカー、アルデルは、エナジー価格の高止まりと政府の支援不足を理由に、ファームスム工場の生産停止を発表した。ロイター通信によると、ガスと電気の価格が2021年の水準に比べ今年数百パーセント高騰しているため、アルデルはヨーロッパでの生産を削減または停止する企業のリストに加わった。 当然ながら、航空宇宙・防衛分野の企業は、給与、原材料、商品輸送のインフレにかかわらず、事業コストの上昇に苦しんでいる。エナジー価格の上昇は、原材料、商品輸送の成長見通しを直接下支えする。 レイセオン・テクノロジーズの会長兼社長兼CEOグレッグ・ヘイズGreg Hayesは、9月14日の投資家会議で、「明らかにインフレだ」と述べた。「サプライチェーンでは、原材料とエナジーが主な対象だ」。 ヘイズは、米国に拠点を置くスーパーティア1の航空宇宙・防衛サプライヤーが、製造、エナジーコスト、出荷における経費削減の計画を再検討していると述べた。この計画は、コストが低いときにはあまり意味がなかったが、今は違う。「私たちはこれまでの計画を再検討しており、各プロジェクトは、山の頂上へと向かっています」と彼は言います。 しかし、コンサルタント会社ジェフリーズが9月9日に発表したレポートによると、エナジー関連の危機が発生しても、航空宇宙・防衛産業が最初

COVID後の民間航空の10年予測から。アジア太平洋の復活、機材需要、アフターマーケット需要などのご紹介

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  Credit: Nigel Howarth / Aviation Week   ア ジア太平洋地域は、長距離路線や国際線利用が多いため、旅客需要が2019年水準に戻る最後の主要地域となるだろう。  しかし、アジア太平洋地域は、航空機保有機数の増加、アフターマーケット活動の増加でグローバルリーダーとしての地位をすぐ取り戻しそうだ。   エイビエーション・ウィークの予測チームが最新の10年間のフリートおよびMRO予測の仕上げを行っているが、出てきた予備予測は驚くにはあたらない。アジア太平洋地域の輸送機は、2032年まで年率4.5%で成長し、10年で9,100機から約13,600機に増加すると予想される。この数字には6,500機の新規納入が含まれるが、約2,000機の退役で一部相殺される予測だ。  一方、短期的な需要の高まりが予想されるため、現行の機材は多忙を極める。他の回復の早い地域を参考にすれば、航空会社が待望のビジネス上昇に備え、サプライヤーやアフターマーケットプロバイダーは安定した仕事量の増加を期待できる。   注意しなければならないのは、納期だ。需要の高まりとサプライチェーンの制約(労働力から材料の入手可能性に至るまであらゆるものが寄与)が相まり、運航会社は、機体がすぐに使えるように、さらに先の計画を立てなければなならない。  「航空会社が大量の在庫を抱えているとは思わない」と、OEM代替部品専門会社 ハイコ Heicoの共同社長であるEric Mendelsonは最近の決算説明会で述べている。「当社が供給したものの多くは、航空機に直接搭載されると思います。しかし、業界全体では、サプライチェーンや現状について社員と話すと、材料、部品、サービス、あらゆるもののリードタイム、見積もり作成が大幅に伸びていることがわかります。その結果、航空会社はニーズを先取りして購入していると考えるのが自然でしょう」。  ハイコは、7月31日終了の第3四半期で商業用部品およびサービスの売上が24%急増したと発表した。この数字は、他のアフターマーケット・ビジネス・ラインと同じである。   レイセオン は、 プラット&ホイットニー と コリンズ・エアロスペース の両ユニットにおける商用アフターマーケット売上は、2022年には前年比20〜25%成長する見込みとしている。ナローボディ機の好

台湾も海外渡航客の制限を緩和へ。残るは中国本土だけだ。

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  台湾は今週、規制を一部解除するが、COVIDの新たな悪化がなければ、検疫体制の終了は数週間先になりそうだ Photo: Vincenzo Pace I Simple Flying China Airlines IATA/ICAO Code:  CI/CAL Airline Type:  Full Service Carrier Hub(s):  Taoyuan International Airport Year Founded:  1959 Alliance:  SkyTeam Airline Group:  China Airlines Group CEO:  Hsieh Shih-Chen Country:  Republic of China EVA Air IATA/ICAO Code:  BR/EVA Airline Type:  Full Service Carrier Hub(s):  Taoyuan International Airport Year Founded:  1989 Alliance:  Star Alliance CEO:  Chen Hsien-Hung Country:  Republic of China  アジアの観光客受け入れ再開の動きの中で、中華民国(台湾)は光明を見いだし、世界の航空路線に再度乗り込む。今週末、台湾は日本と香港の同様の発表に続くと、中国と北朝鮮という2つのアジア市場が国境閉鎖政策に固執したまま残る。 台湾の航空会社には余力がある エバー航空含む台湾の主要航空会社は、入国制限がなくなれば、ワイドボディーを導入する予。写真:Vincenzo Pace Vincenzo Pace I Simple Flying  国境を開放し、観光客を歓迎することは、台湾の2大航空会社である チャイナエアライン と エバーエア にカンフル剤となるだろう。両社で合計184機を保有し、うち20%にあたる36機はch-aviation.comデータベースで非稼働とあるが、ワイドボディ機のほとんどは稼働中だ。チャイナエアラインはエアバスA330-300を18機、A350-900を13機、ボーイングB777-300ERを10機保有しており、非稼働のワイドボディ機はわずか5機だ。エバーはA330を11機、B777を34機、B787

米国で深刻なパイロット不足のしわ寄せを一番大きく受けるリージョナル各社。路線削減や減便を余儀なくされている事情。

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  Source: SkyWest Airlines ケ ープエア  Cape Air、 コミューテア CommutAir、 スカイウエストエアラインズ SkyWest Airlinesなど全米のリージョナル航空各社は、パイロット不足の影響を一番深刻に受けている。  航空需要急増に対応し、米国の大手航空会社がリージョナル航空会社の機長を「ストリップマイニング」していると、コミューテアのCEOロック・ヘフラーRock Hoeflerは9月20日、ワシントンDCの年次リージョナル航空会社協会(RAA)リーダー会議でFlightGlobalに語った。  エンブラエルERJ-145でユナイテッドエアラインズ向けフライトを運航するコミューテアー(本社クリーブランド)やその他リージョナル各社にとって、機長不足の解消が大きな問題になっている。 「各社の状況は全く同じです」(ヘフラー)。  会議では各社幹部から、収益や米国内の各地域でのサービス提供能力の観点で、リージョナル航空会社がパンデミックによる低迷から完全に立ち直るには10年かかるとの声が出た。  スカイウエストCEOのチップ・チャイルズChip Childsは、「5年か10年先には、非常に良い回復になりそうだ」と言う。「しかし、業界は、おそらくまったく別の姿になっていると思う... 今と別の収益モデルにする必要があるかもしれません」 。 路線削減、縮小 米リージョナル航空業界で急激な縮小が進んでいる。3月、ユタ州セントジョージに拠点を置くスカイウエスト(アラスカ航空、デルタ航空、ユナイテッド航空と契約)は、パイロット不足を理由に小都市29地点へのフライトを取りやめた。  また、今春、ユナイテッドはリージョナルネットワークで数十路線を削減した。へフラーは、コミューテアがパイロットを何人の雇う予定か明言を避けたが、同社にパイロットが不足していることは認めている。  「当社はユナイテッド専属で飛んでいるので、ユナイテッドが資産をどこに割り振るか次第で厳しい選択をしなければならない」とへフラーは言う。「104機あるのに、64機しか飛ばせないというのは、明らかにプレッシャーだ」。  ケープコッドを拠点とするリージョナル航空会社のケープエアも同様で、長年サービスを提供してきたカリブ海の4地点への運行を最近減らしたと、CEOのリンダ・マ

動員令はロシア航空業界も巻き込み、航空会社、空港職員へしわ寄せが押し寄せている

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  ロシアのパイロット多数は、軍事訓練を受けている。 Photo: Getty Images 動員令発表の翌日から、ロシア航空会社・空港の職員多数に通知が届いている プ ーチン大統領による部分的動員令を受け、ロシアの航空会社や空の職員も徴兵通知を受け取り始めている。今回の展開について詳しく見ていく。 航空会社社員へ徴兵通知が届く プーチン大統領がロシア軍予備役の一部動員を命じたことを受け、フラッグ・キャリア アエロフロート を含む航空会社少なくとも5社とロシア国内の10空港の職員多数に徴兵通知が送付された。  航空会社や航空関係者は、動員令発表の翌日に通知を受け取ったとされる。ロシアでは、民間航空会社パイロットの大半が、軍の飛行学校で訓練を受けた予備役か、兵役を終えた二等兵だ。  航空管制官連邦労働組合は、航空管制官多数が通知を受け取っていると発表した。同組織は、ミハイル・ミシュティンMikhail Mishustin首相に個人的免除を求める手紙を出したという。  ショイグ国防相は2日、予備役約30万人が招集され、対象は戦闘経験を有する特殊技能の持ち主と明らかにした。 従業員の半数以上が召集される可能性 ロシア紙コメルサントによると、アエロフロート・グループの関係者は、 ポベダ航空 Pobeda Airlines や ロシヤ航空 Rossiya Airlines など、グループ3社も含め、従業員の約半数が徴兵される可能性があると明らかにした。  該当航空会社の関係者は、職員の50-80%程度が徴兵される可能性があると推定している。アエロフロートでは、従業員の専門分野のリストを作成するためチームを立ち上げた。 徴兵免除を巡る混乱 その他の航空会社や空港では、徴兵免除対象と思われる社員リスト作成をすでにはじめているところもある。しかし、航空会社の弁護士は免除リストをどこに送ればいいのかわからず、手続きにかなりの混乱があるようだ。  これまでのところ、航空会社は運輸省、国防省、あるいは地方当局それぞれにリストを送付している。また、航空会社は各地域でスタッフを雇っているため、どの軍の登録・入隊事務所に連絡すればよいのかも不明だ。  数カ月にわたる経済制裁ですでに悲惨な状態のロシア航空業界にとって、主要スタッフの徴兵は航空会社をさらに脅かすことになりかねない。航空会社は国防省

エアバスの機関投資家向け説明会が久しぶりに開催。A220ストレッチ版開発、COVID-19で手持ち資金枯渇、ワイドボディ攻略、中国でボーイングからシェア奪うなど。

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  エ アバス の最高経営責任者ジローム・フォーリGuillaume  Faury はエアバスに適切な時期にA220の大型版を作る計画があると明らかにした。 エアバスA220の拡大版? エアバスA220はエアバスが開発した航空機ではなく、カナダの ボンバルディア が作ったもので、2018年にエアバスがこのプロジェクトを購入した。当時、ボンバルディアはエアバスや ボーイング に挑戦し旅客機市場に参入するのが困難な状況になっていた。ボンバルディアCシリーズプロジェクトは、エアバスの予想をはるかに上回るコストがかかる赤字プログラムとなった。エアバスの最高財務責任者ドミニク・アサムDominik Asamによると、同メーカーは2025年までに収支を均衡させるという。A220-500型の可能性は、エアバス最大の稼ぎ頭であるA320neo型機に取って代わる可能性がある。 2  アサムはA320neoの生産予測を再確認した。水曜日にエアバスは、2025年までに月産75機体制を求めるサプライヤーへの圧力を撤回すると報告していた。  A320neoファミリーの成長により、エアバスはナローボディ市場で絶好のポジションにつけている。  本日、エアバスは4年ぶりにCapital Markets Dayを開催し、フォーリ、アサム両名が出席した。フォーリは、エアバスの手持ち資金はCOVID-19パンデミックで枯渇したと述べ、自社株買いの可能性を否定しなかった。  イベントで、フォーリは、エアバスが大型旅客機の市場シェアの拡大をほのめかした。エアバスはナローボディでかなりの成功を収めているが、ワイドボディ機で足場を強めたいと考えている。まず、A350貨物型をテコ入れする。同期はまだ実機が完成していない777X貨物型に比べ劣勢のままだからだ。  エアバスは、単通路機の市場で大きな成功を収め、最近では急成長して市場の主導権を握っている。その成長を牽引してきたのがA321neo型機だが、A321XLRは開発が遅れており、エアバスの想定より時間がかかっている。 エアバスのA312XLRの2号機が今週初飛行した。写真:エアバス   エアバスは、A300をはじめとするワイドボディ機メーカーとして誕生したが、単通路機で最も成功を収めている。A321neoの効率と航続距離改善により、エアバスは長年ボーイングが独