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2024年3月8日金曜日

電動航空機の規模はどこまで拡大するか。100人乗りリージョナル機構想を米新興企業が発表。

 電動航空機はどこまで現実になるのでしょうか。その鍵を握るのがバッテリー技術であることはあきらかで全固体電池もそのひとつですが、有望な技術が手の届くところまでそろってきました。航空機の構造もこれまでの常識を破るものとなれば、民生航空の世界も大きく変わりそうですね。ただし、当面はリージョナル航空が主な舞台になりそうです。技術がどんどん進歩していくのでビジネスも対応を迫られますね。Aviation Week記事からのご紹介です。


An array of 22 electric ducted fans is integrated into the leading edge of the Whisper Jetliner’s wing.

Credit: Whisper Aero


ウィスパーエアロ、100席の電気旅客機コンセプトを発表


ウィスパー・ジェットライナーの主翼前縁には、22基の電動ダクトファンが組み込まれている。

クレジット:Whisper Aero


超静音推進装置の開発会社ウィスパー・エアロWhisper Aeroは、2050年までに航空業界が排出量ゼロを達成できるよう、100人乗りのバッテリー式リージョナル旅客機のコンセプトを提案している

 ウィスパー・エアロは米国の新興企業で、NASAのプログラムのもとで、このコンセプトをさらに発展させる提案書を提出した。

 ウィスパー・ジェットライナーは、翼の前縁に組み込まれた電動ダクト・ファンを備え、上面に送風を行う。これにより揚力係数と翼面荷重が増加し、巡航揚力対抗力比が向上する。

 2023年6月にスタートアップが発表した9人乗りのウィスパー・ジェット・コンセプト機と同様に、ジェットライナーは水平尾翼をアウトボードに配置し、水平尾翼と垂直尾翼は翼端のブームに取り付けられている。これにより、水平尾翼は翼の上面吹き出しによるダウンウォッシュを受けない、とウィスパーCEOのマーク・ムーアMark Mooreは言う。

 同社は、NASAのAdvanced Aircraft Concepts for Environmental Sustainability(AACES)プログラムで、2050年までにネットゼロ航空実現への道を提供する目的で設計開発の提案を提出した。フェーズ1では、総額800万ドルの資金が提供される。

 AACESは、2010年のNASAのN+3研究に続くもので、2035年に就航可能な超高効率旅客機のコンセプトを開発する。ここからNASAのボーイングX-66Aサステイナブル・フライト・デモンストレーターが誕生し、2028年にロングスパン、低ドラグの遷音速トラスブレース翼の飛行試験が計画されている。

 ウィスパーは推進システムの開発会社であり、9人乗りと100人乗りの両コンセプトの目標は、超静音で超効率的な電動ダクテッドファンが、バッテリー駆動のリージョナル航空機を示すことである。

 「ゼロ・エミッション航空機に移行し、既存の航空機を退役させることが合理的な経営判断となるように、バッテリー電気航空機が炭化水素ベースのソリューションに勝てるかどうかを確かめたかったのです」とムーアは言う。

 「当社の技術が今後20年間でどのような方向に向かうのか、そしてそれが他の技術革新、特にバッテリー電気による地域モビリティ市場の活性化とどのように一致するのかを予測したかったのです」とムーアは付け加える。

 2020年に設立されたウィスパー社は、推力10ポンドのスラスターを55ポンドの無搭乗機で飛行させたが、米空軍のAFWERXイノベーションユニットとの契約により、推力数千ポンドまで電動ダクトファンをスケールアップすることを研究している。

 同社のイアン・ヴィラIan Villa最高執行責任者(COO)は言う。「当社の基礎となる技術は、拡大可能です。「当社はすでに、最初の概念実証である10ポンドの超静音・超効率スラスターの8~10倍の推力を発生できる量産可能なスラスターを製造し、テストしています」。

 NASAのAACESプログラムに入札するために、ムーアは言う。「当社はコンセプトをまとめました。当社の技術予測されるもが、実現可能な航空機のコンセプトと一致し、2050年という時間枠でネット・ゼロ・エミッションを達成するためにどのような合理的な期待があり、またそうあるべきかの段階を設定することができる確信があったのです」。

 民間航空機のマッハ0.78の巡航速度では、ウィスパーの推進システムのファン圧力比は理想に近い1.2であり、ギアード・ターボファンの1.4と比較すると、推進効率は5〜10%高い、とムーアは言う。

 ジェットライナーには22のダクトファンがあり、各1メガワットの電動モーターで駆動され、1,970ポンドの推力を発生する。総重量はエアバスA220-100の139,000ポンドに対し160,000ポンド。このうち、14.6メガワット時のバッテリーは51,250ポンド(エネルギー重量割合32%)を占めるが、A220の燃料は39,000ポンド(28%)である。

 ウィスパーは、2050年までにバッテリーのエネルギー密度を、セルレベルで800Wh/kg以上、パックレベルで640Wh/kgになると予測している。これにより、航続距離は770マイル(4メガワットのタービンをベースとしたレンジ・エクステンダーで予備エネルギー需要を賄う)となり、A220の3,500マイルと比較される。

 しかし、500マイルの旅にかかるエネルギーコストは、ジェットライナーが733ドルであるのに対し、A220は2,100ドルである。「私たちは、既存の炭化水素ベースのタービンが1,000マイル未満の航続距離では太刀打ちできないところまで到達しようとしています」。

 バッテリーの償却費は、バッテリーのリサイクルが確立されるにつれて変化するとウィスパーは見込んでいるため、この計算には含まれていない。ムーアも「バッテリーの量が多い」と認めている。「1キロワット時あたり400ドルとしても、600万ドルのバッテリーです」。

 このバッテリーは一般的なアメリカ国内旅行で70%放電され、45分で再充電され、ウィスパー社は2,000〜2,500サイクルの耐用年数を見込んでいる。全固体電池が実用化されれば、10,000サイクルまで延びる見込みだという。

 ムーアは、オランダの新興企業エリジアン・エアクラフトElysian Aircraftが1月に発表したエアバスA320より大きい90人乗り電気航空機のコンセプトの背後にある「大きいことは良いことだ」という考え方を繰り返した。

 「実際、大きければ大きいほど効率は高くなります。空虚重量率が低いほど、より多くの航続距離を確保するためにバッテリーの質量割合を増やすことができるのです」と彼は言う。

 ウィスパーは、サウスウエスト含む航空会社が、収益性の低い路線が廃止したため、平均飛行距離が401マイルから678マイルに伸びたことに触れ、「ジェットライナーのコンセプトは、中規模都市にまたがる地方空港を活性化させるために、典型的なアメリカ国内距離で必要とされる航続距離を満たすことができる」と言う。

 ウィスパーのNASA向け提案は、航空システムの中でジェットライナーを総合的にとらえ、米国の小規模空港数千箇所から運航し、小規模な地域社会への旅客・貨物航空サービスを回復させることにある。

 「騒音が少なく、すべての空港を開放し、地域社会に影響を与えず夜間も運航できる推進システムが設計できれば、夜間でも貨物便の運航が可能になります」とヴィラは言う。

 「私たちは、この航空機をどのように旅客機に使用できるかだけでなく、大型パレットにどのように使用できるかも検討してきました」と彼は言う。アウトボード水平尾翼は、後部胴体の構造をなくし、尾翼をスイングオープンさせ、旅客席や貨物パレットを "カセット "として積み込むことができる。

 地上では、翼端のブームを回転させて機外水平尾翼を垂直位置まで上げることもできるため、機体のスパンが短くなり、空港の狭いゲートエリアを利用できるようになるという。■


Whisper Aero Unveils 100-Seat Electric Airliner Concept

Graham Warwick March 04, 2024


https://aviationweek.com/air-transport/aircraft-propulsion/whisper-aero-unveils-100-seat-electric-airliner-concept



2023年6月9日金曜日

大型電動航空機の実現につながるか。MITで画期的なモーター、関連技術が生まれた模様。

 electric propulsion

(Airbus SAS)


マサチューセッツ工科大学(MIT)が大型航空機の電動化に使える新しいモーターを開発し、革新的な電気推進技術で二酸化炭素排出量の大幅削減が可能となると発表した。


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1メガワットのモーターは、主要部品の設計と試験を終えており、MIT研究チームは、発電量が現行の小型航空機用エンジンに匹敵するとした。航空業界では、毎年8億5千万トン以上の二酸化炭素排出が発生している。このまま放置すれば、今世紀半ばには3倍に膨れ上がる可能性があり、近年、国際線の二酸化炭素排出量に上限が設けられている。そのため、電化は航空業界の環境負荷低減に貢献する最も有効な手段と考えられてきました。


19世紀中頃から、電気機械は、モーターの動力源である銅コイルと磁気ローターの大きさで発電量が決まる大前提で動いてきました。また、発電量に比例し熱も発生するため、大型化すると冷却機構が必要になり、設置スペースが大きくなる。


民間旅客機など大型機の電動化にはメガワット級モーターが必要なため、現状では小型機のみでしか発電していない。


しかし、大きなエネルギーを生み出すのは容易ではなく、実現可能性を考えれば、電気エンジン部品とガスタービン推進を組み合わせたハイブリッドターボエレクトリックシステムが必要となる。


MITのプロジェクトリーダーで、同大学のT.ウィルソン教授(航空学)とガスタービン研究所(GTL)所長のゾルタン・スパコフスキーZoltan Spakovszkyのチームが構想するメガワット級モーターは「航空のグリーン化を実現する重要な要素」と呼ばれている。


電気モーターは、銅コイルで磁界を発生させ、磁界に磁石を近づけることで磁界と同じ方向に回転させ、扇風機や航空機のプロペラなど回転体に電力を供給し、電磁力を利用して運動を生み出している。


スパコフスキーのチームは、現在開発中のモーターをバッテリーや燃料電池の電力源と組み合わせ、航空機プロペラを駆動する機械的作業に使うことができると述べている。

また、従来のターボファン・ジェットエンジンと組み合わせ、飛行中に電力を発生させるハイブリッド・デザインも考えられる。


最終的に、環境目標を達成するため航空業界のグリーン化に必要なのは、ハイブリッド電気推進と「スマート」燃料システムを組み合わせたユニークかつ革新的な航空機デザインの開発で、先端素材を使った従来にない21世紀の航空機だとスパコフスキーのMITエンジニアチームは考えている。


MITのプレスリリースでスパコフスキーは、「これは、各コンポーネントを共最適化し、全体性能を最大化しながら互いに適合させる点で、難しいエンジニアリングです。この実現には、材料、製造、熱管理、構造、回転力学、パワーエレクトロニクスの境界を押し広げる必要があります」と述べている。


幸いにスパコフスキーチームは、極性の異なる磁石を配列した高速ローターで電気モーターを設計し、成人航空旅行者より軽く、スーツケースより小さい電気モーターを実現した。


また、熱交換器(ある領域や媒体から別の領域へ熱を移動させる装置)による冷却や、モーターの銅巻線に供給される高周波電流を管理する分散型パワーエレクトロニクスシステムも搭載した革新的な新しいモーターだ。


「回路基板30枚を高速スイッチングすることで、トルクを発生させながら連続回転させることができる」。


スパコフスキーによると、今回の発明は、「真に協調最適化された初の統合設計」で、将来的に、大型電気航空機の実現に貢献し、航空業界の環境保護で革命を告げる可能性があるという。


MITの研究チームは、今月末に開催されるElectric Aircraft Technologies Symposium (EATS)で、米国航空宇宙学会で研究成果を発表する。■


Electric Propulsion Breakthrough Produces Motor that Could Help to Revolutionize Green Aviation - The Debrief

MICAH HANKS·JUNE 9, 2023


Micah Hanks is the Editor-in-Chief and Co-Founder of The Debrief. He can be reached by email at micah@thedebrief.org. Follow his work at micahhanks.com and on Twitter: @MicahHanks. 


2022年12月24日土曜日

米国ではエアタクシー、リージョナル機から空港の電動対応が喫緊の課題に。一律の対応は不要だが、日本の動きの遅さが気になる....

AviationWeek記事からです

2025年から開始の計画があるeVTOLの運航に必要なインフラの整備が空港の課題になってきた。



 アーチャーエイビエーションArcher AviationやジョビーエイビエーションJoby AviationのようなeVTOLメーカーが、早ければ2025年もにエアタクシーサービスを空港で開始する計画で、電気航空機インフラを整備する空港運営会社の課題は、現実味を増してきている。

 エンジニアリング会社WSPの副社長補佐ガエル・ルブリスGaël Le Brisは、「新型航空機は実用化が近づいていますが、運用ではまだ不確実性が残っています。空港幹部は革新を話題にしていますが、最初に尋ねるのは、『電気および水素をどうすべきか』です」という。

 WSPは、米国科学・工学・医学アカデミーの運輸研究委員会の委託で、空港の実務担当者向けに、電気航空機や水素技術、先進的な航空モビリティに関するガイダンス文書二点を作成し、まず1つを今年初めに発表しており、1月に2つ目を発表する。

 ル・ブリスは報告書について、「空港における先進的な航空モビリティについて、初期の計画段階から運用まで総合的なアプローチを提供します」と述べている。電気飛行機だけでなく、地上の電気自動車、空港内の暖房システムなど、「あらゆるものの電化」に対応するため空港に何メガワット設置する必要があるか、といったユーティリティ計画のツールも提供しています。

 WSPの結論の中に 2035年までには、バッテリー駆動航空機が米国内の航空機の1~5%を占めるようになるかもしれないとある。「しかし、すべての航空施設が同じように電気航空機需要を経験するわけではありません」とル・ブリスは述べ、空港ごとに予想される格差は、オペレーターの好みの違い、地域差、小規模空港での追加輸送の機会によるものだとしている。

 一例として、マサチューセッツ州ハイアニスを拠点に小型飛行機を運航するケープエアは、4月にイービエーションEviationの9人乗り電動機を最大75機購入すると合意した。「ケープ・エアはおそらく10年以内に電動機への移行を実現するでしょう」。

「ボストン・ローガン空港のような重点空港では、電動航空機の集中運用が実現し、適切なインフラでサポートする必要があります」とル・ブリスは付け加える。「電動航空機の採用率は、地域や、州や地域が採用する政策により変ります」。

 WSPは現在、ダラスのケイ・ベイリー・ハッチソン・コンベンション・センターのマスタープランを主導しており、既存のダラスCBDバーティポートVertiportを電動VTOL航空機に対応させる再開発案が含まれている。同施設の世界最大級のヘリポートは、当初V-22オスプレイの民間版を収容するため設計されたが、コンベンションセンターの再開発で最上階に移設される案が出ている。「このバーティポートが航空サービスのゲートウェイにするなら、FATO/TLOFエリア2つとeVTOLスタンド6つを備え、地上へ素早くアクセスできる大型施設が必要です」とル・ブリスは述べた。

 一方、WSPはフィラデルフィア国際空港では、進行中の空港マスタープラン更新の一環として、バーティポート施設の追加について空港管理者を支援している。このバーティポートは、ターミナルに直接アクセス可能な駐車場とレンタカー施設の屋上に設置される可能性があり、eVTOLの運用に「最適」な場所となる。

「屋上の広さと形状から、各種レベルの需要に対応できる拡張性のあるバーティポートを設置できる余地があります」とル・ブリスは言う。「また、従来型航空機の運航から可能な限り独立したアプローチと出発経路を提供することも重要です」。

 将来的には、空港は、電気航空を可能にするだけでなく、既存のライドシェアと統合し、大量輸送網に接続できるインフラの構築に注力するよう、ル・ブリスは助言している。

「電動航空機の飛行は素晴らしいことですが、先進的な航空モビリティを活用し、他の交通手段と統合し、一般市民の航空モビリティへのアクセスをどう向上させるのべきでしょうか」とル・ブリスは言う。「どうすれば、玄関先から最終目的地まで素晴らしいモビリティサービスを実現できるでしょうか?私たちがAAMを考えるとき、これらを問いかけています」。■

 

AAM Viewpoint: How Should Airports Prepare for Electric Aircraft?

Ben Goldstein December 23, 2022

https://aviationweek.com/aerospace/advanced-air-mobility/aam-viewpoint-how-should-airports-prepare-electric-aircraft

 

 

Ben Goldstein

Based in Washington, Ben covers Congress, regulatory agencies, the Departments of Justice and Transportation and lobby groups.