2024年2月10日土曜日

FAAによるボーイングへの監視強化は、より広範な変化への序曲だ: FAAが生産現場に出向き、従業員と対話するという姿勢だが、ボーイングの社内文化(品質逃亡と平気で発言する)は変えられるのか

 


Boeing’s 737 assembly process

Credit: Seattle Times/pool



FAA検査官はボーイング737の最終組立工程を全角度から検査中だ

2020年より施行された連邦航空局(FAA)の認証制度改革は、ボーイングの民間航空機事業における長年の規制上の不手際に対処するステップの第2弾となるはずだった。2011年まで遡る6つのプログラムにおける製造関連のコンプライアンス違反に端を発した第一段階は、ボーイングの脆弱な品質保証プロセスをターゲットとしたFAAとの2015年の和解合意に明記されていた(AW&ST 2020年9月14-27日号22ページ)。

 しかし、1月5日にアラスカ航空1282便で発生した737-9型機のドアプラグの紛失事故は、ボーイング社内のミスによるものであることはほぼ間違いない。ボーイングは厳格な設計仕様を満たすことはおろか、FAA規制に準拠した航空機を製造・納入することも一貫してできないままだ。

 FAAの対応は新たな協定にとどまらず、おそらくボーイングとそのサプライチェーンにも及ぶだろう。

監督手順の変更に教訓を生かす

 FAAのマイク・ウィテカー長官FAA Administrator Mike Whitakerは、2月6日下院航空小委員会の公聴会で、「製造に関しては、これまで監査に重点を置いた監視アプローチがとられてきたが『監査プラス』と呼ぶべきシステムに移行しつつある。フライトラインや整備(格納庫)で見られるような、検査官が現場に出向き、人々と話をし、作業を見る、監視的な要素をもっと持つことになるだろう。そのため、現時点では監査と検査の両方を含む監督アプローチを拡大することを提案している。

 ワシントン州レントンにあるボーイングの737製造施設がテストケースとなる。アラスカ航空のドアプラグの不具合は、ボーイングとサプライチェーンにおける一連の製造品質ミスの後に起こった。 最近の "不適合" “nonconformances” と "品質逃亡" “quality escapes”(業界用語で製造上のミスを意味する)は、737と787両プログラムに最も大きな打撃を与えた(AW&ST 2022年12月12-25日号、32頁)。しかし、たとえ致命的でなくても、機内事故につながる品質ミスは注目を集め、FAAの手を煩わせた。

 ウィテカー長官は任期5年を半年足らずで終えるが、長年の業界での経験を持っている。ウィテカーは、FAAの業務の進め方に大きな変化をもたらすだけの時間と素養を持ち合わせている。ボーイングは、製造証明書監視の進化のモルモットとして浮上してきた。

 FAAはボーイング737 MAX生産ラインの3箇所の "あらゆる側面 "を審査するため、レントンに検査官約二十人を派遣した。検査は、機体サプライヤーであり、品質保証を繰り返すスピリット・エアロシステムズにまで拡大される予定だ。FAAによると、検査官はボーイングとスピリットの両社で、737MAXの全製造ステーションの「物理的、工程的、記録的レビュー」を実施する。

 「強化された監視は、データと測定基準のレビューの結果、1月5日のドアプラグ事故の根本原因の特定、適切な是正措置とその他の緩和措置の実施次第である」とFAAは述べている。「品質システムが安全で適合した飛行機を製造しているとFAAが確信するまで、作業は続けられる」とFAAは述べている。

 その影響として、737 MAXの生産数で月38機との自主的な上限が設けられたFAAの規制権限には生産承認証明書の発行が含まれるが、生産率変更の許可をメーカーに求めることはない。737 MAXの場合、FAAは新たに生産される航空機に月38機以下の耐空証明書を発行することで、ボーイングの納入を制限する。FAAは、737 MAXが死亡事故2件を受けた世界的な運航停止を経て2020年後半に運航を再開して以来、通常なら企業に任されてる737の証明書を発行している。

 ボーイングはFAAと、当面の間、生産量を増やさないことで合意した。この取り決めは、ボーイングが公表している月産38機という生産率よりも多くの737 MAXを納入できることを意味する。約200機の737 MAXが引き渡しを待っている。

 ボーイングの発表した生産率は、毎月ロールアウトする737 MAXの数を反映していない。同社は7月に月産31機から38機への移行を初めて示唆し、高い数字で安定するには数カ月かかると指摘したが、サプライチェーンの課題により、ほとんどの月でロールアウトは新レートを大幅に下回っていた。ボーイングの2023年第4四半期の平均ロールアウト数は24機で、12月の月最高ロールアウト数は28機であった。

 ボーイングは、FAA関連のすべての問題において主導権を握っているが、FAAが存在感を高めていることを歓迎しているという。顧客はより多くの質問をし、より多くの検査を行っている。同社は737の製造工程にチェックを多数追加し、コンプライアンスに準拠した製品を製造する新たな取り組みの一環として、製造施設全体で品質検査を実施している。

 「私たち自身からも、規制当局からも、そして顧客からも、このような精査の追加で、より良くなるのです」とデーブ・カルフーンCEOは言う。

 ボーイングはまた、2020年の認証変更で義務付けられた新たなコンピュータ・モデリングの一環で見つかった複合材インレット構造の耐久性に関連する安全リスクを737-7に認証させる要求を取り下げた(AW&ST 1月29日-2月11日号、14ページ)。ボーイングは、新しいナセルの設計と承認取得に9~12ヶ月を要すると見込んでいる。同社に対する監視の目が厳しくなっていることを考えれば、この見積もりは楽観的である可能性が高い。

 ボーイング商用機のサプライヤー品質担当副社長ダグ・アッカーマンは、最近の生産傾向を調査したところ、新たな原因による不具合や、新たな修正策を考案する必要性は見つからなかったと述べた。不良率は安定している、と彼は2月6日に開催されたパシフィック・ノースウエスト・エアロスペース・アライアンス・アドバンス2024会議の参加者に語った。

 その代わりにボーイングは、サプライ・エコシステムの変化により、旧来のサプライ・チェーン環境ならよく知られていた製造の詳細が、新たな問題が生じていると見ている。その変化には、離職したベテランに代わり新しい労働者が入ってきたり、請負仕事が別のサプライヤーに移ったりといった労働力の入れ替わりも含まれる。もう一つの例は、比較的小さな設計や製造の変更であれば、過去にはサプライチェーン全体で対処可能であったこともある。それに比べ、現在の失敗の根本は、新しい状況を念頭に置き十分に吟味されなかった小さな変更に遡ることが多い。アッカーマンは会議で、「課題は細部にある。不安定さと変化がリスクだ」と述べた。

 実際、サプライチェーンの最上流で発生した問題は、しばしば下流にさかのぼることができる。FAAもこのことを認識しており、それに対応するため監視体制を変えている。航空安全担当のジョディ・ベーカー副長官は2月5日のブリーフィングで、FAAは手順と文書に焦点を当てた正式な監査を実施すると述べた。

 「より非公式なものになるだろう。必ずしも通知の必要はない。「この方法の利点のひとつは、従業員と実際に話をすることで、何が従業員のモチベーションを高めるのかを把握できることです。従業員は何に関心を持っているのか?そうすることで、従業員レベルの安全文化をよりよく理解することができる. . . もっと交流し、達成されている仕事をもっと直接観察したいのです」。

 このようなシフトには時間がかかるが、2020年の認証取得が示すように、FAAは敏捷になっている。737MAXの最初の承認作業で指摘されたミスに端を発したFAA認証に対するより厳しいアプローチは、自社製品について特定のコンプライアンスに関する指摘を行う権限を企業に与える委任制度への過度なまでの依存を含め、ボーイングの複数のプロジェクトを長引かせている(AW&ST 2023年7月3-16日号17ページ)。

 同社だけではない。ガルフストリームは、FAAの新たな認証期待(AW&ST 2022年7月25日-8月7日号、p.50)に起因する不確実性にあwたる数ヶ月の後、2019年に発表され、2022年に就航が期待されているG700ジェットがいつ承認されるか予測することを断念した。

 ガルフストリームの親会社であるジェネラル・ダイナミクスの会長兼CEOであるフェビー・ノバコビッチは、最近の決算説明会で、「当方がコントロールできないプロセスを予測するのは、コンセントに指を突っ込むようなものだ。ですから、当社は黙っていることになると思います。新型機はFAAのスケジュールで認証を取得することになる」。


FAA’s Boeing Crackdown Offers Preview Of Broader Changes | Aviation Week Network

Sean Broderick Michael Bruno February 09, 2024


2024年2月7日水曜日

アラスカ航空737-9のドアプラグボルトはボーイングに残ったままだった可能性---NTSB報告書が示唆

 


Alaska 737-9 door plug hole

Credit: NTSB





1月にアラスカエアラインズのボーイング737-9から引き剥がされた出口ドアプラグの固定で必要なボルトが、ボーイング工場で、関係ない納入前修理で取り外され、再装着されていなかったことが、事故に関するNTSBの予備報告書から示唆されている。

 調査官による分析の結果、ミッドエグジットドア(MED)プラグと関連ハードウェアの損傷は、MEDプラグの上方移動を防止するボルト4本が、MEDプラグがストップパッドから上方に移動する前に紛失していたことを示している。これは、急激な減圧を含み緊急着陸を必要とした1月5日の飛行中にボルトが破損しなかったことを意味する。

 さらに調査を進めた結果、MEDは整備中や非定期修理中以外はボルトで固定されたままであり、2023年10月31日にアラスカに引き渡されてから事故機が飛行するまでの間、開けられていなかったことが判明した。この期間には、Wi-Fiアンテナを設置したオクラホマ州オクラホマシティのAAR社の施設にいた期間も含まれる。

 NTSBは、「製造/ヒューマン・パフォーマンス・グループが、ボーイングの工場を出発してから事故が発生するまでの記録を完全に調査した結果、ボーイング社内施設を出発した後に左MEDプラグが開けられた形跡はなかった」と述べた。

 捜査当局は、ボルトが忘れられた時期としてボーイング工場で行われた修理に注目している。

 胴体とドアプラグの製造業者であるスピリット・エアロシステムズは、左側のMEDプラグが吹き飛んだすぐ前に、損傷したリベット数個がある状態で該当胴体を出荷した。機体は8月31日、ボーイングのワシントン州レントンの737製造施設に到着した。ボーイングはリベットの問題を指摘し、修理を命じた。

 NTSBによれば、737工場に配属されたスピリット作業員は9月19日に作業を完了した。しかし、ボルトは交換されることなく、アラスカでの事故の舞台となった。

 作業開始前に撮影されたボーイング提供の写真には、固定ボルトが所定の位置にあるのが写っている。NTSB報告書に掲載された、リベット固定が行われた直後に送られたボーイングの「チームメンバー」間の通信から抜粋された写真には、ボルトのない閉じた状態のプラグの写真が写っている。

 調査官は、航空機が引き渡されるまでの数週間の間に何が起こったのか把握していない。

 NTSBは、「リベットの再加工中に左MEDプラグの開閉を許可するためにどのような製造書類が使用されたかを特定するため、調査を継続する」と記した。

 NTSBの予備報告書は調査官の調査結果を分析していない。ボルトを戻した最終責任がボーイングにあるのかスピリットにあるのかは不明である。

 ボーイングの品質保証プロセスとFAAが承認した安全管理システム(SMS)は、リベットの不適合を発見する効果があったが、ボルトの紛失に気づかなかった。

 「最終的な結論がどのようなものであれ、ボーイングは今回の事態に責任を負っている」と同社のデイブ・カルフーンCEOは声明で述べた。 「このような出来事は、工場から出荷される機体で起こってはならないことだ」。

 捜査当局は、事実関係を収集中である。

 ボーイングとスピリット・エアロシステムズの関係者への事情聴取が後日予定されている。NTSBはまた、ボーイングのSMSとスピリット社による自主的なSMSプログラムの開発状況を調査する。同グループはまた、各メーカーのSMSプログラム開発へのFAAの関与と、それぞれに適用された監督レベルについても評価する予定である。

 ボーイングとスピリットの事故とそれに関連する品質問題から、両社は厳しい監視下に置かれている。連邦航空局(FAA)は、737 MAXの生産に対する新たな監視と見直しの一環として、航空機と記録を検査するチームをレントンに派遣した。また、自主的な生産量凍結の一環として、新造737の納入は月38機に制限している。

 ボーイングは、スピリットのウィチタ工場における監視を強化するだけでなく、社内検査を追加した。■


Alaska 737-9 Door Plug Bolts Left Behind At Boeing, NTSB Report Suggests | Aviation Week Network


Sean Broderick February 06, 2024



2024年2月3日土曜日

アラスカ航空事件でボーイングの損害をどこまで広がるのか? 現場軽視、品質重視を守らなかった会社の姿勢が高いコストにつく。エアバスを超えることはもう不可能??



Photo: NTSB


訴訟、生産の遅れ、株価下落は、ボーイングが迫られる負担の一部にすぎない

ラスカエアラインズは、ボーイングに対し、737 MAX 9の欠航による補償金1億5,000万ドル(返金、再宿泊費用、従業員の残業代、AS1282便の乗客1名につき1,500ドル)を求めている。

AS1282便の乗客は、ボーイングとアラスカエアラインズを相手に、事故による身体的・精神的苦痛に対する損害賠償を求める訴訟を2件起こしている。

 アラスカエアラインズの事故後、ボーイングの株価は18.9%下落し、時価総額で280億ドル以上が消えた。

アラスカエアラインズは、737 MAX 9の全機を3週間地上待機させなければならなかったことに対し、数百万ドルの補償を求めている。これらすべての行動と出来事を考慮すると、1月5日のドアプラグ事故で、ボーイングはどれだけの損失を被ったのだろうか?

航空会社への補償

1月26日付の『アンカレジ・デイリーニュース』紙は、アラスカエアラインズ幹部がボーイングに少なくとも1億5000万ドルの賠償を求めていると報じた。同航空の最高財務責任者(CFO)は、払い戻しを余儀なくされた航空券や、他社の乗客向けの航空券購入費用による損失相当分と述べた。アラスカはまた、3,000便以上の欠航便の処理を迫られた従業員への超過勤務手当を支払った。同社はAS1282便の乗客一人一人に1500ドルも提供していた。

「欠航による当社の利益への影響分が全額補償されるよう期待しています」。-アラスカ航空、最高財務責任者、シェーン・タケット

上記1億5,000万ドルに運航再開前の機体点検に費やされた整備チームの時間も含まれているかどうかは言及されていない。ロイター通信によると、アラスカは737 MAX 9の検査に約12時間を各機で費やしたという。

アラスカエアラインズは金額を公表しているが、MAX9をさらに多く保有するユナイテッドエアラインズからは今のところ発表がない。ユナイテッドも、機体を運行停止させ、フライトをキャンセルし、乗客を再搭乗させ、検査を実施しなければならなかった。さらに、アラスカと同様、ユナイテッドの今月の利益も打撃を受けた。ユナイテッドも、間違いなくボーイングにも補償を求めるだろう。

乗客からの訴訟

AS1282便の乗客から2件の別々の訴訟が起きているようだ。

The Hillによると、最初の訴訟は事件発生から1週間後の1月12日に起こされた。Stritmatter Firmによってワシントン州キング郡高等裁判所に提出されたこの訴訟は、6人の乗客と1人の親族に対する損害賠償を求めている。法廷文書によると、原告はこの事件によって肉体的・精神的苦痛を被ったと主張している。

同訴訟では、事件に対しボーイングの最終的な責任が強調されている。

『シアトル・タイムズ』紙が報じたが、1月16日、同じキング郡で2件目の訴訟が起こされた。カークランド・レポーター紙によれば、この訴訟は3つの訴因を提示している:

  • ボーイング社に過失1件

  • ワシントンの製造物責任法に基づきボーイングへ厳格製造物責任の訴えを1件。

  • アラスカ航空に過失1件

被害を受けた乗客の代理人であるマーク・リンドクイスト弁護士は、ドア吹き飛ばし事故が依頼人や他の乗客に「強い恐怖、苦痛、不安、トラウマ、肉体的苦痛、その他の傷害」をもたらしたと指摘している。

原告もボーイングも、訴訟が長期化することを望まない可能性があり、ボーイングとしても、これ以上メディアから否定的な注目を浴びることを避けたいだろう。従って、これら2つの訴訟については、(非公開のままであろう金額で)和解が成立する可能性がある。

株価の急落

企業の市場価値は常に変化するものだが、事件後のーイング株価は顕著な下落を見せた。1月5日から25日の間に、ボーイングの株価は18.9%下落し、ロイターはこの下落によりボーイングの市場価値280億ドル以上が帳消しになったと指摘している。

事件前、ボーイングの株価は10月下旬の安値から順調に回復し、12月末には264ドルの高値をつけていた。

記事掲載の時点で、ボーイングの株価は数ドル回復していたが、この損失は1月31日にボーイング株主が訴訟を起こすのに十分だった。ロイター通信によると、投資家の集団訴訟は、品質と航空機の安全性に関するボーイングの声明が虚偽で誤解を招くものであったとしている。

言及されているボーイングの声明とは、2018年と2019年にそれぞれインドネシアとエチオピアで起きた737 MAXの墜落事故を踏まえ、同社が「安全性に『レーザーフォーカス』し、利益のために安全性を犠牲にはしない」と約束していたものだ。株主は、ボーイングの組立ラインにおける「不十分な品質管理」が隠蔽されたため、同社の株価がつり上がっていたと主張している。この集団訴訟案に関する金額は公表されていない。

生産量の低下、機体認証の遅れ

ボーイングに大きな影響を与えるコスト要因は他にもある。

1月24日の米連邦航空局(FAA)の発表でボーイングに対し、MAXの生産拡大を認めないと通告した。「FAAはボーイングとそのサプライヤーに対する調査を行い、監視を強化している」と声明にある。

FAAはさらに監督活動の強化には以下が含まれると述べた:

  • ボーイング737 MAXの新型機の生産に上限を設け、説明責任と要求される品質管理手順の完全遵守を確保する。

  • ボーイングが製造要件を遵守しているか精査する調査を開始する。

  • ボーイング社の全事業所での立ち会いを増やし、新型機の監視を積極的に拡大する。

  • リスクを特定するデータを注意深く監視する。

  • 品質管理と権限委譲に関する、安全に焦点を当てた改革にむけた分析を開始。

生産機数で上限が設定され、FAAがボーイングの活動を綿密に調査しているため、生産量の低下は確実視されている。アラスカボーイングが今年後半に予定している737 MAXの納入に遅れが出ることを想定している。

規制当局の監督強化は、未認証の737 MAXファミリーにも影響を及ぼしている。ボーイングは737 MAX 7に関しFAAに提出済みの安全免除申請を取り下げると発表した。FlightGlobalによると、この免除は同機のエンジン防氷システムに関するもので、ボーイングは適切な修正プログラムを開発するためさらに9~12カ月を要するという。これは、MAX 10にも影響を与える可能性がある。

風評被害とビジネス損失

ボーイングにとってさらに目に見えないコストがある。風評被害と潜在的なビジネス損失だ。以前は搭乗する機体の種類に無関心だった旅行者が、突然、次のフライトがボーイングかどうか気にするようになってきた。

この風評被害の例として、以下がある:

オンライン旅行予約サイトのカヤックは、顧客がフライトを探す際に737 MAX 9を含む旅程をフィルタリングできるようにした。このウェブサイトは、同型機への搭乗を避けようとする旅行者のウェブトラフィックが急増したと報告している。

アラスカエアラインズの事故から数週間後、主要メディアは航空機が関与する日常的な事故について報道し始め、事故が特にボーイング製航空機に関わるものであることを強調した。たとえば、タキシング中の翼の衝突にもかかわらず、「ボーイング機同士の地上衝突」という見出しをつけたサイトがいくつもあった。

さらにこのドアプラグ事件で、ボーイングはアメリカの深夜トーク番組でジョークのネタにされた。

評判は落ちたものの、ボーイングは今回のドアプラグ問題で、実際にはそれほど大きなビジネス機会を失うことはないかもしれない。エアバス、ボーイングの2社独占体制がしっかり健在であり、両社は数年にわたる納期残を抱えているため、エアライン側にはナローボディ機で選択肢がほとんどない。

だがユナイテッドは、MAX10でさらなる遅延が予想される中、A321neoの購入に乗り出している。

エアバスが得をする?

ボーイングの損失はエアバスの利益だと推測する人もいるだろう。しかし、疑わしい利益を定量化するのは難しい。欧州の航空機メーカーであり、ボーイングの最大のライバルであるエアバスは、すでにA320neoファミリーで膨大な受注残を抱えている。エアバスが自社製品に対する需要の高まりから価格を引き上げる力を持っていることは想像に難くない。しかし、定価はもはや公表されておらず、実勢価格は顧客との交渉次第で変動するため不明だ。

では、AS1282便の結果、ボーイングにかかった総費用はいくらになるのだろうか?残念ながら、これらの問題や行動をすべて合算してすっきりとした数字にするのは難しい。アラスカエアラインズが1億5,000万ドルの賠償を求めているのであれば、ユナイテッド航空はそれ以上ではないにせよ、少なくとも同額の賠償を求めると想像できる。乗客の訴訟(および/またはその結果としての和解)が同じ規模に達する可能性は低い。

ただし、市場価値とは変動するものであり、重要になるのは損失が実現したとき、つまり、株式が売られたときだけである。確かに、ボーイングにとっての直接的および間接的な損失は数十億ドル規模になる可能性があるが、これは2019年と2020年のMAXの飛行停止措置による直接的な損失200億ドルには遠く及ばない。ただし、間接的な損失は600億ドルと見積もられている。■

How Much Will The Alaska Airlines Incident Cost Boeing?

BY

CHRIS LOH

https://simpleflying.com/how-much-will-the-alaska-airlines-incident-cost-boeing/


2024年2月2日金曜日

アメリカンエアラインズの最新状況 長距離DFW-ブリスペーン路線を冬スケジュールから開設。同社最長路線に。

  • アメリカンエアラインズが同社で最長のフライトを発表した

  • 新規開設路線は8,300マイル以上となる

  • だがもっと長距離の路線は他社にある

  • アメリカンが香港に戻ってくるかが注目される


 アメリカンエアラインズがダラス・フォートワースとブリスベンを結ぶ新路線に就航する。同路線は、ロサンゼルス-シドニー線を2位に追いやることになる。とはいえ、ユナイテッドとデルタにはまだ長いフライトがある。

 アメリカンは、北半球の航空会社が冬ダイヤに切り替わる10月27日よりダラス・フォートワース-ブリスベン線の運航を開始する。使用機材は、デザインを一新し、プレミアム感をあげ、座席数を減らしたボーイング787-9だ。アメリカンがこの空港ペアに就航するのは初だが、カンタス航空は2014年までボーイング747-400を使用していた。

 アメリカン航空は10月にダラス-ブリスベン間のデイリー運航を開始し、冬の旅行シーズン通じ運航する予定だ。


2024年のアメリカン航空最長路線へ

ワンワールド・アライアンス加盟会社のアメリカンは、乗客数、機材数、フライト数、販売座席数、利用可能座席マイル数など、さまざまな点で世界最大の航空会社だ。同社直行便の最長空港ペアは以下の表の通り。


ダラス-ブリスベンはアメリカンで唯一8,000マイルを超える路線で、2位より11%も長い。しかし、ユナイテッドのヒューストン-シドニー線(8,596マイル、13,854km)やサンフランシスコ-シンガポール線(8,446マイル、13,593km)、デルタのアトランタ-ヨハネスブルグ線(8,439マイル、13,581km)には及ばない。なお、この記事は2月2日に書かれたもので、状況が変わる可能性がある。


Miles (km)

Routing

Flights and aircraft

8,303 (13,363)

Dallas Fort Worth-Brisbane

Daily 787-9

7,488 (12,051)

Los Angeles-Sydney

Daily 777-300ER

7,440 (11,974)

Dallas Fort Worth-Auckland

Daily 787-9 (northern winter seasonal)

7,351 (11,830)

Dallas Fort Worth-Shanghai Pudong

Daily 787-8

7,318 (11,777^)

New York JFK-Delhi

Daily 777-300ER

6,841 (11,009)

Dallas Fort Worth-Seoul Incheon

Daily 787-9

6,797 (10,939)

Philadelphia-Doha

Daily 787-9

6,504 (10,467)

Los Angeles-Auckland

Daily 787-9 (northern winter seasonal

6,462 (10,399)

Dallas Fort Worth-Tokyo Haneda

Daily 787-9 (has scheduled the occasional -8)

6,427 (10,344)

Dallas Fort Worth-Tokyo Narita

Daily 787-8

^ Nice!





もう一つ8,000マイル以上をカバーした路線があった。

ダラス・フォートワース-香港線で、8,123マイル(13,072km)だった。2014年6月から2020年初頭にかけて就航し、パンデミックのため終了した。その役割の一部は、同じワンワールド・アライアンスのキャセイパシフィック航空を補助することだった。

 777-300ER(304席)が使用されたが、アメリカン航空で座席数が最大だった。この機材は香港発着の貨物輸送にも適しており、このような長時間のフライトでは積載量に制限があるにもかかわらず、重要な役割を果たした。

 米国運輸省のT-100データによると、初飛行以来100万人強の乗客を運んだ。平均座席搭乗率は84%で、単独で考えるべきものではないが、全体としてはまずまずだった。

 2019年、フライトは香港に17:00頃到着し(具体的な時間はまちまち)、翌日の昼過ぎに出発した。これは明らかに航空機の効率的な使用ではなかったが、積載量とイールドはそうでなかった場合よりも十分に高かったに違いない。アメリカンは香港に戻るのだろうか?


American Airlines Announced Its Longest Flight Yet: Here's What It's Replacing

BY

JAMES PEARSON

https://simpleflying.com/american-airlines-launches-longest-route-yet/

 

2024年2月1日木曜日

民間航空にも危険が迫っている。ロシアによるGPS妨害がバルト海地区で日常茶飯事になっていることからNATOの忍耐力が試されている。なぜ日本が安全だと言い切れるのでしょうか。

 240130_gpsjam_poland_sweden_GRAB

A screengrab of reported navigation issues in the airspace over eastern Europe on Jan. 19, 2023. (GPSJam screengrab)


ウクライナ戦争は、安価な無人航空機の使用からこれまでにない規模の情報戦まで、現代の戦場における新戦術を前面に押し出した。しかし、同時に最新の電子戦も展開されている。ロシアによる可能性が高い、危険な干渉らしきものについて米大統領による国家宇宙ベース測位ナビゲーション・タイミング国家諮問委員会のメンバー、デイナ・ゴワードDana Gowardが分析した。

開されている航空機追跡データベースによると、1カ月以上前から、バルト海沿岸地域を飛行する航空機は、GPS信号への各種干渉を経験している。場合によっては、GPS受信機が電子的に捕捉されたり、航空機が意図したルートから何マイルも外れているように「スプーフィング」されたりしているようだ。

妨害やなりすましは以前からあるが、この地域ではほぼ毎日何らかの妨害が行われており、定期的に広範かつ重大な妨害が行われている。ウクライナ侵攻を支援するNATO諸国への嫌がらせとして、ロシアがこの活動の背後にいることはほぼ間違いないとされてきた。

このような妨害行為は、何千機もの民間航空機に危険を及ぼすものであるが、国際的な圧力は今のところ妨害行為を止めることができないため、NATOは相応の行動をとる時期に来ている。

12月25日と26日、ポーランド北部とスウェーデン南部の広い範囲が影響を受けた。翌週の大晦日には、フィンランド南東部の広い範囲で航空機の乱れが報告された。1月10日、13日、16日にはポーランドの北半分が主な標的となった。19日には、スウェーデン南部とポーランド北部が影響を受けた。直近では1月24日にエストニアとラトビアが標的となった。

いずれの場合も、妨害は民間航空機が搭載する航空安全ADS-Bシステムによって検知され、ウェブサイトGPSJam.orgに表示された。

テキサス大学ラジオナビゲーション研究所の大学院生ザック・クレメンツによるクリスマス妨害の分析。クレメンツ氏はGPSの妨害について研究しており、地球低軌道上の衛星から発生源を突き止めることに関して発表している。

インタビューで彼は、広範囲に広がる送信機多数が関与していると判断したと述べた。あるものはGPS信号を妨害してサービスを拒否していた。しかし、少なくとも1個の送信機は、航空機を偽装し、計器が実際の位置から遠く離れ、円を描いて飛行しているように見せていた。

「サークル・スプーフィング」現象は、船舶では頻繁に観察されてきたが、航空では今回が初めての報告であった。

クレメンツによれば、ロシア国内がスプーフィングの発生源であることは間違いないという。「航空機がスプーフィングによる影響を受け始めた地点と、航空機が本物のGPSを取り戻した地点から、スプーファーはロシア西部のどこかにいることがわかる。「興味深いことに、航空機がスプーフィングされた場所は、ロシアの退役したスモレンスク軍事空軍基地から約1キロの野原である」。

スタンフォード大学のジクシー・リュウ大学院研究員は、クリスマスの妨害にはほぼ間違いなく多くの妨害機が関与していることを筆者に確認した。以前の研究でリュウは、ADS-Bデータを使ってGPS妨害の発生源を地理的に特定している。

モスクワは広範囲に及ぶ妨害行為を否定していると報じられているが、ウクライナのメディアは、「...2023年12月中旬以降、ロシアのバルチック艦隊の部隊がカリニングラード州でEW(電子戦)システムBorisoglebsk-2を使って演習を行っている 」と報じている。

米国とポーランドのアナリストによれば、この干渉は、国境付近で西側の影響力が強まっていることに対するロシアの対応の一環だという。12月中旬、米軍とポーランド軍はポーランド北部でイージス対ミサイルシステムを作動させた。その直後、トルコ議会はスウェーデンのNATO加盟に道を開く行動を開始した。

ロシアのこのような反応は前例がないわけではない。2022年、ウラジーミル・プーチン大統領はフィンランドとスウェーデンがNATOに加盟しようとするならばと脅した。その後、フィンランドのサウリ・ニーニスト大統領はジョー・バイデン米大統領と会談し、防衛関係の改善を話し合った。その後間もなく、フィンランド南部、カリニングラード、ロシア、バルト海近辺の上空を飛ぶ飛行機がGPS妨害を報告し始めたと『ガーディアン』紙が報じた。

最近の妨害やなりすまし事件でポーランドに焦点が当たっているのは、ポーランドの新しいアメリカ製対ミサイル・システムの重要性を軽視しようとするロシアの努力かもしれない。同様の妨害は、米国がウクライナに供給した精密兵器の多くにも及んでいる。ポーランドのイージス施設はGPSではなく高出力レーダーを主に使用しているとはいえ、今回の干渉はシステムに対する国民の信頼を損なう狙いの可能性がある。

また、一部オブザーバーは、ポーランドでの干渉が戦略的なスワウキ・ギャップを通る道路にも及んでいると指摘している。ポーランドのリトアニア国境に平行する全長40マイルのこのルートは、ロシアの盟友ベラルーシとバルト海に面したロシアのカリニングラードを直接結んでいる。軍事アナリストは以前から、この地域はヨーロッパの陸上紛争で重要地点になると考えてきた。

これらの攻撃は、国際空域や海域を航行する他国の航空機や船舶を標的にしてきた。また、NATO加盟国の主権領土やインフラにも影響を及ぼしている。

さらに、生命と財産に多大なリスクをもたらしている。

大手国際航空会社の上級機長ジョー・バーンズは、「GPS信号が利用できなかったり、何らかの形で危険にさらされたりすると、大きなリスクにさらされる」と語った。バーンズ機長はまた、GPSとその関連問題についてアメリカ政府に助言を与える委員会のメンバーでもある。「GPSへの干渉は事故のリスクを高め、ほとんどの場合システムの速度を落とし、フライトをより長く、より高くする」。

GPS信号への偶発的な干渉は、2019年にアイダホ州サンバレーで民間旅客機の墜落を引き起こしかけた。航空関係者はその後、国際民間航空機関(ICAO)にGPS妨害を緊急課題として挙げた。翌年、ICAOはすべての国に対し、この問題の重大性に留意し、適切な行動をとるよう呼びかけた。国際海事機関も同様の呼びかけを行っている。

安全上の懸念に加え、GPSやその他の衛星信号への意図的な干渉は、国連の国際電気通信連合(ITU)の全加盟国によって合意された国際法および規制に違反する。2022年の通達でITUは、2021年に記録された航空関連の衛星ナビゲーション干渉万件以上の事例を挙げている。同通達は、このような行為が有害な干渉に対する規則に違反することを強調し、次のように述べている。「......一般に『GNSS(全地球航法衛星システム)ジャマー』と呼ばれる装置や、航空機に有害な干渉を引き起こす可能性のあるその他の違法な干渉装置の使用は、無線規の第15.1号によって禁止されている......」。

国際社会は、バルト海で見られるような電子戦が戦争であることを認識しなければならない。そして、宣戦布告がないにもかかわらず、ロシアは他国、特にNATO加盟国を標的とした一連の低レベル攻撃を意図的かつ組織的に行っている。

国際機関による話し合いや宣言が機能していないことも明らかだ。問題は悪化するばかりだ。

NATOと国際社会には、適切かつ比例的な対応で選択肢があり、速やかに検討され、採用されるべきである。例えば、新しい衛星の周波数割当てはITUが管理している。他国の衛星の信号を日常的に妨害していると判明した国に対して、新たな割り当てを拒否することは適切であると思われ、良い第一歩となる。

増大するこの問題が大きな犠牲者を出したり、NATOが直接関与する武力紛争に発展する前に、より断固とした明白な行動をとる必要がある。■


Dana Goward is the president of the Resilient Navigation and Timing Foundation and a member of the US Presidents’s National Space-Based Positioning Navigation and Timing National Advisory Board. He formerly served as the Director of Marine Transportation Systems for the US Coast Guard.

https://breakingdefense.com/2024/01/as-baltics-see-spike-in-gps-jamming-nato-must-respond/