2023年1月28日土曜日

米国の人材不足はここまで深刻だ。貨物チャーター企業アメリフライトが遠隔操縦機発注に至った。

 

Photo: Natilus


メリフライトAmeriflight(本社テキサス州ダラス・フォートワース空港)は運航コスト削減と航空貨物業界の革新のために、ネイティラス3.8Tを20機発注した。

Photo: Natilus


新興航空機メーカーのネイティラスNatilus(本社カリフォーニア州サンディエゴ)は、貨物航空会社アメリフライトと契約したと金曜日に発表した。チャーター便会社のアメリフライトは、支線用小型機20機を購入すると同意し、ネイティラスと購入注文契約を結ぶ最初の米国のリージョナル航空会社になった。同社は、パイロット不足が深刻化する中、遠隔操縦機を活用し運航効率を高めていく計画だ。

自律型航空機を貨物輸送に投入する

アメリフィライトは約134百万ドルを投入し、遠隔操縦機3.8Tを発注した。今回の受注でネイティラスは次世代航空機460機以上の受注を確保し、航空会社へ68億ドル以上のコミットメントを有することになる。アメリフライトは、効率的な機材を活用することで、運航コストを削減し、輸送能力増強と事業拡大を進める。

 アメリフライトはPart135区分の航空会社として、大型機を飛ばすだけの貨物需要がない地点で貨物チャーター便を運航している。

 過去数十年で同社はPart 135貨物航空会社として最大規模にまで成長し、米国の航空貨物業界で欠くことのできない存在になった。小型機による短距離路線が得意分野で、国内各地の夜間郵便を一手に引き受けている。

 同社は、3.8Tを20機発注しただけだが、これがネイティルスとの長い旅路の第一歩になることを期待している。アメリフライトの社長兼最高執行責任者のアラン・ルシノウィッツAlan Rusinowitは、次のように述べている。

 「今回の戦略的パートナーシップで、アメリフライトは貨物輸送の未来へのロードマップを構築し、米国におけるナティラスの最初の地域運航会社となる」「当社の目標は、イノベーションとコラボレーションを通じ成長し、ビジネスを変革することです。ネイティラスとの新しいパートナーシップを通じて、アメリフライトは持続可能なビジネスモデルで世界を安全につないでいきたい」。

 ネイティラスの共同設立者兼CEOであるアレクセイ・マチューシェフAleksey Matyushevは、今回の受注でアメリフライトの事業がさらに発展し、業界に革命をもたらすと語っている。

「アメリフライトの契約は、地域のサプライチェーンを強化し、航空貨物業界で大きな前進となる」。


遠隔操縦の貨物機


 アメリフライトが発注した3.8Tは、貨物をより効率的に輸送する設計の自律型航空機だ。貨物室がダイヤモンド型で、現在アメリフレイトで運航中の各機材よりはるかに多くの貨物を運ぶことができる。

 航続距離は最大900海里、巡航速度は220ノット、最大積載量は4.3トン。独自の機体設計で、より多くの貨物を積載できるだけでなく、抵抗を減らしたまま運航でき、効率と性能を向上させる。

 3.8Tはカーボンファイバー製で、運用コストを最大で60%、二酸化炭素排出量を50%削減できる。また、遠隔操縦が可能で、巡航中に一人のパイロットで複数機を監視できるため、航空会社の人手不足に対応する。マチューシェフはこう語った。

 「航空貨物市場のニーズに対応した自律型ソリューションを開発することは、強固な長期的ソリューションの開発に向けた重要なステップです。自律型技術は、一人のパイロットが複数機をコントロールすることで、労働力をもっと効率的に活用でき、深刻なパイロット不足の解消に貢献します」。


Ameriflight Has Ordered 20 Autonomous Cargo Planes From Natilus

BY

RILEY PICKETT

https://simpleflying.com/ameriflight-autonomous-cargo-aircraft-natilus/

2023年1月22日日曜日

デルタが路線網拡充でコロナ後の需要拡大に備える。LA-オークランド線、アトランタ-ニース線新設、NY-パリ増便など

 

Source: viper zero/Shutterstock.com


デルタエアラインズは、10月にオークランドとロサンゼルスを結ぶ初の直行便を開設し、両都市路線で唯一の米国の航空会社となる。

 デルタは10月28日からオークランド-ロサンゼルス線をデイリー運航し、エアバスA350-900を使用する。



 同都市間には他の米系航空会社は就航していないが、ニュージーランド航空は現在、同路線を1日1~2便運航している。

 アトランタを拠点とする同社は1月20日、この新路線のほか、国際線ネットワークで追加を行うと明らかにした。

 1月20日にデルタ航空はアトランタから南仏ニースへのフライトを開始すると発表した。5月には、米国とテルアビブ線でデイリー運航を開始し、ニューヨーク=パリ線で追加し1日3便とする。

 この拡張は、デルタ航空がCOVID-19の大流行で打撃を受けた国際ネットワークの回復に取り組む中で行われる。Ciriumによると、今夏の欧州・アジア行き航空会社のキャパシティ(利用可能座席マイル数)は、2019年夏から約3%減少する。


Delta to begin Los Angeles-Auckland flights in October | News

By Jon Hemmerdinger21 January 2023


2023年1月21日土曜日

水素エンジンの航空機応用で実証試験への動き。欧州、エアバスの動向に注目。CO2排出ゼロでもNOX増加では困るのでは。

 環境にやさしい航空機

技術開発の一つとして水素燃焼がクローズアップされてきました。この分野では欧州が一歩リードしているように見えますが、これからどうなるかわかりませんね。Aviationweek記事からのご紹介です

エアバスとCFMは水素燃焼ターボファンをA380に搭載しテストする予定だ。Credit: Airbus

州クリーン・ハイドロジェン・パートナーシップ・プログラムが、短・中距離商業航空の脱炭素化への望ましい方法として、タービンエンジンでの水素直接燃焼を挙げ、技術実証で入札を募集中だ。

水素をターボファンで燃焼すると、CO2排出はなくなるが、ジェット燃料エンジンに比べ窒素酸化物(NOx)が増加する可能性がある。NOxは、気候や大気質に悪影響を及ぼすので、水素燃焼が脱炭素化の手段として受入れられなくなる可能性があるとクリーンハイドロジェンClean Hydrogen Joint Undertakingは述べている。

クリーンハイドロジェンは航空用の超低NOx燃焼システム開発の入札で最大800万ユーロ(860万ドル)の欧州連合資金を利用し、欧州で計画中の100%水素燃焼ターボファンエンジンの飛行試験を支援する。

水素の燃焼は、ジェット燃料の燃焼に比べ火炎温度が高く、空気中で燃焼させた場合の水素の反応性が高いため、NOxが多く発生しやすい。NOxはオゾンの生成やメタンの破壊によって気候変動に寄与し、温暖化効果が強い。

クリーンエイビエーションのフェーズ1では、既存のターボファンを水素作動用に改造し、液体水素タンクから燃料・制御システム、改造した燃焼器まで、全システムの実現可能性を実証する地上試験を行う。

地上試験の成功が、フェーズ2で最初に予定される飛行試験実証の前提条件で、100%水素を燃焼させたターボファンで発生する飛行機雲を機内で測定する。

クリーンエイビエーションのフェーズ1は「非常にタイトなスケジュール」のため、「低NOx燃焼技術の開発は限られる」とクリーンハイドロジェンは言い、フェーズ2では、製品開発への準備レベル(TRL)の開発の時間が十分でないとある。

そのため、クリーンエイビエーションでは、超低NOx 燃焼技術を TRL 4まで開発しフェーズ 2 で TRL 6 まで成熟させたいとする。最終目標は、水素燃料旅客機を2035年までに開発するエアバスのZEROeプロジェクトの支援にある。

水素燃焼システムは、現行ターボファン程度のNOx排出量を可能にし、現在施行中の規制を約50%下回り、さらに少なくとも30%の排出量削減の可能性があるという。

クリーンハイドロジェンでは、燃料・空気の均等分配、信頼性が高く安全な点火、自動着火やフラッシュバックのない火炎安定化を提供する燃料噴射システムなどの開発を技術課題に挙げている。また、オーバーヒート防止や、一般的な航空機の運転範囲でのNOX生成の制御も要求される。

プロジェクトでは、シングルカップおよびマルチカップセクター燃焼器の試験を行い、光学、熱音響、エミッションの測定を関連する動作圧力と温度で行う。4月中旬までプロポーザル提出を受け付ける。■

Ultra-Low NOx Combustor In Works For Hydrogen-Burning Turbofans | Aviation Week Network

Graham Warwick January 17, 2023



Graham Warwick

Graham leads Aviation Week's coverage of technology, focusing on engineering and technology across the aerospace industry, with a special focus on identifying technologies of strategic importance to aviation, aerospace and defense.


2023年1月14日土曜日

オーロラフライトサイエンシズのD8はダブルバブル機体構造、エンジン配置の変更で短距離路線の運行効率を大幅向上しそうなコンセプトだが....

 大手OEMのボーイング、エアバスがもたもたしている間に新興メーカーが次々に新型機の構想を発表していますね。もちろん、すべて実現しないとしても航空業界の活力維持のためにもこうした勢力が着実に生まれてくることが必要です。Simple Flying記事のご紹介です。


このコンセプトは短距離路線の運行効率を画期的に変える可能性を秘めている

Photo: NASA

空機の今の形状にわれわれは慣れきっている。初のジェット旅客機コメットから、民間航空機は主翼と尾翼がついたチューブ構造が基本だ。翼は高くなったり低くなったり、尾翼はT字型やフィン型になっても、基本的には70年以上にわたり飛行機は同じ形状だ。

その中でエアバスは混合翼機を提案し、他社は空気力学を改善するため翼をより細くしたり、胴体を狭くしたりしてきた。しかし、オーロラ・フライト・サイエンシズのD8コンセプトは、一歩先を進んでいる。


ダブルバブルの機体構造

環境に優しい亜音速旅客機の概念設計は、2008年にオーロラ、MIT、Pratt & Whitneyが専門知識を結集し、新しい機体を開発する狙いで開始された。NASAから助成金290万ドルを受け、チームは2017年半ばにD8の開発を開始した。

同コンセプトは、ユニークな機体デザインから「ダブルバブル」との呼称がついた。ボーイング737をほぼベースにしているが、ほぼ二倍の胴体幅の機体で、180人乗りで航続距離は3,000海里、短距離路線機としてまずまずの設計だ。ワイドボディなので、空港でのターンアラウンドも現在の単通路機より速くなる可能性がある。

D8は、その他コンセプト機と同様に、二酸化炭素排出量と騒音の問題に取り組む設計だ。マッハ0.74で飛行することで、標準的なボーイング737-800との比較で、当初は燃料消費量を70%、騒音を71dB削減できると開発者は考えていた。しかし、設計変更で、マッハ0.82で標準的なジェット機と同等の速度で飛行することにした結果、燃料消費量は49%、騒音で40dBの低減となる。

オーロラD8の特徴は?

オーロラD8の美しさは、特異な機体形状にある。一見しても、普通の機体とは違う。効率的な設計の特徴である高アスペクト比の主翼と広い胴体で、揚力が自然に得られる。さらに、エンジンは機体の摩擦抵抗を減らすために、境界層吸収(Boundary Layer Ingestion:BLI)対応の設計とし、幅広の尾翼で扁平な胴体上に置くことで、後流を再活性化できるはずだ。

Photo: Aurora Flight Sciences


しかし、そこでオーロラ・フライト・サイエンシズには課題がある。ウェイクフィリング推進では、エンジンに流入する乱気流に対応するため、歪みに強いファンが必要となる。また、抗力低減効果を最大限に活用するため大型にする必要があり、機体上部の破片や氷がパワープラントに入り込む可能性にも耐えられる構造が必要だ。とはいえ風洞実験では、エンジンのBLIで、標準的な航空機の設計に比べ8〜10%の効率改善が見込めるとの有望な結果が得られている。

D8が飛行する日は来るか?

オーロラD8が実際に生産に至る可能性は、航空界で生まれたその他コンセプトよりは高いと思わる。手始めに、2017年11月、ボーイングはオーロラ・フライト・サイエンシズを買収した。独立した事業体ルであることに変わりはないが、同社はボーイングのリソースと市場ポジションの恩恵を受けることができるようになった。

Photo: Aurora Flight Sciences


ほぼ同時期にNASAは、同プロジェクトとXプレーンの実験モデルの開発へ資金提供を継続すると確認した。XD8は、風洞実験、推進技術、大規模な構造実験モデルとして、D8の技術や特性を実証する役割を担う。

その後、静かになっているが、このコンセプトには印象的な特徴が残っている。この構想は棚上げにされたのか、あるいは密室でひっそりテストが続けられているのかもしれない。いずれにせよ、D8が空の旅の未来の手がかりになるかもしれない。■

The Disruptor? Meet The Aurora D8 – A New 180 Seat Double Bubble Widebody

BY JOANNA BAILEY




2023年1月10日火曜日

従来型ワイドボディを極限まで改革するとこうなる。SE200はまだ設計図上の存在だが注目に値する

 


Photo: SE Aeronautics


理論的なスペックは、かなり驚異的。モノコック構造で窓がないのが難点。

航空業界は、当分の間、チューブ&ウィング式のクラシックな航空機の設計に固執するようだが、より環境に優しい運航手段への移行という課題に対応するため革新にも目を向けているす。電動垂直離着陸機(eVTOL)や超音速の新型機「Boom」など新興企業の話題を聞いたことがある人も多いはずだ。2021年3月、SE Aeronauticsとして知られるアラバマ州のスタートアップが新コンセプトのワイドボディ機を発表したが、その姿は滑走路で見慣れた機体と大きく異なっていた。

 SE Aeronautics(SEはSuper Efficientの略)は、旅客機コンセプトを一新し、従来機より燃料消費量を70%、二酸化炭素排出量を80%削減する革新的な3翼機を発表した。現在はまだ理論に過ぎないが、実現すれば、そのスペックはまさにゲームチェンジャー的な航空機になる。このSE200について紹介する。

ワイドボディの再設計

パンデミックの影響で、ワイドボディ機の受注は減少している。しかし、業界筋によれば、あと2、3年で正常な状態に戻るという。また、航空業界は脱炭素化の圧力に一層直面しており、燃費と低排出が航空会社の希望リストの上位に位置づけられることになるう。乗客1キロメートルあたりのCO2排出量を追いかけるのは大変な作業だが、もし新しいコンセプトの飛行機が、安全性や積載量を犠牲にせずCO2排出量を大幅に削減できれば、民間航空会社は間違いなく満足するはずだ。

 しかし、SE200はまだ図面上の存在であり、技術者が夢見た航空機がすべて実際に生産ラインに乗るわけではない。しかし、コンポジットで夢を見ることは悪いことではない。

写真:SE Aeronautics SE Aeronautics

 航空が環境に与える影響を軽減するために、新しい技術や戦略の開発が続いている。これまでのところ、こうした解決策は、新しいエンジン技術、新しい素材、の新しい動力源を中心に展開されている。しかし、航空機が、抜本的な再設計の時期を迎えているとしたらどうでしょう?

 SE200は、より効率的な飛行、より低い運航コスト、乗客の安全性の向上、そして従来型航空機の2倍の耐用年数を約束します。SE AeronauticsのチーフエンジニアLloyd Weaverは、同機設計であらゆることを考慮したと述べ、次のようにコメントしている。

「当社の革新的な技術と新しい航空機の設計により、座席キロ当たりで測定した場合、燃料消費量を70%削減し、CO2排出量を80%削減できる。革新的な設計は、より効率的な軽量三翼の構成で、抗力より揚力を大幅に改善し、短距離離着陸(STOL)性能と超長距離飛行を実現する。構造はすべて複合材で、丈夫で安全な一体成形です。さらに、超薄型で長い主翼と、機首から尾翼まで完全な流線型を取り入れました。当社はすべてをやり遂げたのです」。


機体の特徴

SE200の機体原理は、珍しい3枚翼のデザインだけでなく、構造にも表れている。SE200は、ボルト固定のパネルではなく、1枚の複合材から成形するモノコック構造だ。これにより、疲労が軽減され、乗客により安全な航空機になるとしている。

 超薄型の主翼は、燃料庫を兼ねていない。その代わり、燃料は胴体上部にある自己密封式のブラダーに貯蔵される。これにより、不時着した際も長時間浮くことができる。

 推進力は、後部に搭載された超高効率エンジン2基の64,000lbfの推力が得られるという。SEエアロノーティクスは貨物についても考慮し、747-8Fの約半分の積載量と最大離陸重量(MTOW)17万ポンドの「最新式バルクコンテナシステム」を搭載可能としている。

Photo: SE Aeronautics


乗客264人を乗せ10,560マイル(16,995km)の航続距離を想定している。これは、A330neoや787ファミリーよりも長く、A350ULRとほぼ同じになる。しかし、このような抜本的な再設計でボーイングやエアバスに対抗できるだろうか?

 SE AeronauticsのCEOであるTyler Mathewsは、そう考えている。こうコメントしている。

「この航空機は、今日の著しく性能の低い旅客機技術に対する、最も実用的で収益性の高い、恒久的な解決策となります。当社の製造効率は、現在の伝統的な方法より大幅に短い時間で航空機を製造できます。しかし、なんといっても重要なのは、燃料消費率を70%削減することです。当社は、業界に革命を起こします」。


窓がなくても乗客は耐えられるか?

新しいワイドボディのデザインは、2-4-2の座席配置と32″のピッチで快適な旅行を約束する。しかし、SE200には窓が存在しない。同社CEOは、窓は「価値があるというより、構造強度にとって大きな問題」であり、代わりに外を漂う風景をデジタルで投影するディスプレイを乗客に見せれば良いと考えているようだ。

 SE Aeronauticsが2021年3月に特許出願したSE200三翼の設計を明らかにして以来、このプロジェクトに関するニュースはあまりない。同社のTwitterアカウントでは、これまでデザインを発表する1つのツイートが上がっただけだった。環境に優しい実験的な航空機は素晴らしいが(Simple Flyingでは窓際の席での体験に愛着があるが)、世界で最もクールなデザインも、図面から飛び立たなければ、意味がない。■


The Disruptor? Meet The Proposed SE200 Low-Emission 264 Seat Widebody

BY

JOANNA BAILEY

UPDATED 3 DAYS AGO


2023年1月8日日曜日

民間航空業界に漂う閉塞感を払拭できるか。Aviation Week主筆の見解を聞きましょう。

 民間航空の機体メーカーに閉塞感が漂っている、というのが本記事の論旨です。かねてから当ブログで主張しているように今の航空業界は既存ビジネスモデルで利益を最大化しようという金融筋の思惑に支配されており、冒険、ベンチャー精神が衰退し、失敗を恐れているように見えますね。軍事航空で予算が潤沢にあればスピンオフも期待できるのですが、そうはいきません。突破口となる画期的な素材、エンジン、機体の技術が切望されます。Aviation Weekの記事です。

 

Credit: Embraer

 

 

空業界は、持続可能な社会へ向け強いプレッシャーにさらされているが、エンブラエルが最近次世代ターボプロップ計画を凍結したように、既存の機体メーカーはこうした圧力に対応する新型旅客機を市場に投入できない、あるいはしたくないようである。

 

 

 ボーイングのデビッド・カルフーンCEOは11月、新型旅客機開発の開始は2030年代からと発言し、シアトルを震撼させた。このような無策は、エアバスがボーイングから奪ったナローボディ機の市場シェアを考えれば、ラインアップを刷新するインセンティブにならないのは明らかだ。

 また、ターボプロップ旅客機の活性化につながるはずだったエンブラエルの環境に優しい航空機の開発中止で、業界唯一の希望だった完全新型機の将来が危ぶまれているように映る。

 2022年を通じ、企業や航空会社は、持続可能な航空燃料の使用の増加、電気推進、環境に優しい客室内装など、航空をより環境に優しいものにするため献身的な取り組みを宣言し、互いにしのぎを削っていた。しかし、悲しいことに、次世代旅客機の実現にはほど遠いのが現実だ。747やコンコルドを生み出し、長年にわたり燃料効率と騒音低減を執拗に追い求めてきた業界が麻痺状態におちいっているように見える。

 推進力の面では、GE-SafranのCFMパートナーシップが、100%持続可能な燃料または水素で走行可能なオープンローターRISEエンジンで、燃料使用量と排出量の20%削減を目指している。しかし、RISEの実用化は、2030年代半ばという。プラット&ホイットニーは、2016年に稼働を開始したギヤードターボファンエンジンの効率を高めることに注力しており、ロールス・ロイスは財政難から、未稼働のアルトラファン実証機を含む革新的なプロジェクトに投資がままならない。

 これらのことから、民間航空機産業が次世代民間航空機を開発するまで今後10年は無為無策になりそうだ。新しいことに挑戦するのが好きな経験豊かなエンジニアにとって、これは心強いことではない。

 もし、そうでなければ......。この小康状態が、新しいプレイヤーへの扉を開くのではないか、と人々は考え始めている。少し前までは、技術系の起業家が民間航空機企業を興すのは考えられなかった。しかし、ブレイク・ショールのブーム・スーパーソニックは、マッハ1.7、80席の「オーバーチュア」を、ユナイテッドアメリカンを筆頭に、航空会社数社から採用の約束を取り付けている。ロールス・ロイスとの契約が成立しなかったため、ブームは独自にオーバーチュアーのエンジン開発に着手し、フロリダ・タービン・テクノロジーズの元プラット&ホイットニー戦闘機エンジニアのチームを結集し、スタンダードエアロおよびGEアディティブと共同開発する。

 業界を代表するベテランの多くは、ブームが成功するか懐疑的だ。しかし、2004年にAviation Weekが、カリフォーニアの野心的な新興企業を紹介するため東海岸からレポーターを送ったことも覚えている。その会社がSpaceXである。

 もし、ブームが成功しても、ニッチな存在であることに変わりはない。エアバスやボーイングに真っ向から対抗するのは、参入障壁の高いこの業界では無理だ(中国のコマックに聞いてみればいい)。しかし、不可能ではない。特に、より機敏な新興企業が独自の業界チームを結成し、より持続可能な製品でニッチを埋めることができるのであれば。

 長い間研究されてきた機体一体型主翼機の商業的なバージョンに機が熟してきたといえるか。NASA や国防総省の関心は、おそらく X-plane タンカープロジェクトを通じ、このようなマルチロールコンセプトに新しい生命を吹き込む可能性がある。約 70年前にボーイング社が米空軍のために行った 367-80 タンカー輸送の賭けが、現代のジェット機世代への道を開いたように、歴史が繰り返すかもしれません。しかし、当時と違い、そのジャンプを喜んで行う新興企業はあり得るのか?

 また、カルフーンのタイムラインがボーイングの最後の言葉であるというのも納得がいかない。カルフーンの開発中止は、同社が問題解決とキャッシュフローを生み出すことに注力していることを、懐疑的な投資家に安心させるための演出であることは明らかだ。しかし、ボーイングは、トランソニック・トラス・ブレースド・ウィングや、ナローボディ市場におけるエアバスの優位性を鈍らせるための757後継機など、新型旅客機の選択肢を検討し続けている。カルフーンかその後継者が、今後2~4年の間にそうした航空機の開発を承認する可能性はまだ残っている。

 一方でこの業界には、二酸化炭素排出量の削減を求める容赦ない圧力がかかり続けている。「世界の二酸化炭素排出量を減らす最良の方法の1つは、新しい機体に移行することです」と、Aviation Weekの編集者ガイ・ノリスは、最近のCheck 6 Podcastで筆者に語っていた。「10%であろうと25%であろうと、新機材への更新で大きな違いになるのです」。■

 

From the Editor: Can Aviation Overcome Its State of Paralysis?

Joe Anselmo December 22, 2022

 

Joe Anselmo

Joe Anselmo has been Editorial Director of the Aviation Week Network and Editor-in-Chief of Aviation Week & Space Technology since 2013. Based in Washington, D.C., he directs a team of more than two dozen aerospace journalists across the U.S., Europe and Asia-Pacific.


2023年1月7日土曜日

中国製のARJ21がいつのまにか100機納入されていた。国際的に通用しない機体のはずなのだがインドネシアも導入。

 

Photo: Su Wu



ARJ21は2022年下半期に32機納入され、年間納入記録が34機になった。


中国商用飛機集団(COMAC)は12月29日、ARJ21の100機目納入を発表した。COMACはこのマイルストーンについて、ARJ21プログラムが「大量生産、大規模運用、連続開発」の新段階を迎えたと説明している。

 COMACはさらにコメントしている。

 「量産100機目の納入は、あらゆる民間航空機にとって重要なマイルストーン。これはARJ21航空機群の運航性能と運航レベルが基本的に主流機と同等であることを意味し、同機の安全性と信頼性が航空会社と民間航空市場に十分に検証されたことを示している」と述べている。


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急成長する納入数

Simple Flyingは今年6月28日未明、COMACが成都航空と中国南方航空に67機目と68機目のARJ21を納入したことを報じたのが2022年上半期納入で唯一のARJ21だった。

 今回の100機目納入の正式発表により、COMACは2022年下半期にARJ21を32機納入したことになり、半期で最高の数字であるだけでなく、2020年達成の年間納入記録の23機を上回る。

 COMACの公式発表によると、ARJ21の年間生産能力は現在50機で、年間30機のバランス生産を行っているとある。


顧客と受注状況

COMACのARJ21は現在、8社が顧客で成都航空Chengdu Airlines、チンギスハーン航空Genghis Khan Airlines、江西航空Jiangxi Air、中国国際航空Air China、OTT航空OTT Airlines(中国東方航空100%出資)、中国南方航空China Southern Airlines、中国速達China Express、中国飛行総合航空公司China Flight General Aviation Company(CFGAC)、海外1社だ。このうち海外顧客は、インドネシアのトランスヌサ航空TransNusa。

 成都航空は2015年11月29日に最初のARJ21を受領して以来、34機受領しているが、COMACは2020年以降、様々な理由(貨物構成の変更、チャーター便など)で7機を回収し、現在の成都航空のARJ21保有機数は27機となっている。

 興味深い事実は、COMACがARJ21を持ち帰った後、1機は自社のチャーターサービスであるCOMAC Expressに行ったことだ。

 2週間前の12月18日、COMACは初めて外国の航空会社TransNusaにARJ21を引き渡した。

 COMACによると、これまでのところ、顧客20社から670機のARJ21旅客機と70機のARJ21貨物構成の発注を受けているが、すべてが確定発注ではない。


ARJ21の別仕様開発

ARJ21ファミリーには、ARJ21STD(スタンダードレンジ)とARJ21ER(エクステンデッドレンジ)の2型式がある。現在、納入中のARJ21は全て延長バージョンです。さらに、ARJ21にはCBJ(COMAC Business Jet)というビジネスジェットがあり、STC(Supplemental Type Certificate:型式証明書)の認定を受けている。

 CBJは2021年11月の珠海エアショーで初めて一般公開された。昨年11月の最新珠海エアショーで、COMACは医療輸送用コンフィギュレーションARJ21を発表した。

写真はこちら。COMAC

 ARJ21の貨物仕様は最近、上海浦東国際空港(PVG)近くのCOMACのFAL施設で、顧客であるYTOカーゴ航空のカラーリングで目撃された。

 また、ARJ21の他の変更点として、緊急展開部隊用や消防用などが開発中と報告されている。■


China's COMAC Delivers Its 100th ARJ21

BY

SU WU

PUBLISHED 2 DAYS AGO


2023年1月6日金曜日

デルタが乗客全員に無料WiFiサービスを開始すると発表。

 機内WiFiサービスはこれまでもありましたが、米大手デルタが無料提供を乗客全員にはじめることで他社にも影響が出そうですね



デルタエアラインズは、米「ビッグ4」航空会社で初めて、乗客に無料WiFiを提供する。

 同社CEOのエド・バスティアンは携帯電話会社T-Mobileと提携し、2月1日から約8割の機体で乗客全員に無料WiFiを展開すると発表した。

T-Mobile、Viasatと提携し、無料WiFiを全員に提供

 全乗客への無料WiFi提供は、デルタが数年前から計画していたもので、ようやく実現する。GoGoとの独占提携からWiFiプロバイダーを変更し、デルタは航空機にViasat機器を設置し始めた。フライト試験で、ヴァイアサットの技術で乗客全員の同時接続が可能と証明した。


コンシューマー・エレクトロニクス・トレードショーで、デルタCEOは次のように述べた。

 「職場、家庭、あらゆる場所で、接続性は日常生活に欠かせない存在であり、デルタエアラインズでの旅も同じであるべきです。当社のビジョンは、3万フィート上空で、お客様に地上と同様の体験を提供することです。

 「無料Wi-Fiは基本的なサービスだけでなく、機内体験全体を変革するべきと考えました。機内のお客様全員が、自宅と同じようにお気に入りコンテンツを楽しめることが不可欠であり、それを可能にするためこのシステムを綿密にテストしてきました」。

 T-MobileのCEO、Mike Sievertはこう付け加えた。

「T-Mobileは、旅行中の接続は簡単かつシームレスな体験であるべきと考えています。T-モバイルのお客様は無料機内Wi-Fiをご利用いただいていますが、今回デルタエアラインズとの提携で、プロバイダーと関係なく、すべてのお客様にこの体験をお届けします。これにより、デルタ航空をご利用のお客様は離陸から着陸までオンラインアクセスを楽しむことができます」。

どう機能するのか?

2月1日から、デルタの機材8割で乗客は、この新しいアメニティを利用可能となる。デルタは、来月時点で、国内線の主要機のほとんどで無料WiFiを利用でき、2024年までに国際線とリージョナル機も含まれる。

 デルタの無料WiFiは、スカイマイル会員かT-Mobileの顧客であることが条件。スカイマイル会員になるのは無料で、乗客は機内で入会し、インターネットが利用できる。デルタは、インターネット接続にスカイマイルアカウントを求めることで、乗客との関係を維持し、プロモーションのターゲットにできるとしている。スカイマイルアカウントを作りたくない人は、10ドルでインターネットにアクセスできる。

 アトランタが拠点の同社は、「よくある質問」ページで。搭乗客は、搭乗ゲート横のステッカーで、搭乗機が無料Wi-Fiを提供しているかがわかると解説している。本日の発表で2番目にエキサイティングなことは、新サービスの利用でデバイスの制限がないことだろう。■

Delta Air Lines To Offer Free Wifi On 80% Of Its Fleet From February 1

BY LUKAS SOUZA


ご存知でしたか?空港で紛失した手荷物を購入できます(SimpleFlying)―鉄道遺失物販売と規模がちがいます。ロストバゲージが日本では少ないのならこのビジネスは成り立ちませんね

  Gemini. 空 港を利用して旅行し、荷物の大規模な移動を目の当たりにすると、「紛失した荷物はどうなるのか」という疑問が生じませんか。この疑問は2023年の記事で扱いましたが、SITAのような企業や彼らのWorldTracerサービスが、乗客と荷物を自動的に再会させるために...