オーロラフライトサイエンシズのD8はダブルバブル機体構造、エンジン配置の変更で短距離路線の運行効率を大幅向上しそうなコンセプトだが....

 大手OEMのボーイング、エアバスがもたもたしている間に新興メーカーが次々に新型機の構想を発表していますね。もちろん、すべて実現しないとしても航空業界の活力維持のためにもこうした勢力が着実に生まれてくることが必要です。Simple Flying記事のご紹介です。


このコンセプトは短距離路線の運行効率を画期的に変える可能性を秘めている

Photo: NASA

空機の今の形状にわれわれは慣れきっている。初のジェット旅客機コメットから、民間航空機は主翼と尾翼がついたチューブ構造が基本だ。翼は高くなったり低くなったり、尾翼はT字型やフィン型になっても、基本的には70年以上にわたり飛行機は同じ形状だ。

その中でエアバスは混合翼機を提案し、他社は空気力学を改善するため翼をより細くしたり、胴体を狭くしたりしてきた。しかし、オーロラ・フライト・サイエンシズのD8コンセプトは、一歩先を進んでいる。


ダブルバブルの機体構造

環境に優しい亜音速旅客機の概念設計は、2008年にオーロラ、MIT、Pratt & Whitneyが専門知識を結集し、新しい機体を開発する狙いで開始された。NASAから助成金290万ドルを受け、チームは2017年半ばにD8の開発を開始した。

同コンセプトは、ユニークな機体デザインから「ダブルバブル」との呼称がついた。ボーイング737をほぼベースにしているが、ほぼ二倍の胴体幅の機体で、180人乗りで航続距離は3,000海里、短距離路線機としてまずまずの設計だ。ワイドボディなので、空港でのターンアラウンドも現在の単通路機より速くなる可能性がある。

D8は、その他コンセプト機と同様に、二酸化炭素排出量と騒音の問題に取り組む設計だ。マッハ0.74で飛行することで、標準的なボーイング737-800との比較で、当初は燃料消費量を70%、騒音を71dB削減できると開発者は考えていた。しかし、設計変更で、マッハ0.82で標準的なジェット機と同等の速度で飛行することにした結果、燃料消費量は49%、騒音で40dBの低減となる。

オーロラD8の特徴は?

オーロラD8の美しさは、特異な機体形状にある。一見しても、普通の機体とは違う。効率的な設計の特徴である高アスペクト比の主翼と広い胴体で、揚力が自然に得られる。さらに、エンジンは機体の摩擦抵抗を減らすために、境界層吸収(Boundary Layer Ingestion:BLI)対応の設計とし、幅広の尾翼で扁平な胴体上に置くことで、後流を再活性化できるはずだ。

Photo: Aurora Flight Sciences


しかし、そこでオーロラ・フライト・サイエンシズには課題がある。ウェイクフィリング推進では、エンジンに流入する乱気流に対応するため、歪みに強いファンが必要となる。また、抗力低減効果を最大限に活用するため大型にする必要があり、機体上部の破片や氷がパワープラントに入り込む可能性にも耐えられる構造が必要だ。とはいえ風洞実験では、エンジンのBLIで、標準的な航空機の設計に比べ8〜10%の効率改善が見込めるとの有望な結果が得られている。

D8が飛行する日は来るか?

オーロラD8が実際に生産に至る可能性は、航空界で生まれたその他コンセプトよりは高いと思わる。手始めに、2017年11月、ボーイングはオーロラ・フライト・サイエンシズを買収した。独立した事業体ルであることに変わりはないが、同社はボーイングのリソースと市場ポジションの恩恵を受けることができるようになった。

Photo: Aurora Flight Sciences


ほぼ同時期にNASAは、同プロジェクトとXプレーンの実験モデルの開発へ資金提供を継続すると確認した。XD8は、風洞実験、推進技術、大規模な構造実験モデルとして、D8の技術や特性を実証する役割を担う。

その後、静かになっているが、このコンセプトには印象的な特徴が残っている。この構想は棚上げにされたのか、あるいは密室でひっそりテストが続けられているのかもしれない。いずれにせよ、D8が空の旅の未来の手がかりになるかもしれない。■

The Disruptor? Meet The Aurora D8 – A New 180 Seat Double Bubble Widebody

BY JOANNA BAILEY




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