従来型ワイドボディを極限まで改革するとこうなる。SE200はまだ設計図上の存在だが注目に値する

 


Photo: SE Aeronautics


理論的なスペックは、かなり驚異的。モノコック構造で窓がないのが難点。

航空業界は、当分の間、チューブ&ウィング式のクラシックな航空機の設計に固執するようだが、より環境に優しい運航手段への移行という課題に対応するため革新にも目を向けているす。電動垂直離着陸機(eVTOL)や超音速の新型機「Boom」など新興企業の話題を聞いたことがある人も多いはずだ。2021年3月、SE Aeronauticsとして知られるアラバマ州のスタートアップが新コンセプトのワイドボディ機を発表したが、その姿は滑走路で見慣れた機体と大きく異なっていた。

 SE Aeronautics(SEはSuper Efficientの略)は、旅客機コンセプトを一新し、従来機より燃料消費量を70%、二酸化炭素排出量を80%削減する革新的な3翼機を発表した。現在はまだ理論に過ぎないが、実現すれば、そのスペックはまさにゲームチェンジャー的な航空機になる。このSE200について紹介する。

ワイドボディの再設計

パンデミックの影響で、ワイドボディ機の受注は減少している。しかし、業界筋によれば、あと2、3年で正常な状態に戻るという。また、航空業界は脱炭素化の圧力に一層直面しており、燃費と低排出が航空会社の希望リストの上位に位置づけられることになるう。乗客1キロメートルあたりのCO2排出量を追いかけるのは大変な作業だが、もし新しいコンセプトの飛行機が、安全性や積載量を犠牲にせずCO2排出量を大幅に削減できれば、民間航空会社は間違いなく満足するはずだ。

 しかし、SE200はまだ図面上の存在であり、技術者が夢見た航空機がすべて実際に生産ラインに乗るわけではない。しかし、コンポジットで夢を見ることは悪いことではない。

写真:SE Aeronautics SE Aeronautics

 航空が環境に与える影響を軽減するために、新しい技術や戦略の開発が続いている。これまでのところ、こうした解決策は、新しいエンジン技術、新しい素材、の新しい動力源を中心に展開されている。しかし、航空機が、抜本的な再設計の時期を迎えているとしたらどうでしょう?

 SE200は、より効率的な飛行、より低い運航コスト、乗客の安全性の向上、そして従来型航空機の2倍の耐用年数を約束します。SE AeronauticsのチーフエンジニアLloyd Weaverは、同機設計であらゆることを考慮したと述べ、次のようにコメントしている。

「当社の革新的な技術と新しい航空機の設計により、座席キロ当たりで測定した場合、燃料消費量を70%削減し、CO2排出量を80%削減できる。革新的な設計は、より効率的な軽量三翼の構成で、抗力より揚力を大幅に改善し、短距離離着陸(STOL)性能と超長距離飛行を実現する。構造はすべて複合材で、丈夫で安全な一体成形です。さらに、超薄型で長い主翼と、機首から尾翼まで完全な流線型を取り入れました。当社はすべてをやり遂げたのです」。


機体の特徴

SE200の機体原理は、珍しい3枚翼のデザインだけでなく、構造にも表れている。SE200は、ボルト固定のパネルではなく、1枚の複合材から成形するモノコック構造だ。これにより、疲労が軽減され、乗客により安全な航空機になるとしている。

 超薄型の主翼は、燃料庫を兼ねていない。その代わり、燃料は胴体上部にある自己密封式のブラダーに貯蔵される。これにより、不時着した際も長時間浮くことができる。

 推進力は、後部に搭載された超高効率エンジン2基の64,000lbfの推力が得られるという。SEエアロノーティクスは貨物についても考慮し、747-8Fの約半分の積載量と最大離陸重量(MTOW)17万ポンドの「最新式バルクコンテナシステム」を搭載可能としている。

Photo: SE Aeronautics


乗客264人を乗せ10,560マイル(16,995km)の航続距離を想定している。これは、A330neoや787ファミリーよりも長く、A350ULRとほぼ同じになる。しかし、このような抜本的な再設計でボーイングやエアバスに対抗できるだろうか?

 SE AeronauticsのCEOであるTyler Mathewsは、そう考えている。こうコメントしている。

「この航空機は、今日の著しく性能の低い旅客機技術に対する、最も実用的で収益性の高い、恒久的な解決策となります。当社の製造効率は、現在の伝統的な方法より大幅に短い時間で航空機を製造できます。しかし、なんといっても重要なのは、燃料消費率を70%削減することです。当社は、業界に革命を起こします」。


窓がなくても乗客は耐えられるか?

新しいワイドボディのデザインは、2-4-2の座席配置と32″のピッチで快適な旅行を約束する。しかし、SE200には窓が存在しない。同社CEOは、窓は「価値があるというより、構造強度にとって大きな問題」であり、代わりに外を漂う風景をデジタルで投影するディスプレイを乗客に見せれば良いと考えているようだ。

 SE Aeronauticsが2021年3月に特許出願したSE200三翼の設計を明らかにして以来、このプロジェクトに関するニュースはあまりない。同社のTwitterアカウントでは、これまでデザインを発表する1つのツイートが上がっただけだった。環境に優しい実験的な航空機は素晴らしいが(Simple Flyingでは窓際の席での体験に愛着があるが)、世界で最もクールなデザインも、図面から飛び立たなければ、意味がない。■


The Disruptor? Meet The Proposed SE200 Low-Emission 264 Seat Widebody

BY

JOANNA BAILEY

UPDATED 3 DAYS AGO


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