水素エンジンの航空機応用で実証試験への動き。欧州、エアバスの動向に注目。CO2排出ゼロでもNOX増加では困るのでは。

 環境にやさしい航空機

技術開発の一つとして水素燃焼がクローズアップされてきました。この分野では欧州が一歩リードしているように見えますが、これからどうなるかわかりませんね。Aviationweek記事からのご紹介です

エアバスとCFMは水素燃焼ターボファンをA380に搭載しテストする予定だ。Credit: Airbus

州クリーン・ハイドロジェン・パートナーシップ・プログラムが、短・中距離商業航空の脱炭素化への望ましい方法として、タービンエンジンでの水素直接燃焼を挙げ、技術実証で入札を募集中だ。

水素をターボファンで燃焼すると、CO2排出はなくなるが、ジェット燃料エンジンに比べ窒素酸化物(NOx)が増加する可能性がある。NOxは、気候や大気質に悪影響を及ぼすので、水素燃焼が脱炭素化の手段として受入れられなくなる可能性があるとクリーンハイドロジェンClean Hydrogen Joint Undertakingは述べている。

クリーンハイドロジェンは航空用の超低NOx燃焼システム開発の入札で最大800万ユーロ(860万ドル)の欧州連合資金を利用し、欧州で計画中の100%水素燃焼ターボファンエンジンの飛行試験を支援する。

水素の燃焼は、ジェット燃料の燃焼に比べ火炎温度が高く、空気中で燃焼させた場合の水素の反応性が高いため、NOxが多く発生しやすい。NOxはオゾンの生成やメタンの破壊によって気候変動に寄与し、温暖化効果が強い。

クリーンエイビエーションのフェーズ1では、既存のターボファンを水素作動用に改造し、液体水素タンクから燃料・制御システム、改造した燃焼器まで、全システムの実現可能性を実証する地上試験を行う。

地上試験の成功が、フェーズ2で最初に予定される飛行試験実証の前提条件で、100%水素を燃焼させたターボファンで発生する飛行機雲を機内で測定する。

クリーンエイビエーションのフェーズ1は「非常にタイトなスケジュール」のため、「低NOx燃焼技術の開発は限られる」とクリーンハイドロジェンは言い、フェーズ2では、製品開発への準備レベル(TRL)の開発の時間が十分でないとある。

そのため、クリーンエイビエーションでは、超低NOx 燃焼技術を TRL 4まで開発しフェーズ 2 で TRL 6 まで成熟させたいとする。最終目標は、水素燃料旅客機を2035年までに開発するエアバスのZEROeプロジェクトの支援にある。

水素燃焼システムは、現行ターボファン程度のNOx排出量を可能にし、現在施行中の規制を約50%下回り、さらに少なくとも30%の排出量削減の可能性があるという。

クリーンハイドロジェンでは、燃料・空気の均等分配、信頼性が高く安全な点火、自動着火やフラッシュバックのない火炎安定化を提供する燃料噴射システムなどの開発を技術課題に挙げている。また、オーバーヒート防止や、一般的な航空機の運転範囲でのNOX生成の制御も要求される。

プロジェクトでは、シングルカップおよびマルチカップセクター燃焼器の試験を行い、光学、熱音響、エミッションの測定を関連する動作圧力と温度で行う。4月中旬までプロポーザル提出を受け付ける。■

Ultra-Low NOx Combustor In Works For Hydrogen-Burning Turbofans | Aviation Week Network

Graham Warwick January 17, 2023



Graham Warwick

Graham leads Aviation Week's coverage of technology, focusing on engineering and technology across the aerospace industry, with a special focus on identifying technologies of strategic importance to aviation, aerospace and defense.


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