民間航空業界に漂う閉塞感を払拭できるか。Aviation Week主筆の見解を聞きましょう。

 民間航空の機体メーカーに閉塞感が漂っている、というのが本記事の論旨です。かねてから当ブログで主張しているように今の航空業界は既存ビジネスモデルで利益を最大化しようという金融筋の思惑に支配されており、冒険、ベンチャー精神が衰退し、失敗を恐れているように見えますね。軍事航空で予算が潤沢にあればスピンオフも期待できるのですが、そうはいきません。突破口となる画期的な素材、エンジン、機体の技術が切望されます。Aviation Weekの記事です。

 

Credit: Embraer

 

 

空業界は、持続可能な社会へ向け強いプレッシャーにさらされているが、エンブラエルが最近次世代ターボプロップ計画を凍結したように、既存の機体メーカーはこうした圧力に対応する新型旅客機を市場に投入できない、あるいはしたくないようである。

 

 

 ボーイングのデビッド・カルフーンCEOは11月、新型旅客機開発の開始は2030年代からと発言し、シアトルを震撼させた。このような無策は、エアバスがボーイングから奪ったナローボディ機の市場シェアを考えれば、ラインアップを刷新するインセンティブにならないのは明らかだ。

 また、ターボプロップ旅客機の活性化につながるはずだったエンブラエルの環境に優しい航空機の開発中止で、業界唯一の希望だった完全新型機の将来が危ぶまれているように映る。

 2022年を通じ、企業や航空会社は、持続可能な航空燃料の使用の増加、電気推進、環境に優しい客室内装など、航空をより環境に優しいものにするため献身的な取り組みを宣言し、互いにしのぎを削っていた。しかし、悲しいことに、次世代旅客機の実現にはほど遠いのが現実だ。747やコンコルドを生み出し、長年にわたり燃料効率と騒音低減を執拗に追い求めてきた業界が麻痺状態におちいっているように見える。

 推進力の面では、GE-SafranのCFMパートナーシップが、100%持続可能な燃料または水素で走行可能なオープンローターRISEエンジンで、燃料使用量と排出量の20%削減を目指している。しかし、RISEの実用化は、2030年代半ばという。プラット&ホイットニーは、2016年に稼働を開始したギヤードターボファンエンジンの効率を高めることに注力しており、ロールス・ロイスは財政難から、未稼働のアルトラファン実証機を含む革新的なプロジェクトに投資がままならない。

 これらのことから、民間航空機産業が次世代民間航空機を開発するまで今後10年は無為無策になりそうだ。新しいことに挑戦するのが好きな経験豊かなエンジニアにとって、これは心強いことではない。

 もし、そうでなければ......。この小康状態が、新しいプレイヤーへの扉を開くのではないか、と人々は考え始めている。少し前までは、技術系の起業家が民間航空機企業を興すのは考えられなかった。しかし、ブレイク・ショールのブーム・スーパーソニックは、マッハ1.7、80席の「オーバーチュア」を、ユナイテッドアメリカンを筆頭に、航空会社数社から採用の約束を取り付けている。ロールス・ロイスとの契約が成立しなかったため、ブームは独自にオーバーチュアーのエンジン開発に着手し、フロリダ・タービン・テクノロジーズの元プラット&ホイットニー戦闘機エンジニアのチームを結集し、スタンダードエアロおよびGEアディティブと共同開発する。

 業界を代表するベテランの多くは、ブームが成功するか懐疑的だ。しかし、2004年にAviation Weekが、カリフォーニアの野心的な新興企業を紹介するため東海岸からレポーターを送ったことも覚えている。その会社がSpaceXである。

 もし、ブームが成功しても、ニッチな存在であることに変わりはない。エアバスやボーイングに真っ向から対抗するのは、参入障壁の高いこの業界では無理だ(中国のコマックに聞いてみればいい)。しかし、不可能ではない。特に、より機敏な新興企業が独自の業界チームを結成し、より持続可能な製品でニッチを埋めることができるのであれば。

 長い間研究されてきた機体一体型主翼機の商業的なバージョンに機が熟してきたといえるか。NASA や国防総省の関心は、おそらく X-plane タンカープロジェクトを通じ、このようなマルチロールコンセプトに新しい生命を吹き込む可能性がある。約 70年前にボーイング社が米空軍のために行った 367-80 タンカー輸送の賭けが、現代のジェット機世代への道を開いたように、歴史が繰り返すかもしれません。しかし、当時と違い、そのジャンプを喜んで行う新興企業はあり得るのか?

 また、カルフーンのタイムラインがボーイングの最後の言葉であるというのも納得がいかない。カルフーンの開発中止は、同社が問題解決とキャッシュフローを生み出すことに注力していることを、懐疑的な投資家に安心させるための演出であることは明らかだ。しかし、ボーイングは、トランソニック・トラス・ブレースド・ウィングや、ナローボディ市場におけるエアバスの優位性を鈍らせるための757後継機など、新型旅客機の選択肢を検討し続けている。カルフーンかその後継者が、今後2~4年の間にそうした航空機の開発を承認する可能性はまだ残っている。

 一方でこの業界には、二酸化炭素排出量の削減を求める容赦ない圧力がかかり続けている。「世界の二酸化炭素排出量を減らす最良の方法の1つは、新しい機体に移行することです」と、Aviation Weekの編集者ガイ・ノリスは、最近のCheck 6 Podcastで筆者に語っていた。「10%であろうと25%であろうと、新機材への更新で大きな違いになるのです」。■

 

From the Editor: Can Aviation Overcome Its State of Paralysis?

Joe Anselmo December 22, 2022

 

Joe Anselmo

Joe Anselmo has been Editorial Director of the Aviation Week Network and Editor-in-Chief of Aviation Week & Space Technology since 2013. Based in Washington, D.C., he directs a team of more than two dozen aerospace journalists across the U.S., Europe and Asia-Pacific.


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