2022年8月27日土曜日

同床異夢の様相になってきた中露合同事業のワイドバディCR929の実現は予定より遅れそう。

 

 

 


Craic CR929の2023年初飛行想定が、ますます不透明になってきた。

Credit: Comac

 



シアのユナイテッド・エアクラフトは、ロシアがウクライナに侵攻した結果、ロシアに課せられた西側の制裁で圧力が加わったため、ロシアと中国が共同ワイドボディ・プロジェクト「Craic CR929」を修正すると述べている。

 

  • ロシアは西側サプライヤーの排除を提案

  • コマックは国際的なアプローチを主張

  • 機体設計変更が迫る

同機プログラムは、ワークシェアをめぐる複雑な交渉とプログラムをめぐる政治のため遅々として進まなかった。双方のパートナーは、プログラムのタイムラインをさらに危険にさらしかねない異なる見解を示している。

ユナイテッド・エアクラフト(UAC)社長のユーリー・スリュサールYury Slyusarは、大幅な変更が必要だと認めている。スリュサールは8月15日、パートナーは新しい環境を反映してプログラムを修正すると述べた。同社長は、COVID-19のパンデミックに加え西側による対ロシア制裁が、UACと中国のコマックの上海の合弁会社CraicのプロジェクトCR929に影響を及ぼしていると認めた。

「パンデミックで航空輸送市場が変わり、(航空機の)範囲、旅客容量、運用パラメータ、燃料費などを含む要因の重要性への要件が変更となった」"スリュサールは発言。また、モスクワのウクライナ侵攻を受けて西側諸国がUAC含むロシの航空宇宙産業に課した制裁で、サプライヤーに深い影響がでていると付け加えた。CR929プログラムは当初、ロールス・ロイスジェネラル・エレクトリックといった欧米エンジンメーカーを含む、世界級の航空宇宙サプライヤーを誘致しようとしていた。

「このような状況では、初期設定のままではプロジェクトが発展できないのは明らかだ」とスリュサールは言った。「中国の同志と、すべてを評価し、次に進む方法を理解しなければなりません」。

CR929は、西側サプライヤーがUACのスホイ・スーパージェットSukhoi Superjet 100とイルクートIrkut MC-21プロジェクトへの参加を止めた後、ロシアで商業的に運営中の唯一の国際プログラムだ。UACは現在、各機種の外国製部品をロシア製に置き換えようとしており、同社はこの経験をCR929にも適用できると主張している。

しかし、中国の見方は違う。香港の新聞「サウスチャイナ・モーニング・ポスト」は中国情報筋の話を引用し、着陸装置など主要部品は欧米サプライヤーから調達すべきであり、中国はこの航空機を国際的に飛ばす(販売しないまでも)ことに引き続き意欲的である、と述べている。経済制裁やウクライナ侵攻以来のロシアの政治的孤立を考えれば、欧米のプロジェクト参加は近い将来に実現しそうもない。

モスクワの総合欧州国際研究センター所長、ワシリー・カシンVasily Kashinは、米国による制裁強化の脅威から、中国側にも民間航空機の輸入品から国産品への置き換えは優先事項とすべきだと主張している。2021年1月、米政府はコマックを中国軍との関係が疑われる企業リストに追加し、C919ナローボディなどコマックの航空機プログラムの米国製部品に追加の輸出許可要件の対象とした。同機は、海外サプライヤーに大きく依存している。その後同社はリストから除外されている。

「中国のメーカーは、ロシアにはあるワイドボディ機の設計の経験がないのです」とカシンは言う。UACは現在も政府顧客向けにイリューシンIl-96ワイドボディ旅客機を組み立てており、国内の航空会社が西側製ジェット機を利用できなくなった今、このタイプの生産を拡大することを検討している。ロシアはPD-35ターボファンエンジンも開発しており、CR929の要求に応えられるかもしれない。

カシンは、中国がCR929プログラムで大きな役割を求めるかもしれないと警告する。中国には大きな国内市場があり、プログラムに投資する資金を持っているからだ。実際、将来の収益分配が争点になっているようだ。サウスチャイナ・モーニング・ポスト紙の追加報道によると、中国は国内顧客への販売で発生する収益全額を望んでおり、ロシアは国際取引で収益の70%を得ることになるが、これは極めて限定的なものになる可能性があるという。

ロシア側のもう一つの懸念は、中国がC919を今年中に就航させることに注力していることだ。7月、コマックは飛行試験がすべて完了したと発表した。初号機は8月末までに中国東方航空に引き渡される。

CR929の初期飛行試験機の作業は進行中であると報告されているが、同機の設計が再び疑問視されているようである。スリュサールは、機体の外観が以前の計画は異なると示唆しているが、どのような変更になるはまだ不明だ。ベースラインのCR929-600は、3クラス構成で280名の乗客、12,000km(6,480nm)の航続距離が想定されている。■

China-Russia Widebody Project Faces New Hurdles | Aviation Week Network

Jens Flottau August 24, 2022

 

With Chen Chuanren in Singapore and Aviation Week Network Staff



2022年8月25日木曜日

9月より日本入国条件が緩和される。個人旅行も条件付きで認めれば、インバウンド需要に火がつく。

 


日本がワクチン接種済みの旅行者のCOVID検査ルールを緩和。変更は来月から適用される


本への入国者は出国前のコロナウイルス検査が来月から不要となる。日本政府が確認した。この緩和は、比較的長い間、規制が続いていた日本にとって、重要なマイルストーンとなる。

あと2週間

新ルールが適用される9月7日まで、あと2週間となった。それまでは、日本への渡航者は72時間以内にコロナウイルス検査を受けることが義務づけられている。TimeOutによると、同国は特定の種類の検査しか受け付けず、高価なPCRが好まれる。

そのため、検査廃止は、日本への旅行を希望する人々にとって、管理上および金銭上のハードルを取り除くことになる。1日2万人という入国制限は当分続くが、ジャパントゥデイによれば、この制限も見直される可能性がある。岸田文雄首相は次のように述べている。

「ウイルスとの戦いは容易ではないが、過度に心配する必要はない。変化するオミクロン亜種の特性を考慮し、社会・経済活動を可能な限り継続しつつ、ウイルス対策に向けた取り組みを加速していく」。

日本は6月に入国者数上限を1日1万人から2万人に引き上げた。写真はこちら ゲッティ イメージズ

搭乗者はワクチン完全接種が必要

このルール変更に、注意点がある。9月7日(水)以降、出発前検査を受けずに日本へ渡航するためには、コロナウイルスの予防接種を完了している必要がある。日本はブースター注射を含むと定義している。

いずれにせよ、日本観光は非常に限られており、TimeOutによると、7月に日本を訪れた外国人観光客は8000人以下だったという。理由として、現状ではガイド付きの団体ツアーでなければ入国できないことが考えられる。そのため、新たなルール改正を待つ人が多いようだ。

しかし、日本が個人旅行者の入国を認める緩和策を検討していると報じられたことで、実現は目前に迫っている。完全な無制限ではないが、旅行会社が予約・管理する旅行であれば、ガイド付きの団体ツアーに参加しなくても入国できるようになる。検査緩和でこれが実現するか興味深いところだ。

日本は2019年に約3200万人の観光客を迎えたが、2021年は25万人以下。写真はこちら。マルク・ヴェラート via Flickr

航空会社は年末の繁忙期に期待

ここ数週間の航空会社の動きを見ると、今度の制限変更はタイムリーな変更となりそうだ。1日の到着回数上限が引き上げられれば、スクートは冬の北海道便を販売する。また、デルタ航空は10月にロサンゼルス空港から東京へのフライトを増便し、12月にはホノルル-東京便を増便する。

Japan Relaxes COVID Test Rules For Fully Vaccinated Travelers

BY JAKE HARDIMAN


歴史の終わり。747最終号機の生産がまもなく完了。空の女王ジャンボジェットの新造機はもう見られなくなる。

 


最後のボーイング747がボーイングの生産ラインから間もなく姿を現す。仕上工程を経て、最後のボーイング747-8Fはアトラス航空に引き渡される。同機は貨物航空会社のアトラスにとって最終機となり、航空業界を象徴した半世紀にわたる時代に終わりを告げる。

半世紀以上にわたり生産されてきた「空の女王」の最終号機が組立てに入っている

出発点から

「空の女王」と呼ばれるボーイング機が初めて製造されたのは、航空需要が急増し、航空会社が運賃を下げつつ多くの乗客を運ぶため大型機を必要とた1960年代のことだった。パンアメリカン航空(パンナム)の創業者ファン・トリップは、ボーイングに解決策として、長距離を飛ぶ大容量旅客機を求めた。

ボーイングはこの難題に取り組み、約2年の設計期間を経て、従業員約5万人の協力のもと、1969年2月に最初のボーイング747が進空した。パンナムはじめ航空会社は、ナローボディのボーイング707の2倍の乗客を乗せる同機に満足した。ボーイング747により国際線旅行が初めて手頃なものになり、長距離路線はようやく誰もが共有できる特権となり、ジャンボジェットは航空業界に革命を起こした航空機となった。

パンナムは最終的にボーイング747で最大の運航会社となり、47機を運用していた。

パンナムは1970年、この歴史的な航空機の最初の受領者として、ボーイング747をニューヨークからロンドンまで運航させた。この航空会社はクイーンを大変気に入り、最終的に当時としては大口注文の20機以上を発注した。347人もの乗客を乗せる同機は、ブリティッシュ・オーバーシーズ・エアウェイズ、日本航空、KLMオランダ航空、カンタス航空など、航空会社の注文を次々と引きつけた。

最後まで活躍する

エアバスA380が登場し、ジャンボジェット機間の競争に拍車がかかるなか、747は発売から2019年まで数十年間、圧倒的な人気を保ち続けた。ボーイングは全長を伸ばし、新バリエーションを導入することでクイーンを好調に維持し、航空会社が同機を商業および貨物サービスに利用できるようにし、主要な国際航空会社ほぼすべてがボーイング747を保有した。

クイーンの終焉はもっと先と思われていたが、新世代の双発革命機の登場やパンデミックによる旅行需要減少により、ボーイングや航空愛好家が望むより早く終焉を迎えることになった。燃料費の高騰と相まり、ボーイング747にはかつての経済性はなく、現在もクイーンで旅客便を運航する航空会社はほんの一握りにすぎない。それでも747は、貨物輸送能力において、今の時代に重宝されている。アトラスエアーとUPSは、400Fと8Fの両機種を保有し、ボーイング747の最大運航者として表彰台に上る。

ボーイングは実質的に最重要な商品にブレーキをかけた。ボーイング747の生産がなければ、ボーイング777と787ドリームライナーという、人気の高い他の最新型ワイドボディ機に大きく依存することになる。ボーイング787ドリームライナーの納入が再開されたにもかかわらず、ボーイング777Xの納入は十分に順調とはいえない。また、ナローボディ機も同様の問題を抱えており、ボーイングは747と同様にピークを過ぎたと見る向きがあるが、革命的な航空機を製造する栄光を取り戻したいと考えている。■

Boeing Is Currently Assembling The Last Ever 747 Jumbo Jet

BY

CHARLOTTE SEET


Charlotte Seet (238 Articles Published)

Journalist - Charlotte is currently pursuing a full-time undergraduate degree majoring in Aviation Business Administration and minoring in Air Traffic Management. Charlotte previously wrote for AirlineGeeks. Based in Singapore.


2022年8月24日水曜日

クラウドファンドも使い立ち上げ資金確保をめざすフランス・ストラスブール拠点のリージョナル新興会社ハッピーエアウェイズ

 Happy Airways ATR-c-Happy Airways


出典 ハッピーエアウェイズ

ストラスブールを拠点とし、当初はATR 72を使用する


ランスの新興企業ハッピーエアウェイズHappy Airwaysは、ストラスブールからの運航を目指し、クラウドファンディングを含む出資者を募集中。



 ハッピーエアウェイズは、ストラスブールのネットワークは需要に対し「未発達」であると主張し、14都市へのATR72-600ターボプロップ便の開設を目指している。

 この新興企業の「最適化された」ネットワークにより、ストラスブールは「欧州連合の中心で主要なハブ空港」になると主張している。

 ハッピーエアウェイズは当初、2機のATRを使用し、無料の機内食と個人用機内エンターテインメントシステムを提供する。航空機の調達先や、ターボプロップ機を自社で運航するか、ウェットリース契約で運航するかは明らかにしていない。

 ハッピーエアウェイズは、「ハイブリッド航空会社として、質の高いサービス、重要なネットワーク、素晴らしい航空運賃を提供することで、この地域の航空業界における新たなゲームチェンジャーとなる」と述べている。

 しかし、サービス開始には475万ユーロ(約472万ドル)の資金が必要で、うち180万ユーロは一号機を運航するために必要だ。

 ハッピーエアウェイズは、必要な資金を得るために、公的資金と民間資金両方を求め、クラウドファンディングや宝くじなどの手段で「グローバルなアピール」を始めると述べている。

 「どんな新しい提案も受け入れており、ハッピーエアウェイズにアドバイスをしてくださる方、資金を提供してくださる方は、ぜひ当社に直接ご連絡ください」と述べている。

 また、このプロジェクトについて、地元当局と「話し合う用意がある」とし、当初は地元で雇用50人を生み出すと指摘している。


Happy Airways network-c-Happy Airways


出典 ハッピーエアウェイズ

ハッピーエアウェイズ、欧州14都市がネットワーク候補に

ブリュッセル、ロンドン、ベルリン、デュッセルドルフ、ジュネーブ、ウィーン、プラハ、ミラノ、トリノ、ベニス、ザグレブ、リュブリャナ、リール、トゥーロンが候補路線として挙げられてる。


 ストラスブールを拠点に、年間約4,400便を運航する「マルチモーダルハブ」を構築したいとしている。

 クラウドファンディングのプロモーションでは、50ユーロから50万ユーロまで、約束した金額の大きさに応じて各種インセンティブを提供する。また、抽選で賞品も提供する。

 8月24日現在、目標額475万ユーロの約4.5%を調達している。

 ハッピーエアウェイズは、環境を重視し、電気自動車と電気カーゴバイクのみで二酸化炭素排出量を削減し、本社ではエネルギー消費量を削減する「抜本的な対策」を実施するとしている。

 「環境フットプリントゼロの航空会社を新たに立ち上げる目標を達成する」と述べ、運営の一環として森林再生支援のためチャリティー団体を設立する予定であると付け加えている。■

French start-up Happy crowdfunds to establish Strasbourg-based operation

By David Kaminski-Morrow24 August 2022

https://www.flightglobal.com/airlines/french-start-up-happy-crowdfunds-to-establish-strasbourg-based-operation/149953.article


2022年8月19日金曜日

パンデミックからの実需回復に対応できない航空業界の課題は魅力的な技術の実用化であり、人材をもっと大切にすることだ

Source: Maurizio Milanesio/Shutterstock

Baggage blues

ンデミックの打撃を受け、閑散としたターミナル、台無しになった旅行計画、駐機中の機材の列、休止中の生産ライン、望まれない眠りから目覚める際に業界が直面するはずの膨大な課題リストをあらかじめ考えようとする人は皆無に近かった。

 すべてがCovid-19からの回復の結果ではない。ウクライナ危機でチタンなど原材料不足が深刻化している。半導体の主産地台湾を中国が封鎖するとの観測もあり、神経をとがらせている。

 世界有数のハブ空港ロンドン・ヒースローは、1日10万人の出国者数制限を10月末まで延長した。昨年は旅行制限のため、空港経営が傾いたのに、今はビジネスが立ち行かなくなっている。

 一方、最大手エンジンメーカーを含む航空宇宙企業は、部品調達が間に合わず、納期を逃すと警告している。ここでもまた、需要不足ではなく、サプライチェーンの供給不足で航空宇宙産業は停滞している。

 なぜ、このような事態に陥ったのか。もはや、Covid-19のせいとは言えない状況だ。中国のような例外を除けば、ほとんどの国が2022年初頭まで空の旅を妨げるルールを解除し、ほとんどの人が再び自由に空を飛べるようになっている。少なくとも理論上は。

 カギは人手不足だ。2020年第2四半期に収益が減少し、コスト削減のために従業員の解雇や一時解雇を急いだ企業は、元従業員の多くが元の職場に戻ってきていないのに気づいている。

 代わりになる新しい人材を見つけるのは簡単ではない。手荷物運搬係や機械オペレーター、パイロットや設計エンジニアの育成には時間がかかる。また、セキュリティ・クリアランス取得が必要な場合も多い。航空分野や航空宇宙工学のキャリアには、以前の魅力はない。

 航空業界は、この件から教訓を2つ学ばねばならない。どちらも当面の問題を解決することはできないが、少なくとも将来同じようなシナリオが起こるのを阻止する方向に向かうはずである。

 ひとつは、技術の限界を押し広げ、長距離の移動を可能にし、人類の幸福の総和に貢献するという点で他の追随を許さない航空宇宙・航空産業で、若い人々を惹きつけ、キャリアを積むことを決意させる努力がもっと必要だ。

 もうひとつは、自動化が進んでいるにもかかわらず、ほとんどすべてのビジネスにおいて、人材が重要資産であることに変わりはないということだ。多くの従業員は、会社への忠誠心や自らの職業に誇りをもっている。激動の時代に経験豊富な従業員を切り捨てることに熱心な企業は、ダウンサイジングよりもアップサイジングの方がはるかに難しいことにすぐに気がつくはずだ。■


Why aviation sector is struggling to scale up after pandemic woes | Opinion | Flight Global

20 August 2022


2022年8月18日木曜日

太陽熱合成燃料の商業化に道が開いた。スイス新興企業シンセリオンのSAF製造プランに注目。

 

Synhelion


太陽光からジェット燃料を作る技術の実用化が見えてきた。SWISSが太陽熱合成燃料を使う初のエアラインとなる


イスのクリーンエナジー新興企業シンセリオンSynhelion https://synhelion.com/ は、再生可能エナジー源としての太陽から持続可能な航空燃料(SAF)の製造技術を開発した。同社は太陽熱合成ガスを工業規模で製造し、2023年にカーボンニュートラルなジェット燃料を製造すると8月18日に発表した。


太陽から燃料を作成する

パワー・トゥ・リキッド燃料は、航空機の脱炭素化で最も有望かつエキサイティングな方法の一つだ。しかし、この燃料製造には膨大なエナジーが必要で、「電力」は再生可能でなければならない。だが少なくとも数十億年、再生可能なエナジー源の太陽がある。持続可能な輸送を実現するため、太陽の波に乗りたいと考えている企業のひとつが、シンセリオンだ。

 シンセリオンは、2010年にチューリッヒで太陽熱合成ガスの製造に初めて成功した。以来12年、同社は技術のスケールアップで重要なマイルストーンに到達した。太陽熱を利用して合成ガスを製造し、それを標準的な工業プロセスで使用し、ジェットエンジンに適合するケロシンなどの液体燃料を合成する。この燃料は、製造に使われた炭素だけを燃やすため、CO2の循環型ループが形成される。

 シンセリオンの最高技術責任者フィリップ・グッドPhilipp Goodは、今回の成果について次のようにコメントしている。

 「ソーラー合成ガス製造に成功したことで、太陽光を燃料に変える夢が、産業応用として実現します。当社の技術をスケールアップする最後の大きな技術的マイルストーンが達成され、カーボンニュートラルなジェット燃料の工業生産への道が開かれました」。

 シンセリオンは、現在、世界初の産業規模の太陽電池燃料プラントを、ドイツのユーリッヒに建設中。同プラントは、ドイツ連邦経済・気候変動対策省(BMWK)が資金提供するSolarFuelsプロジェクトの一環だ。ルフトハンザ・グループの航空会社SWISSは、同社のソーラーケロシンを使用する最初の航空会社として、契約を締結ずみだ。


DLRと連携

合成ガスは、水素と一酸化炭素の混合ガス。シンセリオンの合成ガスは、エナジー・環境技術のリーディングカンパニー、ウッドWoodが供給する独自の改質反応器で製造される。ドイツ航空宇宙センター(DLR)所有の多焦点ソーラータワーに設置されたシンセリオン開発のソーラーレシーバーに、ミラーフィールドで太陽光を集中させる。シンセリオンによると、同プラントは液体太陽燃料を年間約15万リットル生産できるという。

 シンセリオンは、ドイツで初の産業用航空燃料製造施設を計画している一方で、2025年にスペインで商業生産を開始する予定だ。■


Synhelion Reaches Industrial Scale Milestone For Jet Fuel From Sunlight

BY

LINNEA AHLGREN

https://simpleflying.com/synhelion-industrial-scale-milestone-jet-fuel-from-sunlight/


2022年8月16日火曜日

スコープ条項変化の兆しなく、エンブラエルE175の将来は盤石に見える。三菱航空機はこの状況ををどう見ているのだろうか。

  

 


アラスカ航空グループは、E175を最大21機追加する

Credit: Alaska Air Group

 

 

空会社パイロットとの契約スコープ条項で、変更の兆しがないため、エンブラエルの人気機種E175(76席)の将来は確実といってよい。

エンブラエル・コマーシャル・エアクラフト戦略マーケティング・ディレクターのダニエル・ガルハルドDaniel Galhardoは、「現在有効な米国主要航空会社のスコープ条項は、今後3年間は変更されないとの予想で、次のスコープ条項交渉の動向を注視していく」と述べてる。「それまでは、現行E175がこの市場セグメントで利用可能な最善のソリューションであり続けるでしょう」。

米国の大手航空会社とパイロットの労働契約の一部であるスコープ条項は、地域航空会社のパートナーが運航する航空機を76人の乗客と最大離陸重量86,000ポンドに制限している。

エンブラエルは、2027-28年の就航を目指すE175-E2に取って代わられる可能性もあるが、市場が求める限り現行機種を提供するとガルハルドは付け加えた。「E175は少なくともそれまでは提供するが、販売を続けることを妨げるものは何もない」とガルハルドは述べている。

エンブラエルによると、E175は2005年7月にエア・カナダで運航を開始し、2005年9月に米国で認証取得した。アルトン・アビエーション・コンサルタンシーのアダム・ガトーン社長は、「最大座席数と離陸重量の両方で米国の航空会社のスコープ条項要件を満たす唯一の新型リージョナルジェット」と語る。

ガトーンは、エンブラエルの2022年第1四半期納入実績を引用し、エンブラエルはE175の確定受注残143機を報告していると言う。「今年初め、エンブラエルはE1の後継機E175-E2の就航目標を2027-28年に延期しました。これはE175-E1プログラムの寿命が大幅に延びたことを意味します」とのべ、E175-E2は現行のスコープ条項による重量制限を超えているとした。

エンブラエルがE175の成功をもとに、最近発表した大型機E190/195同様にP2F機として提供する可能性は低いとガトーンは述べている。「E175は、米国のリージョナル航空会社で大きな需要があり、代替機はありません。さらに、E175の胴体は短いため、エンジン前方に貨物ドアを取り付けるのは課題となります」。

エンブラエルのガルハルドは、やや楽観的な見方をしている。「現在のところ、E175のP2Fコンバージョンプログラム計画はないが、需要があれば検討することは可能だ」と言う。

E175の将来について更なる自信の表れとして、長年の顧客であるアラスカ・エア・グループは、今年のファーンボロ国際航空ショーで、さらに8機と追加13機のオプションの発注を発表した。オプションも含めた契約金額は、メーカー定価ベースで11億2,000万ドル。2017年に最初のE175を導入したアラスカ・エア・グループ100%出資のリージョナル航空会社、ホライゾンエアへの納入は2023年第2四半期に開始される。ホライゾンは現在30機のE175を運航しており、2026年までにさらに20機を受領する。

アラスカ航空グループのフリート、ファイナンス、アライアンス担当上級副社長であるナット・ピーパーは、今年3機納入を含むE175フリートの拡充により、ホライズンは今年末までにボンバルディアQ400ターボプロップから段階的に脱却できると見ている。

「E175は、アラスカ航空グループ唯一のリージョナル旅客機となります。Q400は350マイルまでの路線では経済的に有利ですが、単一機種の効率性(予備品の削減、より良い顧客体験、プレミアムおよびファーストクラスの利回り)が、Q400のE175に対する経済的優位性を短距離路線で凌駕します」。

ピーパーは、E175の投入路線は平均471マイルで、1日の利用率は8.8時間と述べている。この数字には、ホライゾン航空がアラスカ航空の姉妹会社として運航する便と、アラスカ航空がスカイウエストのパートナーとして運航する便が含まれる。

OEMによるサポートについて尋ねられたピーパーは、「エンブラエルは立派に仕事をこなしてきたと言えるでしょう。他のメーカーと同様、サプライチェーンに関する課題はあったが、同社はサプライヤー協力に積極的だった。2年前に比べれば、はるかに反応がよくなっています」。

エイビエーションウィーク誌の2022年商業航空機とMRO予測によると、E175の見通しとMRO市場は、現在から2031年まで堅調に推移すると予測されている。予測では、今年はE175が628機就航し、総MRO需要として11億ドルが発生すると予測しています。2031年には、503機となり、MRO需要は13億ドルとわずかに増加する予測さだ。E175のアフターマーケットの大部分はエンジンとコンポーネントで、2022年にそれぞれ51%と25%、2031年には66%と17%になると予想されている。E175のGE CF34-8Eエンジンとコンポーネントを整備するMROは、アフターマーケット見通しについて強気な見方をしている。

「CF34-8EエンジンのMROは、パンデミック時にコスト回避のため延期されたメンテナンスの遅れを取り戻すため、短期的には需要が急増すると見ていますが、長期的にはより安定してきます」と、Standard-Aeroの航空・フリート部門の北米セールスマネージャー、Kristjana Werboweskiは語っている。E175-E1の納入が今後も続く予測など、いくつかの要因によるものだという。

embraer 175 aircraft on ground

 

エンブラエルE175の確定発注残は143機。 Credit: Embraer

 

「エンブラエルは、今後10年間に北米だけで500機のE175を新規導入すると予測していますが、これは現在のスコープ条項契約が、プラット&ホイットニーGTFを搭載したE175-E2の参入障壁になっていることが一因です」とWerboweskiは述べています。「一方、CF34-8Eのメンテナンス需要は、パンデミック時に他のエンジンほど大きくは縮小しなかったため、需要反動はそれほど大きくはない」。

Lufthansa Technik AERO Alzey(LTAA)のマーケティング・セールス担当副社長ライムンド・シュネルRaimund Schnellは、「2023年から2026年にかけ、-10Eと同様にCF34-8シリーズ全体の定期性能回復、つまり[LLP(Life Limited Part)ショップ訪問の高い需要を見込んでいます」と述べている。「リージョナル航空会社の多くがパンデミック時に予定されていたショップ訪問を延期したため、現在、予定外のショップ訪問が頻繁に増加しています」と述べている。

LTAAでは十分な備えをしていることを強調しつつ、シュネルは、利用可能なショップ訪問の枠が少なくなってきており、サプライチェーン問題などの追加要因が状況を悪化させる可能性があると警告している。「当社が推奨するのは、エンジンの取り外し計画を少なくとも12~15ヶ月前に連絡してもらうことで、LLP交換に伴うショップ訪問にとって非常に重要となります」。

シュネルは、LTAAがLLPのリードタイムを増加させているのは、材料とスタッフの問題と付け加えた。「チタンなどの材料のボトルネック悪化による追加遅延は完全に排除できません」。

ドイツに本社を置くライン交換式ユニットのスペシャリスト、シュペールリナーズSpairlinersのセールス&マーケティング担当副社長タコ・シュトーテンTaco Stoutenによると、同社はE170/175とE190/E195用の1,200以上のコンポーネントをサポートしている。

「エンブラエル170/190の保有機数の50%を占めるE175の部品アフターマーケットは、今後も米国市場に集中すると予想されます。「各機は比較的若く、少なくともあと10年は飛行を続ける。このような理由から、シュペールリナーズはアメリカ大陸をサービス確立の場としてターゲットにしており、その実現はかなり近づいています」。

今後、各機が老朽化するにつれて、人件費の安い地域に移動していくとシュトーテンは予測する。「これらの地域では、現役機材の飛行時間が大幅に少ないため、E175の寿命が延びることになります」と語る。■

Embraer’s 175 Gets Confidence Boost As Future Looks Steady | Aviation Week Network


Paul Seidenman David Spanovich August 08, 2022


2022年8月15日月曜日

パンデミック対策のきずあと。香港空港がトップ10から脱落。今やシンガポールがアジア最大の空港だ。

 


シンガポール・チャンギがアジアで利用客最大の空港だ。Photo: Changi Airport Group


在のアジアで利用客の多い空港トップ10のリストは、2019年から大きく異なっている。



 COVIDパンデミックが、民間航空のほぼすべての側面に劇的な影響を与えた。一部では落ち込みが他よりはるかに大きかった。香港国際空港は、パンデミック以前はアジアで最大のハブ空港だったが、デリーやクアラルンプールなど、香港よりも多く乗客を扱っう空港が現れており、今日の状況は大きく異なっている。


シンガポールがトップに躍り出た

分析・コンサルティング会社Sobie Aviationがまとめたデータによると、シンガポール・チャンギ空港は、流行前のリーダー香港を大きく引き離し、アジアで最も利用客の多い空港に浮上した。6月までの第2四半期で、730万人が利用した。

 South China Morning Postが報じたように、香港はアジアの空港のトップ10から脱落し、デリーのインディラ・ガンディー国際空港、バンコクのスワンナプーム空港がそれぞれ320万人で2位の座を分け合っている。

 トップ5には、ソウル仁川空港が290万人、クアラルンプー

ル国際空港が260万人でランクインした。

 同時期の香港国際空港(HKIA)の取扱人数が1910万人、以下ソウル仁川空港(1760万人)、チャンギ空港(1680万人)、バンコク・スワンナプーム空港(1230万人)、台湾の桃園空港(1230万人)と、2019年リストと様子が違う。


トップ10から脱落

2022年のHKIAは以前の面影を失っており、6月までの四半期で、同空港の旅客取扱数は59万1,000人だった。香港国際空港は、アジアで最も利用者の多いハブ空港として、パンデミック以前は常にトップの座を維持していた。

 しかし、世界の主要空港と対照的に、ウイルスを抑制するために厳格なCOVID対策を維持し続けている。同空港は、ホテルでの検疫期間を3日間に短縮し、さらに4日間の健康監視と検査で入国条件を少し緩和したが、この地域のその他目的地が緩和している中で、観光客にとってはまだ面倒なことのようだ。

 タイ、シンガポール、マレーシア、など東南アジアの多くの国では、ワクチンを完全に接種した旅行者には出国前COVID-19検査を取りやめ、到着後の検疫も不要とした。


HKIAはパンデミックで上位の座から滑り落ちた Photo:  Phillip Capper via Wikimedia Commons


香港の苦境

香港の厳しいCOVID-19政策と入国条件を考えると、アジアの金融センターとしての香港の存続に大きな疑問符がつく。アジア最大の航空会社の一つであったキャセイパシフィック航空も損失を抑えるのに苦労している。

 2022年上半期は、2021年上半期の75億6000万香港ドル(9億6300万ドル)の損失に対し、今回は49億9000万香港ドル(6億3700万ドル)の損失を計上した。キャセイパシフィックのパトリック・ヒーリーPatrick Healey会長は、より多くのフライト容量を運航する能力は、既存の検疫要件の下での乗務員リソースのボトルネックによって、厳しい制約を受けたままと述べている。

 香港がいつパンデミックの影響を脱するかはまだわからない。香港国際空港は、失われたコネクションを再構築し、現在のような負のスパイラルに陥らないよう迫れられるはずだ。■


Hong Kong Slips From Top 10 As Singapore Changi Becomes Asia’s Busiest Airport

BY

GAURAV JOSHI


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