スコープ条項変化の兆しなく、エンブラエルE175の将来は盤石に見える。三菱航空機はこの状況ををどう見ているのだろうか。

  

 


アラスカ航空グループは、E175を最大21機追加する

Credit: Alaska Air Group

 

 

空会社パイロットとの契約スコープ条項で、変更の兆しがないため、エンブラエルの人気機種E175(76席)の将来は確実といってよい。

エンブラエル・コマーシャル・エアクラフト戦略マーケティング・ディレクターのダニエル・ガルハルドDaniel Galhardoは、「現在有効な米国主要航空会社のスコープ条項は、今後3年間は変更されないとの予想で、次のスコープ条項交渉の動向を注視していく」と述べてる。「それまでは、現行E175がこの市場セグメントで利用可能な最善のソリューションであり続けるでしょう」。

米国の大手航空会社とパイロットの労働契約の一部であるスコープ条項は、地域航空会社のパートナーが運航する航空機を76人の乗客と最大離陸重量86,000ポンドに制限している。

エンブラエルは、2027-28年の就航を目指すE175-E2に取って代わられる可能性もあるが、市場が求める限り現行機種を提供するとガルハルドは付け加えた。「E175は少なくともそれまでは提供するが、販売を続けることを妨げるものは何もない」とガルハルドは述べている。

エンブラエルによると、E175は2005年7月にエア・カナダで運航を開始し、2005年9月に米国で認証取得した。アルトン・アビエーション・コンサルタンシーのアダム・ガトーン社長は、「最大座席数と離陸重量の両方で米国の航空会社のスコープ条項要件を満たす唯一の新型リージョナルジェット」と語る。

ガトーンは、エンブラエルの2022年第1四半期納入実績を引用し、エンブラエルはE175の確定受注残143機を報告していると言う。「今年初め、エンブラエルはE1の後継機E175-E2の就航目標を2027-28年に延期しました。これはE175-E1プログラムの寿命が大幅に延びたことを意味します」とのべ、E175-E2は現行のスコープ条項による重量制限を超えているとした。

エンブラエルがE175の成功をもとに、最近発表した大型機E190/195同様にP2F機として提供する可能性は低いとガトーンは述べている。「E175は、米国のリージョナル航空会社で大きな需要があり、代替機はありません。さらに、E175の胴体は短いため、エンジン前方に貨物ドアを取り付けるのは課題となります」。

エンブラエルのガルハルドは、やや楽観的な見方をしている。「現在のところ、E175のP2Fコンバージョンプログラム計画はないが、需要があれば検討することは可能だ」と言う。

E175の将来について更なる自信の表れとして、長年の顧客であるアラスカ・エア・グループは、今年のファーンボロ国際航空ショーで、さらに8機と追加13機のオプションの発注を発表した。オプションも含めた契約金額は、メーカー定価ベースで11億2,000万ドル。2017年に最初のE175を導入したアラスカ・エア・グループ100%出資のリージョナル航空会社、ホライゾンエアへの納入は2023年第2四半期に開始される。ホライゾンは現在30機のE175を運航しており、2026年までにさらに20機を受領する。

アラスカ航空グループのフリート、ファイナンス、アライアンス担当上級副社長であるナット・ピーパーは、今年3機納入を含むE175フリートの拡充により、ホライズンは今年末までにボンバルディアQ400ターボプロップから段階的に脱却できると見ている。

「E175は、アラスカ航空グループ唯一のリージョナル旅客機となります。Q400は350マイルまでの路線では経済的に有利ですが、単一機種の効率性(予備品の削減、より良い顧客体験、プレミアムおよびファーストクラスの利回り)が、Q400のE175に対する経済的優位性を短距離路線で凌駕します」。

ピーパーは、E175の投入路線は平均471マイルで、1日の利用率は8.8時間と述べている。この数字には、ホライゾン航空がアラスカ航空の姉妹会社として運航する便と、アラスカ航空がスカイウエストのパートナーとして運航する便が含まれる。

OEMによるサポートについて尋ねられたピーパーは、「エンブラエルは立派に仕事をこなしてきたと言えるでしょう。他のメーカーと同様、サプライチェーンに関する課題はあったが、同社はサプライヤー協力に積極的だった。2年前に比べれば、はるかに反応がよくなっています」。

エイビエーションウィーク誌の2022年商業航空機とMRO予測によると、E175の見通しとMRO市場は、現在から2031年まで堅調に推移すると予測されている。予測では、今年はE175が628機就航し、総MRO需要として11億ドルが発生すると予測しています。2031年には、503機となり、MRO需要は13億ドルとわずかに増加する予測さだ。E175のアフターマーケットの大部分はエンジンとコンポーネントで、2022年にそれぞれ51%と25%、2031年には66%と17%になると予想されている。E175のGE CF34-8Eエンジンとコンポーネントを整備するMROは、アフターマーケット見通しについて強気な見方をしている。

「CF34-8EエンジンのMROは、パンデミック時にコスト回避のため延期されたメンテナンスの遅れを取り戻すため、短期的には需要が急増すると見ていますが、長期的にはより安定してきます」と、Standard-Aeroの航空・フリート部門の北米セールスマネージャー、Kristjana Werboweskiは語っている。E175-E1の納入が今後も続く予測など、いくつかの要因によるものだという。

embraer 175 aircraft on ground

 

エンブラエルE175の確定発注残は143機。 Credit: Embraer

 

「エンブラエルは、今後10年間に北米だけで500機のE175を新規導入すると予測していますが、これは現在のスコープ条項契約が、プラット&ホイットニーGTFを搭載したE175-E2の参入障壁になっていることが一因です」とWerboweskiは述べています。「一方、CF34-8Eのメンテナンス需要は、パンデミック時に他のエンジンほど大きくは縮小しなかったため、需要反動はそれほど大きくはない」。

Lufthansa Technik AERO Alzey(LTAA)のマーケティング・セールス担当副社長ライムンド・シュネルRaimund Schnellは、「2023年から2026年にかけ、-10Eと同様にCF34-8シリーズ全体の定期性能回復、つまり[LLP(Life Limited Part)ショップ訪問の高い需要を見込んでいます」と述べている。「リージョナル航空会社の多くがパンデミック時に予定されていたショップ訪問を延期したため、現在、予定外のショップ訪問が頻繁に増加しています」と述べている。

LTAAでは十分な備えをしていることを強調しつつ、シュネルは、利用可能なショップ訪問の枠が少なくなってきており、サプライチェーン問題などの追加要因が状況を悪化させる可能性があると警告している。「当社が推奨するのは、エンジンの取り外し計画を少なくとも12~15ヶ月前に連絡してもらうことで、LLP交換に伴うショップ訪問にとって非常に重要となります」。

シュネルは、LTAAがLLPのリードタイムを増加させているのは、材料とスタッフの問題と付け加えた。「チタンなどの材料のボトルネック悪化による追加遅延は完全に排除できません」。

ドイツに本社を置くライン交換式ユニットのスペシャリスト、シュペールリナーズSpairlinersのセールス&マーケティング担当副社長タコ・シュトーテンTaco Stoutenによると、同社はE170/175とE190/E195用の1,200以上のコンポーネントをサポートしている。

「エンブラエル170/190の保有機数の50%を占めるE175の部品アフターマーケットは、今後も米国市場に集中すると予想されます。「各機は比較的若く、少なくともあと10年は飛行を続ける。このような理由から、シュペールリナーズはアメリカ大陸をサービス確立の場としてターゲットにしており、その実現はかなり近づいています」。

今後、各機が老朽化するにつれて、人件費の安い地域に移動していくとシュトーテンは予測する。「これらの地域では、現役機材の飛行時間が大幅に少ないため、E175の寿命が延びることになります」と語る。■

Embraer’s 175 Gets Confidence Boost As Future Looks Steady | Aviation Week Network


Paul Seidenman David Spanovich August 08, 2022


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