同床異夢の様相になってきた中露合同事業のワイドバディCR929の実現は予定より遅れそう。

 

 

 


Craic CR929の2023年初飛行想定が、ますます不透明になってきた。

Credit: Comac

 



シアのユナイテッド・エアクラフトは、ロシアがウクライナに侵攻した結果、ロシアに課せられた西側の制裁で圧力が加わったため、ロシアと中国が共同ワイドボディ・プロジェクト「Craic CR929」を修正すると述べている。

 

  • ロシアは西側サプライヤーの排除を提案

  • コマックは国際的なアプローチを主張

  • 機体設計変更が迫る

同機プログラムは、ワークシェアをめぐる複雑な交渉とプログラムをめぐる政治のため遅々として進まなかった。双方のパートナーは、プログラムのタイムラインをさらに危険にさらしかねない異なる見解を示している。

ユナイテッド・エアクラフト(UAC)社長のユーリー・スリュサールYury Slyusarは、大幅な変更が必要だと認めている。スリュサールは8月15日、パートナーは新しい環境を反映してプログラムを修正すると述べた。同社長は、COVID-19のパンデミックに加え西側による対ロシア制裁が、UACと中国のコマックの上海の合弁会社CraicのプロジェクトCR929に影響を及ぼしていると認めた。

「パンデミックで航空輸送市場が変わり、(航空機の)範囲、旅客容量、運用パラメータ、燃料費などを含む要因の重要性への要件が変更となった」"スリュサールは発言。また、モスクワのウクライナ侵攻を受けて西側諸国がUAC含むロシの航空宇宙産業に課した制裁で、サプライヤーに深い影響がでていると付け加えた。CR929プログラムは当初、ロールス・ロイスジェネラル・エレクトリックといった欧米エンジンメーカーを含む、世界級の航空宇宙サプライヤーを誘致しようとしていた。

「このような状況では、初期設定のままではプロジェクトが発展できないのは明らかだ」とスリュサールは言った。「中国の同志と、すべてを評価し、次に進む方法を理解しなければなりません」。

CR929は、西側サプライヤーがUACのスホイ・スーパージェットSukhoi Superjet 100とイルクートIrkut MC-21プロジェクトへの参加を止めた後、ロシアで商業的に運営中の唯一の国際プログラムだ。UACは現在、各機種の外国製部品をロシア製に置き換えようとしており、同社はこの経験をCR929にも適用できると主張している。

しかし、中国の見方は違う。香港の新聞「サウスチャイナ・モーニング・ポスト」は中国情報筋の話を引用し、着陸装置など主要部品は欧米サプライヤーから調達すべきであり、中国はこの航空機を国際的に飛ばす(販売しないまでも)ことに引き続き意欲的である、と述べている。経済制裁やウクライナ侵攻以来のロシアの政治的孤立を考えれば、欧米のプロジェクト参加は近い将来に実現しそうもない。

モスクワの総合欧州国際研究センター所長、ワシリー・カシンVasily Kashinは、米国による制裁強化の脅威から、中国側にも民間航空機の輸入品から国産品への置き換えは優先事項とすべきだと主張している。2021年1月、米政府はコマックを中国軍との関係が疑われる企業リストに追加し、C919ナローボディなどコマックの航空機プログラムの米国製部品に追加の輸出許可要件の対象とした。同機は、海外サプライヤーに大きく依存している。その後同社はリストから除外されている。

「中国のメーカーは、ロシアにはあるワイドボディ機の設計の経験がないのです」とカシンは言う。UACは現在も政府顧客向けにイリューシンIl-96ワイドボディ旅客機を組み立てており、国内の航空会社が西側製ジェット機を利用できなくなった今、このタイプの生産を拡大することを検討している。ロシアはPD-35ターボファンエンジンも開発しており、CR929の要求に応えられるかもしれない。

カシンは、中国がCR929プログラムで大きな役割を求めるかもしれないと警告する。中国には大きな国内市場があり、プログラムに投資する資金を持っているからだ。実際、将来の収益分配が争点になっているようだ。サウスチャイナ・モーニング・ポスト紙の追加報道によると、中国は国内顧客への販売で発生する収益全額を望んでおり、ロシアは国際取引で収益の70%を得ることになるが、これは極めて限定的なものになる可能性があるという。

ロシア側のもう一つの懸念は、中国がC919を今年中に就航させることに注力していることだ。7月、コマックは飛行試験がすべて完了したと発表した。初号機は8月末までに中国東方航空に引き渡される。

CR929の初期飛行試験機の作業は進行中であると報告されているが、同機の設計が再び疑問視されているようである。スリュサールは、機体の外観が以前の計画は異なると示唆しているが、どのような変更になるはまだ不明だ。ベースラインのCR929-600は、3クラス構成で280名の乗客、12,000km(6,480nm)の航続距離が想定されている。■

China-Russia Widebody Project Faces New Hurdles | Aviation Week Network

Jens Flottau August 24, 2022

 

With Chen Chuanren in Singapore and Aviation Week Network Staff



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