2022年9月30日金曜日

エナジーインフレで航空宇宙産業が直撃を受ける予想は本当? 

 

 

金融アナリストは、エナジーコストが長期的な問題になった場合、エンジンサプライヤーが最も影響を受ける可能性があると述べている

Credit: MTU

 

 

を前に航空宇宙・防衛産業では、エナジーコスト上昇により事業が冷え込むと懸念する声が聞かれる。しかし、この見通しは正しいのだろうか?

北半球の秋の始まりとともに、航空宇宙・防衛を担当する金融アナリスト陣は、ヨーロッパでのエナジーコスト上昇に注目している。ロシアからのエナジー供給に長く依存してきたヨーロッパ諸国は、2月にウクライナ侵攻を開始したロシアとの間で、この冬、経済戦争の悪化に直面している。

メリアス・リサーチのアナリスト、ロブ・ワートハイマーRob Wertheimerは8月29日、「この1、2週間で目にしたヨーロッパのエナジー価格に関するネガティブなニュースの中で、最も衝撃を受けたのは、天然ガスが原油1バレル相当で500ドルになるとしたニュースだった」と述べた。

9月2日、オランダのアルミニウムメーカー、アルデルは、エナジー価格の高止まりと政府の支援不足を理由に、ファームスム工場の生産停止を発表した。ロイター通信によると、ガスと電気の価格が2021年の水準に比べ今年数百パーセント高騰しているため、アルデルはヨーロッパでの生産を削減または停止する企業のリストに加わった。

当然ながら、航空宇宙・防衛分野の企業は、給与、原材料、商品輸送のインフレにかかわらず、事業コストの上昇に苦しんでいる。エナジー価格の上昇は、原材料、商品輸送の成長見通しを直接下支えする。

レイセオン・テクノロジーズの会長兼社長兼CEOグレッグ・ヘイズGreg Hayesは、9月14日の投資家会議で、「明らかにインフレだ」と述べた。「サプライチェーンでは、原材料とエナジーが主な対象だ」。

ヘイズは、米国に拠点を置くスーパーティア1の航空宇宙・防衛サプライヤーが、製造、エナジーコスト、出荷における経費削減の計画を再検討していると述べた。この計画は、コストが低いときにはあまり意味がなかったが、今は違う。「私たちはこれまでの計画を再検討しており、各プロジェクトは、山の頂上へと向かっています」と彼は言います。

しかし、コンサルタント会社ジェフリーズが9月9日に発表したレポートによると、エナジー関連の危機が発生しても、航空宇宙・防衛産業が最初に影響を受けることはないはずだとある。例えば、世界のアルミニウム消費量の23%は運輸市場で、生産量が比較的少ない航空宇宙・防衛は数分の一に過ぎない。ガスや電気料金の上昇に直接さらされることも、コスト削減行動により、このセクターでは少ないかもしれない。

ジェフリーズ・グループのレポートは、「対象すべての企業のエナジーコストに関連する売上高は1%未満と推定されるため、直接的なコスト懸念は限定的」と書いている。「ガスについては、この冬と、場合によっては2023年の大半を守ることができるヘッジが行われていると理解している。電力に関しても、現在の卸売りのデータよりはるかに低い価格上昇を示唆する契約が結ばれている」。

もちろん、エナジーコストの上昇が続けば、ビジネスモデルにも影響が出る。ジェフリーズによれば、エンジンのサプライチェーンは、エナジー集約的な鍛造や鋳造による金属部品が多数必要なため、一般により大きく影響を受けるという。しかし、このビジネスが変化するには、「不足が広まるという極めてネガティブなシナリオ」が必要だろうと、アナリストは考えている。

では、欧州の航空宇宙・防衛関連企業はどうなのか。ジェフリーズは、BAEシステムズタレスロールス・ロイスエアバスサフランMTUの各社を、エクスポージャーが低い方から高い方へとランク付けしている。

「BAEシステムズは、その戦略的活動とドイツへのエクスポージャーの低さから、ほとんど免れるはず」とアナリストは書いている。「タレスは混乱から守られるはずだが、賃金インフレのリスクに最もさらされている。エンジンメーカーでは、ロールス・ロイスは、サフランやMTUより生産量が少なく、旅客機の増産が必要な中、リスクはやや低いと見る。特に、ドイツ企業MTUは、賃金インフレを監視しなければならないだろう」。

最後に、欧州の航空宇宙・防衛分野のリーダーであるエアバスは、その地位から、一見したところ最も影響を受けやすい企業であることに変わりはない。「エアバスは岐路に立たされており、平均的なリスクプロファイルを示しているが、エンジン供給の途絶が見通しに圧力をかける可能性がある」と、ジェフリーズは書いている。しかし、サプライヤーの業績不振による罰則で、一部は相殺される可能性がある。

航空宇宙・防衛産業がエナジーに最も依存する季節を乗り切るため、エナジー・インフレが主要な監視項目になることは確かだ。

Vertical Research Partnersのは、「ほとんどの企業は、ヨーロッパではまだ大きな圧力は感じていないが、厳しい冬になる可能性があると誰もが認めている」と述べている。■

Rising Energy Costs Send Shivers Through Aerospace Industry | Aviation Week Network

Michael Bruno September 26, 2022

 

Michael Bruno

Based in Washington, Michael Bruno is Aviation Week Network’s Senior Business Editor and Community and Conference Content Manager. He covers aviation, aerospace and defense businesses, their supply chains and related issues.


2022年9月28日水曜日

COVID後の民間航空の10年予測から。アジア太平洋の復活、機材需要、アフターマーケット需要などのご紹介

 Bangladesh Airlines

Credit: Nigel Howarth / Aviation Week



 

ジア太平洋地域は、長距離路線や国際線利用が多いため、旅客需要が2019年水準に戻る最後の主要地域となるだろう。

 しかし、アジア太平洋地域は、航空機保有機数の増加、アフターマーケット活動の増加でグローバルリーダーとしての地位をすぐ取り戻しそうだ。 

 エイビエーション・ウィークの予測チームが最新の10年間のフリートおよびMRO予測の仕上げを行っているが、出てきた予備予測は驚くにはあたらない。アジア太平洋地域の輸送機は、2032年まで年率4.5%で成長し、10年で9,100機から約13,600機に増加すると予想される。この数字には6,500機の新規納入が含まれるが、約2,000機の退役で一部相殺される予測だ。

 一方、短期的な需要の高まりが予想されるため、現行の機材は多忙を極める。他の回復の早い地域を参考にすれば、航空会社が待望のビジネス上昇に備え、サプライヤーやアフターマーケットプロバイダーは安定した仕事量の増加を期待できる。 

 注意しなければならないのは、納期だ。需要の高まりとサプライチェーンの制約(労働力から材料の入手可能性に至るまであらゆるものが寄与)が相まり、運航会社は、機体がすぐに使えるように、さらに先の計画を立てなければなならない。

 「航空会社が大量の在庫を抱えているとは思わない」と、OEM代替部品専門会社ハイコHeicoの共同社長であるEric Mendelsonは最近の決算説明会で述べている。「当社が供給したものの多くは、航空機に直接搭載されると思います。しかし、業界全体では、サプライチェーンや現状について社員と話すと、材料、部品、サービス、あらゆるもののリードタイム、見積もり作成が大幅に伸びていることがわかります。その結果、航空会社はニーズを先取りして購入していると考えるのが自然でしょう」。

 ハイコは、7月31日終了の第3四半期で商業用部品およびサービスの売上が24%急増したと発表した。この数字は、他のアフターマーケット・ビジネス・ラインと同じである。

 レイセオンは、プラット&ホイットニーコリンズ・エアロスペースの両ユニットにおける商用アフターマーケット売上は、2022年には前年比20〜25%成長する見込みとしている。ナローボディ機の好調が続いていることも理由の一つだが、2023年末には長距離便も大流行前の水準に戻ることが寄与する。

 ロールス・ロイスの幹部は、予測される1,100~1,200件のショップ訪問のうち、約60%が下半期に行われると公言している。この数字にはビジネスや地域航空のパワープラントが含まれているが、トレントのような大型ターボファン・ファミリーの成長が大きな役割を果たす。 

 Aviation WeekのTracked Aircraft Utilization(TAU)によると、トレントエンジンファミリーの2022年7月のサイクルは、比較可能な2019年7月の72%で、急激に上昇していることが分かった。稼働中のトレントエンジン総数が減少しているにもかかわらず、である。General ElectricのCF6・GE90ファミリーは、それぞれ82%と87%で、パンデミック前の活動状況に近づいた。Prattの PW4000は60%だった。トレントと同様、各ファミリーは3年前より稼働率が低下している。

 一方、GENxシリーズは成長を遂げており、その活動も変化を反映している。7月のGEnxサイクルは、2019年7月のアクティビティの103%だった。

 TAUの数字からわかるものとして、ワイドボディ部門は、最終的に、より親しみやすく、快適な領域に戻る道を歩んでいる。■

 

Daily Memo: Long Haul’s Return Will Help Asia-Pacific Get Back Into Growth Mode | Aviation Week Network

Sean Broderick Daniel Williams September 19, 2022

 

Sean Broderick

Senior Air Transport & Safety Editor Sean Broderick covers aviation safety, MRO, and the airline business from Aviation Week Network's Washington, D.C. office.

 

Daniel Williams

Based in the UK, Daniel is a regional jet, turboprop and rotary wing fleet analyst and forecaster for Aviation Week Network. Prior to joining Aviation Week in 2017, Daniel held a number of industry positions analysing fleet data.


2022年9月26日月曜日

台湾も海外渡航客の制限を緩和へ。残るは中国本土だけだ。

 



台湾は今週、規制を一部解除するが、COVIDの新たな悪化がなければ、検疫体制の終了は数週間先になりそうだ

Photo: Vincenzo Pace I Simple Flying

  • China Airlines
  • IATA/ICAO Code: CI/CAL

  • Airline Type: Full Service Carrier

  • Hub(s): Taoyuan International Airport

  • Year Founded: 1959

  • Alliance: SkyTeam

  • Airline Group: China Airlines Group

  • CEO: Hsieh Shih-Chen

  • Country: Republic of China

  • EVA Air
  • IATA/ICAO Code: BR/EVA

  • Airline Type: Full Service Carrier

  • Hub(s): Taoyuan International Airport

  • Year Founded: 1989

  • Alliance: Star Alliance

  • CEO: Chen Hsien-Hung

  • Country: Republic of China


 アジアの観光客受け入れ再開の動きの中で、中華民国(台湾)は光明を見いだし、世界の航空路線に再度乗り込む。今週末、台湾は日本と香港の同様の発表に続くと、中国と北朝鮮という2つのアジア市場が国境閉鎖政策に固執したまま残る。


台湾の航空会社には余力がある

エバー航空含む台湾の主要航空会社は、入国制限がなくなれば、ワイドボディーを導入する予。写真:Vincenzo Pace Vincenzo Pace I Simple Flying


 国境を開放し、観光客を歓迎することは、台湾の2大航空会社であるチャイナエアラインエバーエアにカンフル剤となるだろう。両社で合計184機を保有し、うち20%にあたる36機はch-aviation.comデータベースで非稼働とあるが、ワイドボディ機のほとんどは稼働中だ。チャイナエアラインはエアバスA330-300を18機、A350-900を13機、ボーイングB777-300ERを10機保有しており、非稼働のワイドボディ機はわずか5機だ。エバーはA330を11機、B777を34機、B787を10機運航しており、A330-200が1機だけ運航停止中。




 台湾外交部(外務省)は、9月29日から台湾へのビザ免除渡航を全面復活し、対象国の国民に許可不要の活動を行えるようにすると声明を発表した。活動には、親族訪問、観光、ビジネス、社会的イベント、展示会訪問、国際交流がある。同省によれば、内閣レベルの政府機関である中央感染症対策センター(CECC)の発表を受けて変更したとのこと。

 9月29日午前0時より、1週間の入国者数の上限を5万人から6万人に引き上げ、さらに15万人に拡大する。また、入国時の唾液によるPCR検査は廃止し、迅速抗原検査に変更される。旅行者は、3日間のホテルでの検疫と、混雑した場所を避けるよう求められる4日間の自己監視を受けなければならないことに変わりはない。Nikkeiアジアによれば、台湾は来月は強制検疫を終了し、2年半以上にわたり制限を受けてきた同国経済を世界へ再び結びつける。


10月に大きな変化が

台湾の観光再開に伴い、世界の空港でこの2機種の機体が見られるようになるのだろうか?写真:Michael Rehfeldt via Flickr  Michael Rehfeldt via Flickr


報道では、蘇曾長Su Tseng-chang 首相が、政府は10月13日頃に現在の措置を終了することを目指しているとの発言を引用している。内閣報道官のLo Ping-chengは木曜日のブリーフィングで、政府はあと1週間状況を監視し、実施予定の2週間前に緩和を発表する予定と述べた。これはツーリストのための検疫を取除き、グループ旅行の禁止を廃止することを含む新しい規則が10月13日ごろに有効となることを意味し、今週の伝染は許容レベルのママと仮定している。ロー報道官は、この新しい措置について次のように述べた。

 「国民が通常の生活に戻れるようにし、台湾は観光客を迎え入れ、すべての産業がより活発で繁栄するように門戸を開く。これは、パンデミックとの戦いにおける最後の1マイルだ」。

 観光を再開させる以外に、台湾がパンデミックの制限を捨てたい理由がある。9月21日、46,902人がCOVIDに陽性、39人が死亡した。オミクロン亜種で1日の感染者が94,000人を超えた5月からみれば急減した。

 残る中国がいつまで鎖国体制を続けるかが問われる。■

Taiwan Latest Asian Country To Reconnect And Ditch Quarantine Rules

BY

MICHAEL DORAN


Michael Doran (324 Articles Published)

Journalist - A professional aviation journalist writing across the industry spectrum. Michael uses his MBA and corporate business experience to go behind the obvious in search of the real story. A strong network of senior aviation contacts mixed with a boyhood passion for airplanes helps him share engaging content with fellow devotees. Based in Melbourne, Australia.


2022年9月25日日曜日

米国で深刻なパイロット不足のしわ寄せを一番大きく受けるリージョナル各社。路線削減や減便を余儀なくされている事情。

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Source: SkyWest Airlines


ープエア Cape Air、コミューテアCommutAir、スカイウエストエアラインズSkyWest Airlinesなど全米のリージョナル航空各社は、パイロット不足の影響を一番深刻に受けている。



 航空需要急増に対応し、米国の大手航空会社がリージョナル航空会社の機長を「ストリップマイニング」していると、コミューテアのCEOロック・ヘフラーRock Hoeflerは9月20日、ワシントンDCの年次リージョナル航空会社協会(RAA)リーダー会議でFlightGlobalに語った。

 エンブラエルERJ-145でユナイテッドエアラインズ向けフライトを運航するコミューテアー(本社クリーブランド)やその他リージョナル各社にとって、機長不足の解消が大きな問題になっている。

「各社の状況は全く同じです」(ヘフラー)。


 会議では各社幹部から、収益や米国内の各地域でのサービス提供能力の観点で、リージョナル航空会社がパンデミックによる低迷から完全に立ち直るには10年かかるとの声が出た。

 スカイウエストCEOのチップ・チャイルズChip Childsは、「5年か10年先には、非常に良い回復になりそうだ」と言う。「しかし、業界は、おそらくまったく別の姿になっていると思う... 今と別の収益モデルにする必要があるかもしれません」 。


路線削減、縮小


米リージョナル航空業界で急激な縮小が進んでいる。3月、ユタ州セントジョージに拠点を置くスカイウエスト(アラスカ航空、デルタ航空、ユナイテッド航空と契約)は、パイロット不足を理由に小都市29地点へのフライトを取りやめた。

 また、今春、ユナイテッドはリージョナルネットワークで数十路線を削減した。へフラーは、コミューテアがパイロットを何人の雇う予定か明言を避けたが、同社にパイロットが不足していることは認めている。

 「当社はユナイテッド専属で飛んでいるので、ユナイテッドが資産をどこに割り振るか次第で厳しい選択をしなければならない」とへフラーは言う。「104機あるのに、64機しか飛ばせないというのは、明らかにプレッシャーだ」。

 ケープコッドを拠点とするリージョナル航空会社のケープエアも同様で、長年サービスを提供してきたカリブ海の4地点への運行を最近減らしたと、CEOのリンダ・マーカムLinda MarkhamはFlightGlobalに語っている。また、イリノイ州クインシーとアイオワ州バーリントンへの運航を取りやめる申請をしている。

「現在もこの地域に飛んでいるが、スケジュールを縮小している」とし、「バーリントンは当社に残ってほしいと思っており、パイロットの採用や訓練で画期的な方法を見つけようと一緒に仕事したいと言ってきている」。

 ケープエアは最近、ケープコッドとナンタケット島を結ぶ重要路線でも減便した。2019年夏、同社のセスナ402はこの路線を毎日最大で12回シャトルしていた。昨夏、ケープエアは同ルートを毎日1~3回飛行していた。



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Source: FlightGlobal.

2020年2月27日、ボストン・ローガン空港にて、ケープエアのTecnam P2012 Traveller。同社は同型を2機保有。


 リモートワーク革命による「脱都市化」で、小規模都市へのフライト需要が高いにもかかわらず、便数が減少していると、へフラーは言う。

 モンタナ州のボーズマンなどでは運賃が上昇している。「生活が楽なところだからで、そこから勤務すればいい」。


プレッシャー


業界全体の現象だが、コミューテアの副操縦士多数でも、機長昇進を辞退する傾向がある。理由にいくつか要因が考えられるとへフラーは言う。

 昇進を試み失敗すれば、パイロット履歴書に傷がつく。副操縦士多数は、大手航空会社を視野に入れているかもしれない。言うまでもなく副操縦士給与はかつてないほど良くなっている。

 コミューテアの副操縦士は、最新契約では時給72ドルから。機長は時給100ドルからとなっている。

 「機長になる経済的利益を求めず、むしろ半年か1年待って、大手採用を望んでいるかもしれない」(へフラー)。

 パイロットの給与が高いことも、リージョナル航空に圧迫要因の一つだ。チャイルズは、スカイウエストが「賃金について神経質になっている」と認めたが、業界の多くで、賃金が維持できなくなるかもしれないと述べている。

 コミューテアは、パンデミックからの回復に苦労しているが、へフラーによると、同社は「オミクロンの本当に厳しい部分」から立ち直れたという。

 同社は、今後はERJ-145をこれ以上駐機させておくつもりはない。へフラーは、来年夏までに「機長問題のプレッシャーを少し軽減」できると期待している。■



‘All of us are in the exact same spot’: regional airline CEOs on pilot shortage | In depth | Flight Global

By Howard Hardee, Washington, DC24 September 2022


2022年9月24日土曜日

動員令はロシア航空業界も巻き込み、航空会社、空港職員へしわ寄せが押し寄せている

 

ロシアのパイロット多数は、軍事訓練を受けている。Photo: Getty Images


動員令発表の翌日から、ロシア航空会社・空港の職員多数に通知が届いている

ーチン大統領による部分的動員令を受け、ロシアの航空会社や空の職員も徴兵通知を受け取り始めている。今回の展開について詳しく見ていく。


航空会社社員へ徴兵通知が届く

プーチン大統領がロシア軍予備役の一部動員を命じたことを受け、フラッグ・キャリアアエロフロートを含む航空会社少なくとも5社とロシア国内の10空港の職員多数に徴兵通知が送付された。

 航空会社や航空関係者は、動員令発表の翌日に通知を受け取ったとされる。ロシアでは、民間航空会社パイロットの大半が、軍の飛行学校で訓練を受けた予備役か、兵役を終えた二等兵だ。

 航空管制官連邦労働組合は、航空管制官多数が通知を受け取っていると発表した。同組織は、ミハイル・ミシュティンMikhail Mishustin首相に個人的免除を求める手紙を出したという。

 ショイグ国防相は2日、予備役約30万人が招集され、対象は戦闘経験を有する特殊技能の持ち主と明らかにした。


従業員の半数以上が召集される可能性

ロシア紙コメルサントによると、アエロフロート・グループの関係者は、ポベダ航空Pobeda Airlinesロシヤ航空Rossiya Airlinesなど、グループ3社も含め、従業員の約半数が徴兵される可能性があると明らかにした。

 該当航空会社の関係者は、職員の50-80%程度が徴兵される可能性があると推定している。アエロフロートでは、従業員の専門分野のリストを作成するためチームを立ち上げた。


徴兵免除を巡る混乱

その他の航空会社や空港では、徴兵免除対象と思われる社員リスト作成をすでにはじめているところもある。しかし、航空会社の弁護士は免除リストをどこに送ればいいのかわからず、手続きにかなりの混乱があるようだ。

 これまでのところ、航空会社は運輸省、国防省、あるいは地方当局それぞれにリストを送付している。また、航空会社は各地域でスタッフを雇っているため、どの軍の登録・入隊事務所に連絡すればよいのかも不明だ。

 数カ月にわたる経済制裁ですでに悲惨な状態のロシア航空業界にとって、主要スタッフの徴兵は航空会社をさらに脅かすことになりかねない。航空会社は国防省に対し、重要スタッフに免除資格を与えるよう要請を出すとみられている。

 コメルサント紙によると

「最大の懸念は、乗務員以外に、技術専門職、IT専門職、販売部門の従業員も動員される可能性があること」だという。

 コメルサントは、航空会社で重要人員が数人徴兵されるだけでも業務に支障をきたす可能性があると説明しており、「航空技術職とIT専門職は非常に特殊な職業であり、希少な存在で制裁開始後に価値が高まった」 と報道している。■


Staff Of Aeroflot & Other Russian Airlines Receive Conscription Notices

BY LUKE BODELL

Photo: Getty Images


Luke Bodell (662 Articles Published)

Journalist - With 10 years of experience as a travel writer and aviation analyst, Luke has worked with industry-leaders including Skyscanner, KLM and HotelsCombined throughout his career. As a passionate traveler based across the Middle East and East Asia, Luke offers strong insights into the travel and aviation industry.


2022年9月23日金曜日

エアバスの機関投資家向け説明会が久しぶりに開催。A220ストレッチ版開発、COVID-19で手持ち資金枯渇、ワイドボディ攻略、中国でボーイングからシェア奪うなど。

 


アバスの最高経営責任者ジローム・フォーリGuillaume  Fauryはエアバスに適切な時期にA220の大型版を作る計画があると明らかにした。


エアバスA220の拡大版?

エアバスA220はエアバスが開発した航空機ではなく、カナダのボンバルディアが作ったもので、2018年にエアバスがこのプロジェクトを購入した。当時、ボンバルディアはエアバスやボーイングに挑戦し旅客機市場に参入するのが困難な状況になっていた。ボンバルディアCシリーズプロジェクトは、エアバスの予想をはるかに上回るコストがかかる赤字プログラムとなった。エアバスの最高財務責任者ドミニク・アサムDominik Asamによると、同メーカーは2025年までに収支を均衡させるという。A220-500型の可能性は、エアバス最大の稼ぎ頭であるA320neo型機に取って代わる可能性がある。


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 アサムはA320neoの生産予測を再確認した。水曜日にエアバスは、2025年までに月産75機体制を求めるサプライヤーへの圧力を撤回すると報告していた。

 A320neoファミリーの成長により、エアバスはナローボディ市場で絶好のポジションにつけている。

 本日、エアバスは4年ぶりにCapital Markets Dayを開催し、フォーリ、アサム両名が出席した。フォーリは、エアバスの手持ち資金はCOVID-19パンデミックで枯渇したと述べ、自社株買いの可能性を否定しなかった。

 イベントで、フォーリは、エアバスが大型旅客機の市場シェアの拡大をほのめかした。エアバスはナローボディでかなりの成功を収めているが、ワイドボディ機で足場を強めたいと考えている。まず、A350貨物型をテコ入れする。同期はまだ実機が完成していない777X貨物型に比べ劣勢のままだからだ。

 エアバスは、単通路機の市場で大きな成功を収め、最近では急成長して市場の主導権を握っている。その成長を牽引してきたのがA321neo型機だが、A321XLRは開発が遅れており、エアバスの想定より時間がかかっている。

エアバスのA312XLRの2号機が今週初飛行した。写真:エアバス 


 エアバスは、A300をはじめとするワイドボディ機メーカーとして誕生したが、単通路機で最も成功を収めている。A321neoの効率と航続距離改善により、エアバスは長年ボーイングが独占してきたワイドボディ市場の下限で競争できるようになった。


中国におけるエアバスの成長ぶり

ナローボディ市場におけるエアバスの成功の完璧な例として、中国の厦門航空があり、同社はA320neoファミリー機40機を最近発注した。厦門航空はすべてボーイング機材を使用しているが、これは間もなく変更される。 ロイター通信によると、厦門航空は昨日、45億ドル相当の発注を発表し。8月には、厦門航空の過半数を所有する中国南方航空が、A320neoファミリー機96機の発注を発表している。ボーイング737MAXが中国で運行停止が続く中、エアバスが中国の航空市場で地歩を固めつつある。今週、ボーイングは、中国の航空会社向けに製造済み航空機の再割当てを開始すると発表した。

 エアバスの受注ぶりとボーイングのトラブルで、エアバスは中国で急成長のチャンスを得ている。■


Airbus CEO: Larger A220 Will Make Sense At The Right Time

BY LUKAS SOUZA

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Lukas Souza (140 Articles Published)

Journalist - Lukas flew for the first time before his first birthday, and has loved aviation since his earliest memory. Combining a passion for aviation, storytelling, and photography, Lukas joins the Simple Flying team from Colorado Springs in the United States.

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