2022年6月29日水曜日

ボーイングが進めるデジタル生産は設計から生産現場までを対象とする広範な概念だが、どこまで実現しているのか。MBEに注目

 

新型機でボーイングが次に狙う目標は、航空機設計と生産工程を統一フレームワークMBEで結合することだ。Credit: Boeing



ーイングの最近の製品開発戦略の浮き沈みを通して、2015年以来一貫しているメッセージがある。次の新型民間航空機の開発開始は、旅客機自体の設計とあわせ、より低コストの生産システムの完成にかかっている、ということだ。

  • MBEを軍用から民間へ拡大するのが重要課題

  • デジタル計画には業界標準のインターフェイスが重要

 この戦略の中核となるのが、ボーイングが進めているデジタルトランスフォーメーションだ。これは、情報交換の障壁がすべて取り除かれてどのように仕事が達成されるかを、再構築するボーイングの基本概念だ。この移行は、ボーイング社がモデルベースエンジニアリング model-based engineering(MBE)システムを全面採用し、システム要件、設計、分析、検証から概念設計、開発、運用まで、新型航空機の開発をモデリングでサポートすることに代表される。

 

 

 ボーイングのMBEフレームワークを示す図では、下半分が従来の物理システムエンジニアリングに基づく設計と納品のプロセス。上半分がモデリングとシミュレーションで物理システムを仮想的に表現している。現実世界と仮想世界の間にはデジタルの糸が通り、モデルを物理システムの設計にリンクさせ、2つのパスが継続的に相互に情報を提供し、同時進行を可能にしている。

 ボーイングは,数十年にわたる軍事および商業プログラムにおける高度な計算機設計の取り組みをもとに、T-7A 高度練習機、MQ-25 無人空中給油機、オーストラリアのATS (Airpower Teaming System) など最近のプロジェクト開発を加速するため、本格的なデジタルMBEの取り組みを実施している。T-7Aでは、品質検査に合格した部品数が75%増加し、開発サイクルが36カ月に短縮され、フルサイズの確定組立技術を使用し組立時間が80%短縮された。

 しかし、ボーイングの課題は、このプロセスを民間に移管することだ。ボーイングの技術・試験・テクノロジー部門のチーフエンジニア兼上級副社長グレッグ・ヒスロップGreg Hyslopは、「軍用機の要件は大型商用機の要件と大きく異なります」「私たちが次の民間航空機で行っているのは、航空機設計に適用しているあらゆる厳密さを、生産システムの設計に適用することです」とヒスロップは言う。「航空機に変更があった場合、工場での変更への影響や、工場で何か変更する必要があるか確認できるようにするためです」。

 MBEのインタラクティブなフィードバック機能を使うことで、ボーイングは隠れた問題や課題を事前に十分回避できるとともに、設計の柔軟性を高め、開発期間とコストの両方を削減できるはずだ。

 「私たちがここでやろうとしていることは、ボーイングの航空機製造の歴史に新たな一章を加えることです」「航空機設計が工場の性能に与える影響を確認できるように、工場の性能を厳密かつ正確に予測するにはどうしたらよいでしょうか?」「私の知る限り、誰も私たちがやりたいレベルでそれをやっていません。非常に難しい問題です」「しかし、T-7Aのようなプログラムで、その利点が現れているので、非常に有益なのです」(ヒスロップ)。

 「開発プロセスを進める中で、航空機の性能を予測することになりますが、同時に工場の性能も予測することになるでしょう」と指摘します。そして、こう付け加えます。「航空機の要件を把握するのと同じように、生産システムの要件もシステムエンジニアリング環境で把握することになるのです」。その結果、航空機と生産システムの両方で設計の柔軟性が高まると、ヒスロップは言う。

 「マージンがあるところが把握できますし、工場がうまくいっていないことがわかったら、工場の性能を維持するため航空機の設計をどう変えればいいのでしょうか?

航空機と工場の両方の設計が単一のMBEフレームワークで結合された形で商用製品のデジタル移行を正式化するために、ボーイングは2021年9月に統合製品チーム(IPT)を設立した。このチームは、同社のエンジニアリングプラクティス、プロセス、ツール担当の元副社長であるリンダ・ハプグッドLinda Hapgoodが率いており、社内の他の取り組みや経験を基に構築している。その中に、2018年に英国で開設された同社の「未来工場」試作生産システム施設におけるデジタル対応インフラと先進プロセスで得られた経験や、キャンセルされた新中型機、787や最近の軍事プログラムで得られた教訓などが含まれる。

 「私たちは何年もこの旅をしてきました」とヒスロップは言う。「商業的な面では、787は私たちをここまで成長させ、多くの教訓を学びました。うまくいったことも、うまくいかなかったことも、すべてこの新設計に生かされているのです」「この設計は、私たちが次の民間航空機の開発にどう取り組むかの先駆けなのです」と付け加えた。

 

MQ-25MBEの実践は、無人機MQ-25などのプログラムで証明されたが、商業的な応用には、大幅にスケールアップする必要がある。Credit: Brian Everstine/AW&ST

 

 

 多くの教訓が得られ、T-7AやMQ-25のような先駆的プログラムがコンセプトを証明した今、ボーイングが全く新しい民間航空機を立ち上げるためにMBEを完全導入する前に立ちはだかるものは何か?「それは常に規模であり、そうでなければならないのです」とヒスロップは言う。「今後数年間で解決しなければならない難しい問題です。防衛計画のいずれもが、供給基盤や必要な認証のレベルという点で、商業機の開発計画の規模には達していないのです」。

 ヒスロップはまた、最近報告されたT-7AとMQ-25の損失(それぞれ3億6700万ドルと7800万ドル)は、MBEプロセスを使用する欠点の反映ではないと主張している。「どんな開発プログラムにも課題はあります。このプログラム2つは、要求内容や初めてとなる能力を考えると、従来の航空機の開発プログラムよりはるかに速いペースで現れると思います」。

 さらに787プログラムの「傷跡組織」に言及し、ヒスロップはこう付け加えた。「私たちは、何を避けるべきかはわかっています。そして、この試みを成功させるため、絶対に妥協できない重要なことが分かっています。それが、この取り組みの重要な部分なのです」。

 民間航空機プログラムでは、一般的な軍用機よりはるかに大規模な供給ネットワークが必要となるため、完全な商用化を進めるには大きな課題があります。「もし、私たちが自分たちの仕事のことばかり気にしていたら、恩恵は受けられない」とヒスロップは言います。「独自のインターフェースではなく、業界標準を利用することで、可能になると考えています」。

 独自のインターフェースではなく、業界標準に基づいたデジタルスレッドを定義することで、ボーイング社は業界全体で使用されている様々なツールセットに対応することを要求されるのではなく、サプライヤーとシームレスに作業することを計画している。「デジタル・スレッドを定義する際には、業界標準に従わなければなりません。簡単なようで難しいことです」という。

 「そのためには、サプライヤーにも業界標準を理解してもらわなければなりません」。ヒスロップはこう指摘する。「ボーイングの仕様ではなく、インターフェイスをどう定義するかという業界の仕様なのです」とヒスロップは指摘する。

 また、T-7Aで見られたような、開発・製造サイクルの短縮の可能性はどうか。「大型民間機でもそうなるかわからないが、楽観的に見ている理由の一つ」とヒスロップは言う。T-7A試作機は量産機に近いものだったが、「しかし、試作機は認証プログラムを経る必要がなかったので、結果の予測ができません」とヒスロップは付け加えまた。「しかし、そのおかげで機体の完成が早くなり、初期の機体で手直しが少なかったのです」。

 ボーイングのCEOデイヴィッド・カルホーンDavid Calhounが、次の新型航空機の開発開始は「2、3年先」と頻繁に発言していることについて、ヒスロップは「時間はあります。準備が整うまでは行かないし、この問題を解決していく決意です。解決できないとは思っていません」。■

 

 

Boeing's Digital-Design New Airliner Plan Faces Long Road Ahead | Aviation Week Network

Guy Norris June 24, 2022

 

Guy Norris

Guy is a Senior Editor for Aviation Week, covering technology and propulsion. He is based in Colorado Springs.


5月のアジア太平洋航空旅客利用数は急増したものの、中国市場は依然閉鎖状態

 

Photo: Vincenzo Pace I Simple Flying


ジア太平洋地域の航空輸送量は増加中とはいえ、COVID前の25%以下で、週当たり輸送量は900万席減少している。

 パンデミック以前のアジア太平洋地域は、商業航空で世界で最も急速に成長中の地域だった。中国は例外だが、国境移動で規制が大幅に緩和された今、この地域で国際旅行は急速に勢いを増している。

 アジア太平洋航空協会(AAPA)は、アジア太平洋地域に拠点を置く国際定期航空会社の業界団体。マレーシアのクアラルンプールに本部を置き、航空会社40社のトラフィックデータを集計している。エアインディアチャイナエアライン中国南方航空、キャセイパシフィック航空、カンタス航空シンガポール航空アシアナ航空日本航空が加入している。



アジア太平洋地域は成長中だが、追加の余地は大きい

アシアナ航空は韓国を拠点とし、AAPAに加盟している。Photo: Vincenzo Pace | Simple Flying



AAPAが昨日発表した数字によると、5月の国際線旅客数は前月の5倍だった。4月の130万人に対し、5月は733万人がアジア太平洋地域の国際定期便で移動した。5月の伸びは非常に心強いが、2019年5月の実績3040万人と比較すれば見劣りする。

 今年1月から5月までの期間、同地域で2190万人が国際線を利用し、昨年の590万人を大きく上回った。2019年の同期間は1億5510万人で、2018年の1億4790万人を5%上回った。2018年にアジア太平洋地域で移動した国際線旅客数は3億5660万人で、2020年は7000万人、昨年は1670万人だった。

 この数字について、AAPA事務局長サバス・メノンSubhas Menonは本日、Simple Flyingに以下語った。

 「検疫や検査が不要の完全開放地域は、高い成長率を示しています。中華圏は閉鎖的なままで、日本と韓国は暫定的に開放しているものの、韓国では出国前と到着後の検査が今も必要です。シンガポールは国際市場だけあって、制限がないため、力強く伸びています。ASEANの国内市場は絶好調ですが、閉鎖的なところは国内市場でも軟調です」。

 ASEAN東南アジア諸国連合は、東南アジアの政治・経済連合でブルネイ、カンボジア、インドネシア、ミャンマー、ラオス、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナム6カ国が加盟している。COVIDの影響で、アジア太平洋地域のすべてとは言わないまでも、ほとんどの国が国境を固く閉ざし、長く厳しいロックダウンに耐えた。国際航空便はストップし、国内航空便も大幅に制限された。しかし、アジア太平洋地域では、規制が急速になくなっており、需要が回復しつつある。

 特に、燃料費の高騰、人件費の増加、メンテナンス費用の増加など、コスト抑制が重要だとメノンは言う。コスト増は、航空会社の債務負担を重くしているだけでなく、財政を弱体化させるおそれがある。また、「航空輸送システムの生態系が需要急増に対応するため努力しているため、各航空会社は経営上の制約の増大に直面している」という。


キャパシティ不足は中国と日本が多い

日本航空は、国境移動が完全再開され、国際線の座席が埋まり始めることを切望している。 Photo: Vincenzo Pace | Simple Flying


今週、スケジュール分析会社OAGが2022年6月27日のキャパシティレポートを発表し、世界の航空会社のキャパシティは9990万席となった。OAGはアジア太平洋を北東、東南、南アジアに加え、南西太平洋の4地域に分類している。この4つを合わせたアジア太平洋は、キャパシティが3300万席弱となり、世界最大の地域となっている。2019年の同週のアジア太平洋の座席キャパシティは4220万席で、今週のキャパシティより3割近く多かった。

 日中韓の国境規制が終わり、乗客がパンデミック前水準を超える可能性は高い。今週は、全世界で約1660万席分の欠航があり、半分以上がアジア太平洋地域だった。今のキャンセルや空港の混乱ぶりを見ると、1700万席が全部埋まったらどうなるのだろうかと思わざるをえない。■


Asia Rebounds Strongly In May With China Traffic Still To Come

Asia Rebounds Strongly In May With China Traffic Still To Come

BY

MICHAEL DORAN

PUBLISHED 56 MINUTES AGO


Michael Doran (158 Articles Published)

Journalist - A professional aviation journalist writing across the industry spectrum. Michael uses his MBA and corporate business experience to go behind the obvious in search of the real story. A strong network of senior aviation contacts mixed with a boyhood passion for airplanes helps him share engaging content with fellow devotees. Based in Melbourne, Australia.

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2022年6月26日日曜日

空前の需要増で業績上昇のスピリットエアラインズはコロナ後の新顧客像「ブレンデッドトラベラー」にも対応を怠らない。

 

Photo: Vincenzo Pace | Simple Flying


ピリットエアラインズは、空前の需要増に直面し、新路線を追加しながら、直前予約に対処する新方法を見出そうとしている。

2月にフロンティアエアラインズとの合併案が発表されて以来、スピリットをめぐるニュースのほとんどは、財務欄で扱われてきた。しかし、スピリットは新路線やサービスを提供し続てきた。

フロンティアとジェットブルーの騒動が終息に向かうなか、プエルトリコで最近開催されたCAPAのAmericas Aviation and LCCs Summitで、スピリットのEVP兼チーフ・コマーシャル・オフィサー、マット・クラインMatt Kleinは、27年のキャリアで最大の乗客需要だったと語った。3月に春休みやイースターの旅行予約が殺到し、現在は非常に高水準の予約が高止まりしていると語った。また、価格設定は非常に健全で、この時期には考えられないレベルの予約カーブだと述べた。「つまり、夏の旅行で普通考えられないくらい高い運賃を設定できるようになったのです」。

ブレンデッドトラベラーとは?

スピリット航空はここ数十年で最も需要が高く、非常に高い稼働率で航空機を運航している。 Photo: Getty Images

ブレンデッドトラベラーとは、レジャーとビジネス旅行を組み合わせる顧客を表す概念で、クラインは、自宅からリモートで仕事する人にも当てはまることが多いという。転職やリモートワーク、研修など、従来の出張と異なる形で飛行機を利用する顧客が多くなっているという。これにより、多くの旅行が生まれ、VFR(友人や親戚を訪ねる)旅行とビジネス旅行がひとつになった新しい顧客層が生まれたという。一例として、クラインはこう語った。

「以前ニューヨークに住んでいて、仕事のためナッシュビルへ引っ越して、家族や友人はニューヨークにいる場合、前は純粋に休暇やVFRの交通手段だったかもしれないが、両方向のフライトが多くなる」。

パンデミックで多くが変わったが、そのひとつが、予約からフライトまでの時間だ。米国、ラテンアメリカ、カリブ海諸国について、クラインは、COVIDの発生時、予約曲線は「極めて異常な」7日間に短縮されたと述べています。今日、「正常に戻る」はほとんど意味がないが、スピリットはCOVIDの影響に対応して曲線が縮んだり広がったりし、スケジューリングのキャパシティに大混乱をきたすのを目の当たりにしている。

需要の急増は新しいことではないが、新しいのは、人、航空機、空港サービスなど対応するリソースが整っていないことなのだ。そのため、空港やスケジューリングに問題が発生した場合、解決のためのリソースが用意されてきた。「空港や乗務員のスケジュール管理、収益管理部門に適切な規模のスタッフがいることは分かっていましたが、それらのグループの中には、役割を満たすのに本当に苦労しているところもありました」と、彼は言う。

中南米とカリブ海がスピリットの成長スポット

フォートローダーデールはスピリット航空の人気スポットであり、サンフアン便のジャンプポイントにもなっている。写真:Vincenzo Pace Vincenzo Pace I Simple Flying

成長機会を求め、スピリットは中南米とカリブ海地域で存在感を高める決定をし、ネットワークの約20%まで増やした。重要なのはプエルトリコのようなVFRトラフィックで、休暇旅行ではないため低運賃が不可欠だとクラインは言う。休暇旅行では、ラスベガス、オーランド、ロサンゼルス、ニューヨークなど、人々が行きたいと思う場所に運行したいとする。また、クラインは「スピリットでは、低運賃とポイント・ツー・ポイントのサービスで、旅の機会を作ります」。

ブレンデッドトラベラーはこのコンセプトに共感するだろうか?■

Spirit's Low Fares And Direct Routes Are Perfect For Today's Blended Passenger

BY

MICHAEL DORAN


2022年6月23日木曜日

制裁を続ければISSが軌道を外れるとのロシア宇宙機関の脅かしは正当なものなのか

 

 

 

NASA

   

 

シアが国際宇宙ステーション(ISS)を地球に衝突させると脅しているとの主張は、正当なものとはいえない。ロシア宇宙機関のトップは、ISSが軌道から落ちる可能性があるとツイートしたが、専門家はその可能性は極めて低いと考えている。

 

 

一部のソーシャルメディアユーザーは、米国がロシアとの戦争でウクライナを支援することが裏目に出ると心配している。ツイートには、アメリカがウクライナを支援し続けるなら、ISSを落下させるかもしれないとロシアが発言したとある。このツイートでは、ロシア版NASAであるロスコスモスのトップが、アメリカがウクライナを支持し続ければ、国際宇宙ステーションがアメリカ、ヨーロッパ、インド、中国に落下することを示唆したと主張している。

 これらの主張には真実があるのだろうか?そして、我々は今すぐパニックになるべきなのだろうか?事実確認を行った。

 まず、背景を少し説明する。ロシアとアメリカが長年にわたり政治的に対立してきたことは周知の事実だが、宇宙では友好的な関係を保っている。Axiosの記事によると、宇宙ステーションは米露が協力している数少ない分野の一つだ。NASAの国際協力のページによると、ISSは1998年に打ち上げられ、アメリカ、ロシア、カナダ、日本、欧州宇宙機関が参加した。

 

キーワード検索してみる

このツイートでは、このニュースはロスコスモスのトップから直接来たということだが、このような脅しが本当にあったのかキーワード検索してみた。「head of roscosmos says ISS could fall out of sky because of sanctions」というキーワードで検索すると、Newsweek記事がヒットした。

 Newsweekによると、ロシアの宇宙機関のトップであるドミトリー・ロゴジンDmitry Rogozinは、Twitterで、ISSが軌道から落ちるかもしれないと警告していた。

 記事によると、ロゴジンは2月24日に「もし我々との協力を妨害したら、制御不能な軌道離脱と米国や欧州への落下から誰がISSを救うのか」とツイートしている。「インドや中国に500トン級の構造物を落とす選択肢もある。そんな見通しで彼らを脅すのか?」とある。

 確かにロスコスモスのトップは、アメリカの対ロシア制裁でISSが空から落ちるかもしれないと警告していたので、少なくとも出所は分かった。しかし、ロゴジンの主張に真実味があるのだろうか?

 

複数ソースを確認すると

Timeの記事によると、ロゴジンが本気で荒唐無稽な脅しをツイートしたのは今回が初めてではない。2014年に至っては、米国はトランポリンで国際宇宙ステーションに宇宙飛行士を送るべきだとまで書き込んでいる。

 ロゴジンが「米国は宇宙へ飛ぶためにほうきを使わなければならないだろう」とつぶやいた後、元宇宙ステーション司令官のテリー・ヴァーツはTimeに、「本人のこれまでの言動から、驚きはしなかったよ。予想していたことだ。一方では目を丸くして反応し、他方では『宇宙ステーションのパートナーシップにダメージを与えたな』と思いました」と語っている。

 これに対するNASAの反応は?基本的には、「ふーん」という感じだ。

 AP通信によると、NASAのビル・ネルソンBill Nelson長官は、「あれがドミトリー・ロゴジンだ」と述べた。「彼は時々暴言を吐く。しかし、結局のところ、彼は我々と一緒に仕事をしてきた。ロシアの民間宇宙計画で働く他の人たちは、プロフェッショナルなんだ」。

 The Verge記事によると、ISSが軌道飛行を維持するためロシアが必要なのは事実だが、ロシアがテーブルから離れても、ISSがすぐに空から落ちてくることはない。

 

評価

ほとんど正当ではない。ロスコスモス長官がツイッターで、国際宇宙ステーションが地球に落ちてくると脅したが、その可能性は極めて低いことで専門家は一致している。さらに、ロシアがISSから離脱しても、ISSが即座に軌道を外れることはないだろう。■


Is Russia threatening to let the International Space Station crash into Earth? - Poynter

By: Pride David

June 22, 2022


2022年6月20日月曜日

ウクライナ戦のとばっちりを受けた格好のZIPAIRが機体デザインの一新を迫られている。合わせてサンノゼ直行便開設を発表。

 

Photo: ZIPAIR


本の格安航空会社ZIPAIRは火曜日、今年12月にカリフォーニア州サンノゼ直行便を就航させると発表した。また、「Z」を取り除く新しいカラーリングを発表した。

ロシアのウクライナ侵攻を受けての変更だ。


新しい機体カラーリング

ZIPAIRの現在のカラーリングは、機体の尾翼に「Z」が描かれているが、この記号は現時点では、ブランディングに悪影響を与えかねない。

ロシアのウクライナ侵攻以来、"Z"は戦車や軍服に描かれ、ロシアでは戦争推進のシンボルになっている。さらに、"Z"はロシアの侵略への支持を示すためにも使われ、ロシア政府は同シンボル使用を奨励している。



ZIPAIRには、シンボルマークから、ロシアと関係があるのかと疑問視する声が上がっている。ZIPAIRの西田真悟社長は、この問題を収束させるべく、次のように語った。

「説明受けずに見れば、そう感じる人もいると思います」

Zマークには否定的な意味合いがあるため、ZIPAIRはカラーリングを変更すると発表し、2段階による変更を公開した。第一段階では、機体の尾翼にある「Z」の上にデカールを貼る。第1段階は今月開始する。2022年12月から2023年春の第2段階では、尾翼の完全な塗装が行われる。


ZIPAIR


サンノゼ(SJC)直行便を就航


ZIPAIR東京は2日、成田で記者会見を行い、2022年に国際線ネットワークをさらに拡充することを決定し、その詳細を発表した。2022年12月より、ZIPAIRは東京成田(NRT)-北カリフォルニアのサンノゼ国際空港(SJC)間に直行便を就航させる。

 同路線は今年12月就航を予定しており、秋ごろから予約受付を開始する。同航空のプレスリリースでは、「就航は政府の認可を条件とする」と記されている。スケジュールや運賃はまだ発表されていない。


 ミネタ・サンホセ国際空港の航空部門ディレクター、John Aitken氏は次のように述べた。「ZIPAIRが今年後半にミネタ・サンホセ国際空港の一員となる予定と本日発表し、大変うれしく思います。ZIPAIRは、テクノロジーを活用して効率的で利用しやすい旅行体験を提供する新しいタイプの航空会社であり、サンホセとシリコンバレーに最適な航空会社です。SJCと東京-成田を結ぶ直行便の計画が今後進むにつれ、ZIPAIRのチームと協力できることを楽しみにしています」。


ZIPAIR Tokyoについて


ZIPAIRは、日本航空の100%子会社。2018年に就航したZIPAIRは、ローコストキャリアのビジネスモデルながら、完全カスタマイズ可能な旅行体験の提供を特徴とする。290席仕様のボーイング787-8ドリームライナーを運航し、搭乗クラスすべてで無料WiFiを提供する。ZIPAIRは、非接触型機内サービスを提供する数少ない国際線航空会社だ。スマートフォンやタブレット端末を利用した機内食のセルフオーダーシステムを導入している。成田を拠点とするZIPAIRは、現在、バンコク、ソウル、ホノルル、ロサンゼルスの5都市に運航している。■


Why The War In Ukraine Prompted A Japanese Carrier To Change Its Livery

BY

LUKAS SOUZA

June 18,2022


2022年6月18日土曜日

ダイナミックプライシングで航空業界、利用客双方が恩恵を受ける。その推進役はデータでありAIだ。

 



この価格モデルは柔軟性を提供する一方で、その利点については多くの議論がある。


空会社は収益の最大化を目指し、ダイナミックプライシングが航空業界に浸透しつつある。このトレンドを全員が歓迎しているわけではないが、市場関係者は、乗客と航空会社双方に利益をもたらすと言う。

航空会社は乗客をよく理解しており、ダイナミックプライシングはその知識を活用するものだ。

 ダイナミックプライシングとは、市場状況を反映して、製品やサービスの価格を変化させる取り組みだ。一般のビジネスでは、需要が高まったときに価格を上げることがある。例えば、Uberは移動需要のピーク時に価格を上げることがある。



 航空業界では、利用客で分かっていること、あるいは分かっていると思われることに基づき、運賃を提示するプロセスになってきた。航空会社はデータ収集の達人だ。マイレージのデータを収集し、クッキーでユーザーの検索内容や興味を追跡する。

 機内で飲み物を買ったアメリカン・エキスプレスの情報を渡したり、航空会社のワインショップでワインのケースを買えば、その航空会社は客の飲み物の好みを把握できる。このように何百、何千もの行動が追跡され、それが積み重なっていく。

 ブラウザをクリーンアップし、ブリティッシュ・エアウェイズ(または他の航空会社のウェブサイト)のウェブサイトにログインすると、次のようなメッセージがポップアップ表示される。

 「ba.comを使い続けることで、あなたはウェブサイトの利用規約と、ウェブサイトと当社のサービスを使用する際のクッキーの使用に同意することになります。また、記載されている範囲内で、あなたが同意することになる個人データの処理ついての当社プライバシーポリシーもお読みください」。

 航空会社は乗客について多くを知っている。利用客は、プライバシーの戦いにほとんど負けたか、降伏している状況だ。現在、多くの航空会社がデータを活用し、収益を上げる使い方を学んでいる。個々の乗客のレベルで、ダイナミックプライシングは、次の日曜日にマドリードからヒースローまで飛ぶために、乗客がいくら払うかを判断しようとするものだ。


ある日ある時間の航空移動に乗客はいくら支払うのか。


デジタルコマースプラットフォームPROSのプロダクトマネジメント担当ディレクターであるジャスティン・ジャンダーJustin Janderは、航空会社は粘りあるエンドツーエンドの乗客の旅を実現するため、これまで以上に努力していると語る。方法のひとつに、人工知能(AI)を使い乗客の過去の行動から学習することがある。航空会社は、乗客の次の行動、つまり航空券にいくら支払う気があるのかを予測ができる。

ジャンダーは次のように述べています。

 「ダイナミックプライシングでは、固定価格帯の運賃クラスの壁を航空会社が破ることができるため、航空業界と非常に関係が深い。例えば、100ドルと200ドルの2種類の運賃があったとします。150ドルを支払っていいとする乗客がいて、航空会社が100ドルの運賃を提供すれば、50ドルの収入増を失います。あるいは、200ドルの運賃を提示すれば、150ドルの収入全額を失うことになります。最適な価格帯を見極める柔軟性がで、航空会社はより効果的に収益を上げることができるのです」。

 航空会社が幅広い季節要因で運賃を調整していることがわかっている。また、ある都市で大きなイベント、例えばサッカーの決勝戦が開催される場合、航空会社が特定の時間帯に特定の目的地への運賃を調整することも知っています。同様に、航空会社は旅行需要を喚起するため、オフピーク時間帯に運賃を下げる。ダイナミック・プライシングはこれを、より細かく、個々の乗客のレベルにまで拡大する。

 アマデウスなどの業界大手は、価格設定の最適化につながるサービスを提供している。航空会社がより良い販売を行い、より多くの収入が得られると強調している。顧客選択モデリング、継続的な価格設定、差別化されたリテーリング、これらすべてが一体となって、「座席あたりの利益を最大化し、顧客への訴求を広げる」ことができる。

ダイナミックプライシングは乗客のためになる

ジャンダーは、ダイナミックプライシングは航空会社だけでなく、乗客にも有効だと言う。基本のレベルで、ダイナミックプライシングの仕組みと適用方法を学ぶことができる。マイレージプログラムやホテルロイヤリティ、ショッピングプログラムの仕組みだ。ダイナミックプライシングの基本を理解すれば、乗客はダイナミックプライシングを有利に運用できる可能性がある。

 「新規顧客の獲得には、顧客を維持するよりコストがかかる」「航空会社が既存顧客との関係を深めることを優先するのは、理にかなっている。特定の航空会社のブランドロイヤルカスタマーの乗客にとっては、航空会社が活用し、好みを理解できるAIに基づき、パーソナライズされたフライトパッケージを受け取るメリットがあります」。

 ダイナミックプライシングが今後も続くことに同意する航空会社関係者が多い。AIが賢くなるにつれ、ダイナミックプライシングも賢くなる。ダイナミックプライシングは、さらに繊細になり、不格好なアルゴリズムに左右されなくなる。買い手と売り手の間には、これまでも、これからも緊張関係は続く。航空業界でのダイナミックプライシングで緊張感を取り除けないだろう。しかし、時間の経過とともに、ダイナミックプライシングは、航空会社と乗客の双方が満足できる中央値価格を設定する技術を磨いていく。■


Passengers Learn To Adapt As Airlines Adopt Dynamic Pricing

BY

ANDREW CURRAN


About The Author

Andrew Curran (2494 Articles Published)

Lead Journalist - Southwest Pacific -.A Masters level education and appetite for travel combine to make Andrew an incredible aviation brain with decades of insight behind him. Andrew’s first-hand knowledge of the challenges and opportunities facing Australian airlines adds exciting depth and color to his work. Andrew is based in Sydney.


2022年6月15日水曜日

航空機インテリアエキスポAIXで見つけたクールな展示5点

 



クトーバーフェスト同様に航空機インテリアエキスポAIXが2年ぶりに復活した。

Photo: Panasonic


ハンブルクでAIX航空機インテリアエキスポが開催される。素材からシート、スクリーン、OEMまで、あらゆるものが一堂に会する展示会で非常に革新的なアイデア数点を見つけた。

会場には何百ものブースがあり、すべてを見ることはできないが、シンプルフライングチームが見たクールな展示5点をご紹介する(順位は関係ありません)。

フィンエアーの新型シート

フィンランドのフラッグキャリア、フィンエアーは、エアバスA330とエアバスA350の新しいビジネスクラスシートを発表したところだ。シートは、リクライニング機能を備えないという点で、かなり革新的だ。シンプルフライングチームはこのシートの快適さに頭を悩ませていた。

フィンエアーの新しいビジネスクラス、エアバスA330のシート。写真 Tom Boon - シンプルフライング

このシートはすでに供用中だが、ショーでその座り心地を初めて体験し、エアバスA330のバージョンを試した。ロンドンへの短距離飛行や大陸横断飛行で、このシートに座れたら幸せになりそうだ。

レカロがトレイテーブルを再発明

シートメーカーのレカロは、新しいトレイテーブルのデザインに取り組んでいる。前の座席から折りたたむのではなく、必要な用途に応じたトレイを乗客に配り差し込むデザインだ。

レカロはトレイテーブルの新しいコンセプトを予告した。写真 Tom Boon - シンプルフライング

このデザインは非常にクールで、合理的と見たが、コンセプトにはまだ短所がある。シンプルフライング読者のコンセンサスは、概して否定的だった。

サステイナビリティは、エンジン排気ガス以外にもある


サステナビリティは、航空業界全体のホットトピックで、今年のショーの中心テーマでもある。しかし、サステナビリティは、航空機エンジンの排気ガスだけを指すのではない。



ELeatherの顧客であるWizz Air向け製品。写真 ELeather


廃棄された革を製品化し航空会社やその他の関係者に販売するのが英企業、ELeatherだ。同社は、アメリカン、デルタ、イージージェット、KLMオランダ、サウスウエストなどの航空会社を顧客としている。同社は2011年以来、7996トンの革をリサイクルしており、以下主張している。

「航空機の内装にELeatherを使用することで、離陸時の燃料消費を抑え、年間最大1万ドルの節約になる(ナローボディ機1機あたり、従来のレザーと比較して)」。



COVIDは懸念材料のまま

ありがたいことに、多くの国がCOVID19関連の渡航制限を撤廃し、渡航を希望する乗客が大幅に増えている。これは航空業界にとっては朗報だが、マスク着用義務や検査規則を取りやめたことで、ウイルスは簡単に航空機内に侵入できるようになっている。

この箱は、機内でのCOVID-19蔓延を食い止めるのに役立つ。写真:Tom Boon Tom Boon - シンプルフライング

COVID-19はすぐに消える問題ではないと見て、Pexco AerospaceはAirshieldという製品を作った。この製品は、機内の空気の流れを改善するために設計されたプラグ・アンド・プレイ・ソリューションだ。

パナソニックの新しいIFEスクリーン

この日の大きな発表のひとつが、パナソニックが発表した新しい機内エンターテインメント・スクリーンだ。有機EL技術で、鮮やかな色彩とリアルな黒を提供しつつ、驚くほどスリムになっている。

底面の交換だけで簡単にアップグレードできる。写真:パナソニック 

このスクリーンでクールなのは、簡単にアップデートできることだ。ディスプレイを披露したプロダクト&ポートフォリオ開発担当副社長のアンディ・マソンは、現在スクリーンはUSB-CとBluetooth 5の機能を備えているが、コントロールと接続パネルをスライドさせれば簡単に外れ、アップグレードした技術の新しいパネルを取り付けることが可能だと明らかにした。これにより、航空会社がIFEをアップグレードするコストと工数を軽減し、スクリーンが長く使用できるようになる。■

5 Cool Things We Saw At The Aircraft Interior Expo (AIX)

BY

TOM BOON


ご存知でしたか?空港で紛失した手荷物を購入できます(SimpleFlying)―鉄道遺失物販売と規模がちがいます。ロストバゲージが日本では少ないのならこのビジネスは成り立ちませんね

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