ダイナミックプライシングで航空業界、利用客双方が恩恵を受ける。その推進役はデータでありAIだ。

 



この価格モデルは柔軟性を提供する一方で、その利点については多くの議論がある。


空会社は収益の最大化を目指し、ダイナミックプライシングが航空業界に浸透しつつある。このトレンドを全員が歓迎しているわけではないが、市場関係者は、乗客と航空会社双方に利益をもたらすと言う。

航空会社は乗客をよく理解しており、ダイナミックプライシングはその知識を活用するものだ。

 ダイナミックプライシングとは、市場状況を反映して、製品やサービスの価格を変化させる取り組みだ。一般のビジネスでは、需要が高まったときに価格を上げることがある。例えば、Uberは移動需要のピーク時に価格を上げることがある。



 航空業界では、利用客で分かっていること、あるいは分かっていると思われることに基づき、運賃を提示するプロセスになってきた。航空会社はデータ収集の達人だ。マイレージのデータを収集し、クッキーでユーザーの検索内容や興味を追跡する。

 機内で飲み物を買ったアメリカン・エキスプレスの情報を渡したり、航空会社のワインショップでワインのケースを買えば、その航空会社は客の飲み物の好みを把握できる。このように何百、何千もの行動が追跡され、それが積み重なっていく。

 ブラウザをクリーンアップし、ブリティッシュ・エアウェイズ(または他の航空会社のウェブサイト)のウェブサイトにログインすると、次のようなメッセージがポップアップ表示される。

 「ba.comを使い続けることで、あなたはウェブサイトの利用規約と、ウェブサイトと当社のサービスを使用する際のクッキーの使用に同意することになります。また、記載されている範囲内で、あなたが同意することになる個人データの処理ついての当社プライバシーポリシーもお読みください」。

 航空会社は乗客について多くを知っている。利用客は、プライバシーの戦いにほとんど負けたか、降伏している状況だ。現在、多くの航空会社がデータを活用し、収益を上げる使い方を学んでいる。個々の乗客のレベルで、ダイナミックプライシングは、次の日曜日にマドリードからヒースローまで飛ぶために、乗客がいくら払うかを判断しようとするものだ。


ある日ある時間の航空移動に乗客はいくら支払うのか。


デジタルコマースプラットフォームPROSのプロダクトマネジメント担当ディレクターであるジャスティン・ジャンダーJustin Janderは、航空会社は粘りあるエンドツーエンドの乗客の旅を実現するため、これまで以上に努力していると語る。方法のひとつに、人工知能(AI)を使い乗客の過去の行動から学習することがある。航空会社は、乗客の次の行動、つまり航空券にいくら支払う気があるのかを予測ができる。

ジャンダーは次のように述べています。

 「ダイナミックプライシングでは、固定価格帯の運賃クラスの壁を航空会社が破ることができるため、航空業界と非常に関係が深い。例えば、100ドルと200ドルの2種類の運賃があったとします。150ドルを支払っていいとする乗客がいて、航空会社が100ドルの運賃を提供すれば、50ドルの収入増を失います。あるいは、200ドルの運賃を提示すれば、150ドルの収入全額を失うことになります。最適な価格帯を見極める柔軟性がで、航空会社はより効果的に収益を上げることができるのです」。

 航空会社が幅広い季節要因で運賃を調整していることがわかっている。また、ある都市で大きなイベント、例えばサッカーの決勝戦が開催される場合、航空会社が特定の時間帯に特定の目的地への運賃を調整することも知っています。同様に、航空会社は旅行需要を喚起するため、オフピーク時間帯に運賃を下げる。ダイナミック・プライシングはこれを、より細かく、個々の乗客のレベルにまで拡大する。

 アマデウスなどの業界大手は、価格設定の最適化につながるサービスを提供している。航空会社がより良い販売を行い、より多くの収入が得られると強調している。顧客選択モデリング、継続的な価格設定、差別化されたリテーリング、これらすべてが一体となって、「座席あたりの利益を最大化し、顧客への訴求を広げる」ことができる。

ダイナミックプライシングは乗客のためになる

ジャンダーは、ダイナミックプライシングは航空会社だけでなく、乗客にも有効だと言う。基本のレベルで、ダイナミックプライシングの仕組みと適用方法を学ぶことができる。マイレージプログラムやホテルロイヤリティ、ショッピングプログラムの仕組みだ。ダイナミックプライシングの基本を理解すれば、乗客はダイナミックプライシングを有利に運用できる可能性がある。

 「新規顧客の獲得には、顧客を維持するよりコストがかかる」「航空会社が既存顧客との関係を深めることを優先するのは、理にかなっている。特定の航空会社のブランドロイヤルカスタマーの乗客にとっては、航空会社が活用し、好みを理解できるAIに基づき、パーソナライズされたフライトパッケージを受け取るメリットがあります」。

 ダイナミックプライシングが今後も続くことに同意する航空会社関係者が多い。AIが賢くなるにつれ、ダイナミックプライシングも賢くなる。ダイナミックプライシングは、さらに繊細になり、不格好なアルゴリズムに左右されなくなる。買い手と売り手の間には、これまでも、これからも緊張関係は続く。航空業界でのダイナミックプライシングで緊張感を取り除けないだろう。しかし、時間の経過とともに、ダイナミックプライシングは、航空会社と乗客の双方が満足できる中央値価格を設定する技術を磨いていく。■


Passengers Learn To Adapt As Airlines Adopt Dynamic Pricing

BY

ANDREW CURRAN


About The Author

Andrew Curran (2494 Articles Published)

Lead Journalist - Southwest Pacific -.A Masters level education and appetite for travel combine to make Andrew an incredible aviation brain with decades of insight behind him. Andrew’s first-hand knowledge of the challenges and opportunities facing Australian airlines adds exciting depth and color to his work. Andrew is based in Sydney.


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