2024年8月31日土曜日

エアラインが画期的な新型機を受け入れる時が近づいている。BWB機導入で民間航空はどこまで変貌する? (Forbes)

V-2G6UAa

アラスカ航空のカラーリングが施されたJetZero Blended Wing Bodyデザイン。アラスカ航空、JetZero 


ラスカエアラインズのベンチャー部門はジェットゼロJetZeroによるBlended Wing Body機への投資を8月初め発表した。出資条件や購入オプションは明らかにされなかったが、アラスカはこのような動きをする最初の民間航空会社となり、業界筋によれば、さらに多くのエアラインも購入オプションを真剣に検討しているという。 

 ブレンデッド・ウィング・ボディ(BWB)は1920年代からあるコンセプトで、翼と胴体間に明確な区分がない空気力学的な形状が特徴である。BWBは、前世紀からの伝統的なチューブと主翼による機体構成と異なり、抗力を大幅に減少させ、燃料燃焼とそれに伴う排出ガスを大幅に改善する。 

 航空業界は、温室効果ガスへの貢献とそれが背負う環境負荷を痛感している。ロッキーマウンテン研究所によれば、航空旅行は二酸化炭素排出量の約2.5%を占めており、全体的な割合は小さいものの、将来的に他の産業が改善されれば、割合は相対的に大きくなる。さらに、排出物は大気圏の高高度で発生するため、飛行機雲が発生し、これも地球温暖化に大きく寄与していると考えられている。 

 航空機業界は、炭素燃料からの脱却、あるいは炭素燃料の影響の軽減に懸命に取り組んでいる。こうした取り組みには、水素燃料や持続可能な航空燃料(SAF)の利用が含まれる。水素燃料機は実証実験モードで飛行しているが、大型民間航空機に広く採用されるまでには何年もかかると考えられている。同様に、SAF(廃油や植物由来の原料などのバイオソースを使用)は、精製と輸送に膨大なインフラが必要である。 

 したがって、BWB機の近い将来の実現可能性は、2050年までにネット・ゼロ・エミッションを達成する業界の目標での直接的な解決策を約束する。ジェットゼロは、同社の航空機設計は燃料消費(および炭素排出)を50%削減すると述べている。国際航空運送協会によれば、現在の価格の燃料は航空会社の運航コストの約25%を占め、中南米では36%にも達するので、BWBでは運航コスト全体の12.5%から18%の改善に相当する。

 一般的に、メーカーは新型機導入の検討で、直接的な運航コストを15~20%改善することを目標とする。この経験則は、新型機を市場に投入する投資と導入コストを考慮したもので、大型民間機では2004年のボーイング787以来、成功していない。 

 BWBアプローチの潜在的価値を考えるもう一つの方法は、航空会社の利益への影響である。マッキンゼー・アンド・カンパニーによると、2017年から2019年(パンデミック前)の米国の航空会社の平均営業利益は7.0%だった。ヨーロッパや南米の航空会社は3.2%と半分以下だった。燃料費削減で12.5%以上の上乗せがあれば、収益性は飛躍的に向上し、採用の動機付けとなる可能性がある。 

 このため、ジェットゼロは新型機の組立工場の立地選定を検討し、シリーズBラウンドの投資を進めている。同社は、戦略的投資家および主要サプライヤーとしてノースロップ・グラマンを挙げており、ノースロップの子会社スケールド・コンポジッツがプロトタイプの製造と組み立てを行っている。エンジニアリングの専門知識とプロジェクトサポートに加えて、ノースロップは軍事用途でプライムサプライヤーとなる。

Blended-Wing-Body-Aircraft-Hero

Rendering of Blending Wing Body prototype for US Air Force applications.US Air Force, Northrop Grumman, JetZero

 2023年8月、米空軍はノースロップとジェットゼロに2億3500万ドルの契約を結び、空軍の年間ジェット燃料消費量の60%を占める貨物、空中給油、軍用輸送に使用可能な試作機を設計した。特定はされていないが、中央翼/胴体の面積が大きいため、従来のチューブと主翼の航空機では大きな課題となる水素貯蔵に適応した設計になる可能性もある。 

 BWB機の内部面積は、管状の胴体では得られない適応性のあるユニークな特徴となるとジェットゼロも強調している。ジェットゼロは、200~250人乗り機体を目標としている。これは、生産を終了したボーイング757にほぼ匹敵するサイズだが、757は大陸横断の航続距離と路線の柔軟性から、現在も現役で使用されている。この中型機は、ボーイングが757型機の穴を埋め、737型機より大型のエアバスA-321型機の成功を阻止しようと何度も試みてきたものだ。 

 この設計のフットプリントを考えると、乗客は12列から16列で劇場のような配置に座ることになり、降機やターン時間が短縮され、個々に専用オーバーヘッドビンが設置される利点もある。一時は、機体がバンクした際に機外側の座席の乗客に大きな回転モーメントがかかることが懸念されたが、現在では、A380やB777のような大型機と同じ力よりも大きくないことが示されている。同様に、ウィンドウポートを提供するための筒状の胴体の垂直方向の側面がない代わりに、翼端カメラやその他の視点からの外部の景色を電子的に表示するようになる。

 最後に、ジェットゼロは、エンジンを主翼上に配置することで、パイロン上にエンジンがある場合と比較して、地上への騒音の伝播を4倍も遮蔽できるとしている。 

 材料科学、計算機設計、エンジニアリング、製造技術における進歩が、BWBを現実の一歩手前まで押し進めてきた。ジェットゼロは、規制やインフラ整備の課題に直面するeVTOL(電動垂直離着陸)機などの他の概念的アプローチに対し、環境と産業の能力ニーズに対応するBWB機の即応性を強調している。 

 しかし、航空宇宙における新しいアプローチ(eVTOL、小型宇宙ロケット、超音速民間航空機)のほとんどは、技術的に実行可能だが、その挫折は大きな影響を与える。億万長者ロバート・バスが2004年に設立したエアリオンは、10人乗りの超音速ジェット機の開発に成功した。オーランド空港に3億7500万ドルの生産施設を建設すると発表し、93機分の112億ドルの受注残を抱えていたが、2021年5月に突然操業を停止した。その理由は、航空機の認証と生産開始に必要な40億ドルの大半を調達できなかったからだ。 

 ジェットゼロはエアリオンよりはるかに大きな市場を狙い、ノースロップ・グラマンという産業パートナーもいる。しかし、新しい航空機でボーイング・エアバスの独占に食い込むのは容易ではない。ボーイング、エアバス両社ともこのコンセプトを研究しており、エンブラエルは常に、ボーイングとエアバスが提供する製品の中核に入り込むことを避けてきた。 

 しかし、ボーイングは多くの課題を抱えて崖っぷちに立たされており、エアバスは今のところ有利な立場にある。中国は西側諸国が自国の航空機を受け入れるまで数十年が必要な中で、新しい急進的選択肢に可能性が開かれたといえよう。■


  • Has The Time Finally Come For This Sci-Fi Looking Aircraft?

  • Jerrold LundquistContributor

  • Aug 29, 2024,12:13pm EDT Updated Aug 29, 2024, 01:50pm EDT

https://www.forbes.com/sites/jerroldlundquist/2024/08/29/has-the-time-finally-come-for-this-sci-fi-looking-aircraft/?ss=aerospace-defense


2024年8月30日金曜日

世界最大のダラス・フォートワース国際空港が50年ぶりの大幅改修へ―アメリカン・エアラインズの使うターミナルCが大幅に変身する

 


An overview of Dallas/Forth Worth International Airport (DFW)


全米最大級の空港が、50年前の開港以来で初の大規模な改修計画に着手した。テキサス州北部にあるダラス・フォートワース国際空港(DFW)は、空港での体験を向上させることを目的としたプロジェクトが目白押しの中、新ターミナルでデザインを一新する。

 

ターミナルCの変貌  空港改善プログラムでは、1974年の開港以来最も大規模な設備投資の一環として、ターミナルの変貌、新施設の追加、ゲート数の増加、道路と接続の改善、飛行場のアップグレードが行われる。約90億ドルの「DFWフォワード」大規模改善計画の第一段階は、アメリカン航空が使用するターミナルCの全面改修だ。


 3期にわたるプロジェクトは、2029年に完了する。このプロジェクトは、同空港が「最も混雑し、最も老朽化したターミナル」と呼ぶ、30億ドル規模のターミナルを完全に生まれ変わらせる。その結果、自然光に満ちたモダンで広々とした体験ができるようになる。これは、視界を遮っている柱400本以上を取り除き、屋根を高くし、新しいダイナミックなガラス窓を設置する全面的な改装のおかげだ。DFWの最高経営責任者(CEO)であるショーン・ドノヒューは、このプロジェクトが空港にとっていかに重要であるかを次のように述べた。「世界で最も忙しい空港のひとつを運営し続けるためには、複雑で、挑戦的で、インパクトのあるものになるでしょう」。


 第1フェーズで導入されるその他機能には、リニューアルされたショップやレストラン、ラウンジスペース、チェックインエリア、保安検査場、改良されたトイレなどがある。 しかし、まだある。 総予算90億ドルのこのプロジェクトでアップグレードされる施設は、ターミナルCだけではない。ターミナルCとターミナルAのピア拡張工事は、ターミナルCの改築第一段階と同時に進められている。この拡張工事により、ターミナルCには115,000平方フィートと4つのゲートが、ターミナルAには140,000平方フィートと5つのゲートが追加される。

 この2つの拡張工事により、レストラン、小売店、座席エリア、トイレのスペースも増える。エリック・L・ジョンソン・ダラス市長は、このプロジェクトが世界で最も忙しい空港をいかに改善するかを強調した。「この記念碑的な拡張工事は、ダラスの最大の資産のひとつを強化し、わが国と世界とのよりダイナミックなつながりを促進します」。

 次の拡張フェーズでは、ターミナルCで残る部分を完全に取り壊し、再構築する。この2段階プロセスにより、特定のエリアが大規模な工事に入る間、施設の一部で運航を継続することができる。新施設の最終仕上げは2030年に完了する。 

 ターミナルCに隣接する南側駐車場は、旅客数増加に対応するため、駐車場の増設と最新の駐車場管理技術を導入し、全面的に建て替えられる。駐車場は9月14日に閉鎖され、今年後半に完全に取り壊される。乗客は引き続き北駐車場と中央駐車場に駐車でき、事前に駐車スペースの空き状況を確認することができる。

 フォートワースのマティー・パーカー市長は、今回の改良が同空港の世界的ハブ空港としての地位維持にどのように役立つかを次のように語った。「DFW空港がこの最新の変革に着手するにあたり、私たちは、DFWメトロプレックスが急速に成長し続ける中で、これらの進歩がどのように旅行体験をさらに向上させ、世界との結びつきを強めるかを見ることに興奮しています。 

 「ターミナルCの再改装は、DFW空港がトップクラスの航空ハブ空港としての地位を維持するための重要な前進です。我々は、この成長をサポートすることに全力を注いでおり、旅行者とこの地域に新たな機会と利益をもたらすことを楽しみにしています」。


DFWはさらに先へ進む 改善計画全体には、空港の広大な飛行場、ターミナル、道路システム全体に広がる、計画、開発、建設の180以上のプロジェクトが含まれる。第6ターミナルFには15のゲートとスカイリンク・ステーションが設置される。また、インターナショナル・パークウェイ近代化プロジェクトでは、ターミナルA、B、Cへのアクセスを右側出口に移行する。

 今年アップグレードが行われるテキサス州北部の空港はDFWだけではない。近隣のダラス・ラブ・フィールド(DAL)でも、滑走路の1本が改良され、誘導路A側に新しい排水インフラが設置されるなど、独自の変貌を遂げている。


Dallas/Fort Worth International Airport Breaks Ground On $9 Billion Worth Of Improvements

By 

Jonathan E. Hendry

https://simpleflying.com/dfw-airport-9-billion-improvements/



2024年8月24日土曜日

貨物専用のアトラスがリース747-8Fを第3四半期後半に3機導入し、747フリートを68機に拡大



米アトラス・エアがボーイング747-8貨物機を3機導入する


ニューヨークを拠点とするアトラス・エアは8月22日、リース元BOCアビエーションとの長期リース契約で確保した747型3機が、「第3四半期後半から」運航を開始する予定であると発表した。


アトラス・エア・ワールドワイド・ホールディングスのマイケル・スティーン最高経営責任者(CEO)は、「アトラスは747型貨物機を運航する世界最大の航空会社で、今年初めに取得した4機の747-400Fに続き、追加3機の747-8Fで当社のワイドボディ・フリートを拡大できることを大変嬉しく思っています」と述べた。


Atlas Air 747-8F

Source: Atlas Air Worldwide Holdings


スティーンは、アトラスは747の積載量と「ユニークなノーズローディング機能」を高く評価していると付け加えた。


アトラスは747-8F 17機を含む747を65機保有している。


アトラスによると、747-8Fは「市場最大のペイロード容量」を提供し、「747-400Fに比べてペイロード容量が20%増加し、777-200LRFに比べ25%容量が増加した」という。  


「大型ワイドボディ貨物専用機への需要は引き続き旺盛であり、当社の強力なパイプラインにより、魅力的な長期契約に基づく航空機を顧客に提供する予定です」。


2023年1月、アトラスはワシントン州エバレットにあるボーイング生産ラインから出荷された最後の747を受領した。■


https://www.flightglobal.com/fleets/atlas-expects-trio-of-leased-747-8fs-late-in-third-quarter/159685.article


2024年8月16日金曜日

アラスカエアラインズがBWB新型機にオプション契約を設定。民間航空がチューブ+主翼の形状から解放されるきっかけになるのか注目。

 



JetZero BWB in Alaska Airlines livery

A rendering of JetZero's BWB aircraft in Alaska Airlines livery.

Credit: JetZero


アラスカエアラインズは、新興企業ジェットゼロJetZeroが開発中の混合翼機(BWB)に強い関心を示した最初の民間航空会社となり、ジェットゼロに投資すると同時に、機体オプション契約を締結した。

資金提供の詳細は明らかになっていないが、2021年10月に同社が立ち上げたベンチャーキャピタル部門アラスカ・スター・ベンチャーズを通じて行われた。このベンチャーキャピタル部門は、2040年までに二酸化炭素排出量実質ゼロという目標を達成する新技術の開発推進を使命としている。

また、ジェットゼロは、同社が2023年にシリーズAの資金調達ラウンドの一環として、それまで非公開だった初期投資を募った際、アラスカエアラインズが同社支援に加わった最初の航空会社だと明らかにした。

ジェットゼロのBWBを「革新的な次世代航空機」と表現するアラスカの広報・持続可能性担当上級副社長ダイアナ・バーケット・ラコフは、同社は「燃料効率の大幅な飛躍的向上」に投資していると述べた。

ジェットゼロは、2023年に締結された2億3500万ドルの米国国防革新ユニット(DIU)契約に基づき、BWBの開発を進めている。当初は中型市場向けの民間航空機を対象としている。派生型は、米空軍の軍用輸送機/空中給油機となる可能性もある。ジェットゼロは、BWBは同クラスのチューブ翼輸送機と比較して最大50%の燃料効率の向上が実現するとしている。

実寸大のデモンストレーターは予備設計審査を最近完了し、2026年末までに完成させ、2027年に飛行試験を開始する予定です。ボーイング767の容量とエアバスA330に近い翼幅を持つデモンストレーターは、ノースロップ・グラマンおよびその試作子会社であるスケールド・コンポジットとの共同作業で製造および試験が行われる。

アラスカ航空は737を主力機として運航中だが、2025年に就航する190席の737-10型機が同社で最大のモデルとなる。しかし、同社では将来的に、より座席数の多い航空機が必要になると広く予想される。また、アラスカは、数日中に発表予定の米司法省による承認が得られれば、ハワイアンエアラインズとの合併により、間接的にワイドボディ機の運航にも参入することになる。

ハワイアンは、合併が承認されればアラスカの完全子会社となる予定であり、現在、エアバスA321neo、278席のA330-200、最大300席の787-9を運航している。アラスカがどのBWBバージョンにオプションを付けたのか詳細は不明だが、ジェットゼロのZ4モデルは、170人から290人の乗客を収容できるサイズだ。残りのファミリーには、100人から170人乗りのZ3モデルと、290人から370人乗りのZ5モデルの2つの派生モデルがある。■

Alaska Airlines Takes Options On JetZero’s Blended Wing Body

Guy Norris August 13, 2024

https://aviationweek.com/aerospace/emerging-technologies/alaska-airlines-takes-options-jetzeros-blended-wing-body


2024年8月14日水曜日

海外の航空会社が中国路線を削減し続ける一方で、中国系航空会社は海外路線を拡大している

 




  • 需要低迷やロシア領空の閉鎖などの要因により、国際航空会社が中国へのフライトを削減している

  • ブリティッシュ・エアウェイズとヴァージン・アトランティックは、長年就航してきた中国路線を廃止した

  • 欧米エアラインが減便する中、中国の航空会社は海外進出を増やしている


最近、国際航空会社数社からの中国路線の削減の発表が相次いでいる。かつて世界の航空会社にとって非常に有望な市場であった中国市場は、魅力を失いつつあるようだ。


中国路線を削減する航空会社の最近の例としては、今春、中国の2都市への運航を休止したシンガポールエアラインズや、シドニー=北京直行便を今夏休止したオーストラリアのカンタスが挙げられる。


欧米の航空会社も中国路線を縮小している。ブリティッシュ・エアウェイズは2024年10月下旬に北京便を終了すると発表し、ヴァージン・アトランティックは25年間運航してきた英国-上海線の廃止を決定した。アメリカの航空会社では、ユナイテッドエアラインズのみが中国の首都に直行している。



要因

中国への就航を中止した海外の航空会社にはそれぞれ理由がある。海外の航空会社は、中国への旅行需要の低迷、政治的緊張、コストの上昇、ロシアの領空閉鎖、COVID-19パンデミック後の需要回復の遅れなど、複数の要因を理由に挙げている。


中国へのネットワーク削減に関する最新のアップデートには、ブリティッシュ・エアウェイズが関わっている。数十年にわたり中国の首都に就航してきた同社は、10月末をもってロンドン・ヒースロー-北京間の全便を運休する。この路線は、COVIDにより3年以上ぶりに2023年6月に復活させたもので、ボーイング777-200ERで運航されていた。同社は削減の詳細な説明はしていないが、ウクライナ戦争後のロシア領空を避ける必要性と旅行需要の低迷が主な要因であると思われる。


ブリティッシュ・エアウェイズが中国路線を削減するというニュースは、ヴァージン・アトランティッがヒースロー(LHR)-上海浦東(PVG)線の運休を発表した直後に飛び込んできた。この路線の運休は、ロシア領空を通過できないことによる複雑さが理由とされている。


中国とアメリカの接続に関して言えば、中国の首都とアメリカを結ぶ直行便があまりに少ないのは驚きだ。さらに驚くべきことに、現在北京に就航している米国の航空会社はユナイテッド航空だけということだ。


Ciriumのデータによると、2024年8月、北京とアメリカを結ぶ6路線を運航する予定の航空会社は、エアチャイナ、海南航空、ユナイテッド航空の3社のみである。


両国間のフライトが限られているのは、政治的な理由もある。2024年3月、アメリカ政府は中国の航空会社の1週間のフライト制限を35便から50便に引き上げた。これは増加ではあるが、パンデミック前に許可されていた150便に比べればはるかに少ない。にもかかわらず、ロイターの報道によれば、アメリカの航空会社は週に35便しか往復便を運航していない。


中国の航空会社は海外路線を拡大中

外国の航空会社が中国へのフライトを減らす中、中国の航空会社が国際市場で地歩を固めつつある。この変化は、欧米の航空会社がロシア領空を通過できないのに対し、中国の航空会社は可能であることが一因となっている。


この利点が中国の航空会社のコストを下げ、国際市場でより大きなシェアを獲得することを可能にしているとOAGのシニアアナリスト、ジョン・グラントは、ロイターに語った。■


Why International Airlines Continue To Cut China Flights

By 

Vyte Klisauskaite


https://simpleflying.com/profile/premium/


中国のC919が欧州連合で型式証明を受ける日が近づいている

 China Eastern Airlines COMAC C919 landing shutterstock_2453943949

Photo: Markus Mainka | Shutterstock


  • 欧州連合航空安全局(EASA)がC919の認証評価のためCOMACを訪問し続けている

  • これまでC919の国際的な露出は限られている 

  • 欧米の航空会社にはC919はリスクが多すぎるかもしれない 


ComacのC919が欧州連合(EU)での認証に近づいている


 EU規制当局は、C919を評価するため、中国当局への訪問を重ねている。4回にわたる訪問のうち3回目では「好意的なフィードバック」が得られ、規制当局がその内容を気に入っていることが示唆された。 

 この件に詳しい情報筋を引用したサウスチャイナ・モーニング・ポスト紙(SCMP)によると、EU航空安全局(EASA)の代表が中国・上海にあるCOMACの施設を訪問した。

 SCMPは、EU規制当局の代表が航空機について好意的な感想を述べたと付け加えた。この訪問には、エアバスA320neoやボーイング737 Maxの競合機であるC919のフルフライトシミュレーター内でのセッションも含まれていた。 EASAの代表者はまた、航空機を検査するためにC919に搭乗し、コックピットやキャビンで何時間も過ごした。

 C919型機は定評のあるA320型機や737型機と競合を目指している。

  これは、EASAの4ラウンドの検査手順のうち、3番目で最も重要な段階であり、構造から電気システムに至るまで、製品が規制要件に適合しているかどうかを確認するものである。

 航空機が認証を取得するまでの道のりは長いが、「肯定的なフィードバック」は、EASAからの「合格」であったことを示唆している。

 中国メディアは、2025年までにヨーロッパで認証されることを期待していると報じているが、EASAは今年初め、同機の認証には「時期尚早」と述べた。


COMAC C919を欧米で見ることはできるのか? 

 今週、中国南方航空のパイロット8名が、COMAC C919の最初の訓練を終えた。同機は今年8月に同社に引き渡される。同機は中国国内での定番機であり続けるだろうが、欧米の航空会社の機体にも同機が導入される可能性はあるのだろうか?ライアンエアーのCEOは、このジェット機の製造は「エアバスとボーイングの受注を弱め」、競争を生み出すので、欧米にとっては良いことだと話している。

 しかし、アジア以外の国からの注文という点では、ヨーロッパやアメリカで認証されるまでに長い時間がかかるかもしれない。だから、すぐに多くの注文があるとは思えない。


国際的な露出は最小限のままだ 

 これまでのところ、中国民用航空局(CAAC)のみがC919を認証しており、同機は中国国内でのフライトに限定されている。 C919は、2023年12月の香港でのデモフライトや2月のシンガポール・エアショーなど、中国国外にも登場している。


写真Aerospace Trek | Shutterstock 

 6月1日、中国東方航空は上海虹橋国際空港(SHA)から香港国際空港(HKG)への往復旅程をC919で運航した。 このフライトはMU7191とMU7192のフライトコードで運航されたが、このフライトコードが再び使用されることはなかった。B-919Fとして登録された同機はその後、中国国内線のみの運航となっている。


Route map of China Eastern Airlines COMAC C919 aircraft in August

Photo: Great Circle Mapper


 航空分析会社Ciriumのデータによると、中国東方航空は8月、広州白雲国際空港(CAN)、北京大興国際空港(PKX)、上海虹橋国際空港(SHA)、成都天府国際空港(TFU)、西安咸陽国際空港(XIY)の5都市にC919型機によるフライトを予定している。 同航空はC919型機による週154便の旅程を予定しており、これは週24,948席、利用可能座席キロ(ASK)3,280万キロに相当する。

 中国東方航空は6機目となるCOMAC C919型機を受領し、現在も同型機を運航する世界で唯一の航空会社のままだ。 


欧米は潜在的市場になれるか? 

 ライアンエアーのマイケル・オレアリー氏は、C919を排除するものではないと明言しているが、ヨーロッパの航空会社はC919に興味を示していない。

 C919のエンジンは、GEエアロスペースとサフラン・エアクラフト・エンジンズの合弁会社であるCFMインターナショナルが製造した。タイヤ会社のミシュラン、コリンズ・エアロスペース、ハネウェルなど、欧米企業が同機にその他の部品を供給している。


写真:COMAC

 COMACは現在、この協力体制が機能しているが、地政学的状況は緊迫している。連邦規則集(CFR)タイトル15の補足によると、米国は、米国企業が物品を販売する際に特定のライセンスを必要とする中国企業を特定している。 COMACはまだ含まれていないが、ウクライナでの紛争が激化した場合(米国はすでに、ウクライナへの不法侵攻でロシアの戦争活動を支援したとして中国企業に制裁を科している)、あるいは台湾で、新型ナローボディ製造のための部品が突然不足する可能性がある。■


COMAC C919 Inches Closer To EU Certification With EASA Favorable Facility Audit


https://simpleflying.com/c919-eu-certification-comac-favorable-audit-easa/


2024年8月11日日曜日

ボーイングにとって最悪の年―最大労組は大幅賃上げと待遇改善、取締役会参加を求め、ストも辞さない構え。技術より財務を重視してきた長年の経営判断のツケを支払うのか。

 


US-AVIATION-LABOUR-UNIONS-BOEING (Photo by Jason Redmond / AFP) (Photo by JASON REDMOND/AFP via Getty Images)

Boeing workers hold signs at a strike-sanction vote event at T-Mobile Park in Seattle on July 17.JASON REDMOND/AFP/Getty Images


ボーイングの労働者を代表する機械工組合の地方支部ホールデン会長は、「今年がボーイングにとって最悪の年になりそうだ」と語った


営難に陥ったボーイングは、新労働契約とあわせ会社運営にこれまで以上の発言権を求めている最大労組との不利な対峙に向かうかもしれない。

 ボーイングの機械工組合は組合員にストライキに備えて資金を確保するよう2019年以来促してきた。ストライキが必要かどうかを決める交渉が月曜日に本格化する。

 ボーイング経営陣と、ワシントン州でボーイング機を組み立てる32,000人を代表する同社最大の国際機械工組合は、現行契約が切れる9月12日より前に、2008年以来初となる新契約を打ち出すため、シアトル近郊のホテルにチェックインする。

 業界オブザーバーは、双方が行き詰まり、ストライキに向かうと考えている。1月に起きたアラスカ航空737マックスのパネルが空中分解した事故を受け、政府はボーイングの製造に対する監視を強め、ボーイングの生産は急減速している。長期の作業停止は、ボーイングが資金流出を食い止めるためどうしても必要な、機材納入を頓挫させる可能性がある。ボーイングの新CEOケリー・オートバーグ Kelly Ortbergがこの状況にどう対処するかは誰にもわからない。オートバーグは木曜日に出勤し、ボーイングと労働者、顧客、政府、一般市民との関係を修復するという高い目標を掲げた。

 米国商工会議所によれば、6月現在、米国の耐久消費財メーカーにおける仕事の35%が埋まっていない。また、組合員の長年にわたる怒りも大きい。過去10年間、ボーイング幹部はシアトル地域から職場を移転させると脅して、賃金を低迷させ、労働者の年金制度を取り上げ、医療費を労働者に転嫁する一連の契約延長を交渉してきた。

 先月、国際機械工労組ロッジ751の組合員は、シアトル・マリナーズ・スタジアムで開催された約2万人が参加した騒々しい集会で、ストを要請する権限を指導部に与えることに99.9%の賛成票を投じた。機械工組合は、3年間で40%の賃上げ、年金制度復活、強制残業廃止など、会社にとって受け入れがたい要求の長いリストを掲げている。

 しかし、IAM751のジョン・ホールデン代表は、経営陣の失策からアメリカ最大の航空宇宙企業を救うという壮大な使命を打ち出している。

 ボーイングが737マックスを顧客に引き渡すシアトル南部の飛行場近くにあるIAM751本部のウッドパネル張りの会議室で、ホールデンは本誌インタビューに答えた。「私たちはこの会社を、彼らが想像していたよりもずっと遠くへ押し進めるつもりだ」。

 これには、ボーイング取締役会への参加要求も含まれる。取締役会は製造の専門知識が欠如しており、かつては定評のあったエンジニアリングの優秀性を犠牲にしてまで財務収益を改善しようとする経営陣を承認してきたと、批評家たちは長年指摘してきた。組合はまた、品質管理検査官の数を増やす約束と、ボーイングの次期機材をシアトル地域で製造する保証を求めている。

 ボーイングは公式声明上では労働者の給与と手当の改善には前向きなようだ。退任するデビッド・カルフーン最高経営責任者(CEO)は、退任前の最後の行動となった先週の第2四半期決算に関する電話会議で、「このプロセスにおいて従業員を厚遇することを恐れてはいません。ストライキを起こされないよう、できる限り努力する」。

 しかし、労働者たちは会社の待遇に対する長年の恨みから、ストに踏み切るかもしれないと、オブザーバーたちは本誌に語った。

「ボーイングがストロベリー・アイスクリームをつけてすべて提供しない限り、彼らは出て行くだろう」と、現在の立場で公にコメントできないが、交渉に詳しい元組合員は語った。 

 本誌の質問に対し、ボーイングの広報担当者ボビー・イーガンは、「従業員のニーズと企業として直面する事業上の現実のバランスを取る取引に到達できると確信している 」と記して返答してきた。


改善計画

労働者代表は、ボーイングが現在の危機から脱却するためには、賃金と労働条件の改善が重要だと主張している。

 ボーイングは今春、連邦航空局の命令で作成した品質改善計画に基づいて、製造労働者の訓練を大幅に増やしている。ボーイングは、新しい整備士と品質検査官を対象に300時間の研修を追加し、工場現場にコーチを配備し、現行従業員の継続訓練を改善すると発表した。また、製造指示や工程の簡素化にも取り組んでいる。

 しかし、ボーイングのエンジニアと技術者16,000人を代表する航空宇宙専門技術職従業員協会の戦略開発ディレクター、リチャード・プランケットは、同社は根本的な重要問題に対処できていないと本誌に語った。「労働力を維持できなければ、訓練に何の意味もない」。

 コロナパンデミック以来、経験豊富な組立作業員を失ったことが、ボーイングを悩ませている品質問題の難題で重要な役割を担っていると、航空宇宙専門家は本誌に語っている。航空宇宙産業の組立作業員が熟練するには何年もかかると彼らは言う。そしてそれは、1960年代にさかのぼる設計に基づき、大部分が手作業で製造されている737マックスで特に重要な問題だ。

 ボーイングはかつてシアトル地域の支配的な雇用主であったが、現在はその他宇宙関連企業やハイテク企業との熟練労働力争奪戦に直面している。ボーイングの機械工の賃金は追いついておらず、同社は過去8年間、昇給を年率で半分に制限してきた、とホールデンは言う。初任給は職種によって時給16ドルから26ドルで、5年間は毎年1ドルずつ上がる(組合員が勤続6年になると、時給は23ドルから51ドルに上がる)。シアトルでの最低賃金の引き上げに伴い、ドアダッシュやインスタカートといった食品会社の配達員では現在、時給26ドルからとなっている。

 組合幹部がバンク・オブ・アメリカのアナリストに語ったところによると、パンデミック以前のIAM751では労働者の半数以上が6年以上の経験を持っていた。現在は25%以下だ。

 ボーイングでは技術者も離職しており、会社の方向性に動揺を強めていると、航空宇宙専門技術者協会の役員は語った。

 パイロット労組SPEEAによるおtボーイング従業員の平均勤続年数は、2014年の16.8年から2024年に13.5年に減少するという。SPEEAのレイ・ゴフォース事務局長は、組合員も変化を求めていると述べた。

 アラスカエアライン機事件前の1月に開かれた準備集会で、ゴフォースは本誌に、不満を持つ20代から30代組合員の出席率の高さに驚かされたと語った。

 「もっと休暇が欲しい、とか、そんな話ではなかった。この会社は間違っている、どうするつもりなんだ?というのだ」。


本質論

ボーイングは、機械工の最も重要な提案にはまだ回答していないとホールデンは言う。TDコーウェンの航空宇宙アナリスト、カイ・フォン・ルモアは、最近の顧客向けメモでこう書いている。同アナリストは、ボーイングの民間航空機部門のコストに占める労働組合の機械工の割合は5%に過ぎないと推測している。顧客との契約では、人件費が上昇した場合、機体価格を引き上げることができる条項が含まれている。

 チャールズ・エドワーズ・マネジメント・コンサルティングの航空宇宙コンサルタント、クリフ・コリアーは言う。「新しいプログラムを導入する10年後、5年後がどうなっているかわからない。「しかし、そのために100日間のストライキを行うだろうか?私はそうは思わない」。

 コリアーは、理事会代表の要求については双方が柔軟に対応できると考えている。議席が1つなら意思決定に大きな影響を与えることはないだろうから、ボーイングはそれを容認するだろう。しかし、組合にとってはマイナス面もある。取締役会に席があれば、物議を醸すような決定について、組合員が指導者に部分的な責任を押し付けるようになるかもしれない、と彼は言う。

 ボーイングは今年初め、小規模組合との契約交渉で好戦的な姿勢を示し、憂慮すべき前例を作ったと言う者がいる。春、同社は125人の内勤消防士と救急サービス労働者を3週間締め出し、5月に妥結する前に代わりの労働者を入れるという強硬手段に出た。また、航空会社とともに安全性に取り組み、パイロット訓練プログラムを開発するパイロット23人との交渉が難航した際にも、年明け早々に代替要員を投入した。

 こうした交渉におけるボーイングの行動は、過去にはなかった方法で「信じられないほど不愉快」だったと、パイロットを代表するSPEEAのゴフォースは語った。ボーイング代表は2回の会合に姿を見せなかったという。「私たちは公然と敵意をむき出しにするようになった。「それが751交渉に持ち込まれたら、うまくいくはずがない」。


US-AVIATION-LABOUR-UNIONS-BOEING


Machinist union members hold up their ballots at the strike-sanction vote.JASON REDMOND/AFP/Getty Images


 ボーイングはパイロットと消防士との交渉で最終的に譲歩した。パイロットは年間2万ドルの賃上げを得た。バイデン大統領がツイートでボーイングに交渉のテーブルに戻り、消防士たちに「彼らにふさわしい給与と手当」を与えるよう呼びかけた後、同社は組合が「勝利」と評価する賃金の改善を提示した。


 フォン・ルモアは、機械工は1989年から2008年の間に4回、平均40日間のストライキを行ったと指摘した。


資金難

ストはボーイングの資金繰りの危機を悪化させる。同社はパンデミック以来、ベストセラー機737マックスの生産率を上げ、2019年からの年間赤字に終止符を打つべく奮闘してきた。航空会社は通常、納入時に購入価格の65%から70%を支払う。

 同社は、6月と7月に25機だった737を月産機数を年末までに38機に増産する目標を掲げている。バンク・オブ・アメリカのアナリスト、ロン・エプスタインは、ストライキが起こる可能性が高く、月産38機への増産は1年遅れ、2025年末になると考えている。

 経営難に陥っている防衛部門の見通しの悪化と相まって、エプスタインは、ボーイングは今年100億ドルの現金を消費し、2025年には70億ドルから80億ドルの株式発行を迫られ、日々の必要を賄うのに十分な現金が確保されると見ている。

 ストライキに関連した生産上の混乱は、ボーイングの信用格付けにも脅威を与える可能性がある。S&Pは先週、ボーイングが今年後半に生産と納入増強に失敗した場合、格下げの可能性があると警告した。格付けがジャンクになれば、ボーイングの借入コストはさらに上昇する。

 ボーイングの財務状況が組合の交渉姿勢に影響を与えないとホールデンは述べている。また、経営陣がパイロットや消防士との交渉で行った乱暴なアプローチを取っても、組合は動じないようだ。「会社が険悪な態度になっても気にしない。こちらには影響力がある。それを行使し、押し進める」。■


Boeing’s Bad Year Is About To Get Worse

Updated Aug 9, 2024, 10:34am EDT

By Jeremy Bogaisky, Forbes Staff


https://www.forbes.com/sites/jeremybogaisky/2024/08/09/boeings-bad-year-is-about-to-get-worse/?ss=aerospace-defense


ご存知でしたか?空港で紛失した手荷物を購入できます(SimpleFlying)―鉄道遺失物販売と規模がちがいます。ロストバゲージが日本では少ないのならこのビジネスは成り立ちませんね

  Gemini. 空 港を利用して旅行し、荷物の大規模な移動を目の当たりにすると、「紛失した荷物はどうなるのか」という疑問が生じませんか。この疑問は2023年の記事で扱いましたが、SITAのような企業や彼らのWorldTracerサービスが、乗客と荷物を自動的に再会させるために...