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航空宇宙産業のサプライチェーンは、ウクライナ紛争でロシア制裁が課される前からぎくしゃくしていいた。ロシアからのチタン供給が閉められた今、ボーイングとエアバスはチタンをロシアに大きく依存してきたが、他の市場からの調達をめざす。
エアバスとボーイングは、2022年以降の増産を目指しており、必要なチタンの確保が、最重要課題となっている。
エアバスとサフランは独自にチタンのサプライチェーンを確保
ボーイングはロシアに依存せずニーズが満たせるとしている。フランス政府の支援を受け、エアバスはエンジンOEMのサフランSafran、プライベート・エクイティ企業のティケハウ・エース・キャピタルTikehau Ace Capitalと提携し、チタンなど専門金属と超合金のフランスのサプライヤー、オーベル&デュバルAubert & Duvalを買収し、サプライチェーンの保護を狙っている。
オーベール&デュバルは、航空宇宙、防衛、原子力、医療機器などの分野への戦略的サプライヤーで、年間売上は約5億ユーロ(5億4900万ドル)、従業員は3600人。航空宇宙分野製品は、航空構造物、着陸装置、航空機エンジン、ヘリコプター、宇宙船などの一部を構成する。エアバスのギョーム・フォリーCEOは、次の声明を発表した。
「我々は、オーベール&デュバルの優れた経営と市場の信頼を回復し、中長期的に、グローバルな競争に立ち向かえる有力企業を欧州で創出するとともに、供給への地政学的リスクを軽減することをめざす」
オーベル&デュバルは、合金の基本となる純粋なチタンであるスポンジチタン生産に加え、チタンスクラップを航空宇宙品質のインゴットに再生するシステムのエコチタンを開発した。
チタンの主原料は、ルチルとイルメナイトの鉱石二種類。生産量の約90%を占めるチタン含有チタン鉄鉱は、南アフリカ、オーストラリア、カナダ、中国、ノルウェー、シエラレオネ、インド、モザンビークに多く存在するが、ロシアはチタン鉱物資源が少なく、チタンの埋蔵量は豊富ではない。
中国がスポンジチタン市場を支配
米国地質調査所(USGS)によると、2021年の米国外のスポンジチタン生産量は21万トンで、2020年の23万トンから減少した。中国が市場を独占し、2021年生産量で57%を占め、次いで日本が17%、ロシアが13%、カザフスタンが8%、ウクライナが3%となっている。
ロシアとウクライナのスポンジ生産が消えることは懸念されるが、USGSによると、ロシアとウクライナ除く2021年の世界の生産能力は291,500トンで、実際の生産量の21万トンを超えている。
余力の大半は中国、日本、カザフスタンにあり、サウジアラビアでは日本・サウジアラビア合弁のAMIC東邦株式会社が年間15,600MTのスポンジチタン生産能力を整備しつつある。
輸入品依存で米国家安全保に悪影響
2019年、米国はチタン消費の95%を輸入した。このため、米国商務省は、米国へのスポンジチタンの輸入は国家安全保障を損なう恐れを注意喚起した。
しかし、価格が大きく回復し、ロシアが退場した今、米政府は考え直すかもしれない。
787の機体重量の約15%を占めるチタン合金。写真 ボーイング
航空宇宙産業は世界のチタン消費で約90%を占めるため、業界関係者がロシアとウクライナの事態を懸念し、サプライチェーンを確保するため世界市場を探し回るのは当然だろう。■
Where Are Manufacturers Sourcing Titanium With Russia Off Limits?
BY SF STAFF
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