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迂回路、燃料費、空港発着枠、乗務員など、戦争が航空会社に与えている大きな影響とは。
ロシアによるウクライナ侵攻から1年、航空会社はどう対処してきたのだろうか。ロシアやウクライナの都市に就航できなくなり、ネットワークの相当部分を失った航空会社もあるが、それ以上によく語られるのは、ロシア上空を飛べなくなったこと、航空会社の燃料費に与える影響だ。
燃料費は昨年6月のピーク時から43%低下し、影響は一部緩和されている。ロシアのウクライナ侵攻から1年、欧州のジェット燃料は対2019年比で約3分の1高くなった。
IAGやエールフランス-KLMといったヨーロッパのトップネットワーク航空会社は、利益への影響をほとんど受けることなく、空域禁止を乗り切っている指摘もある。しかし、北欧の航空会社にとっては影響はより激しい。
「ロシア上空の飛行を回避した場合、ヨーロッパの航空会社には15~40%の時間とコストのペナルティが発生する可能性があり、最も影響が大きいのはフィンエアーで中国へのフライトが40%長くなり、ブリティッシュエアウェイズは20%長い迂回便になった。ペナルティーを受けた航空会社は、フライト時間が長くなるため、人件費やメンテナンスコストの上昇にも直面する可能性がある。欧州の航空会社による飛行時間の延長は、二酸化炭素排出量の増加も意味する。
状況は地理的にも偏っており、中国の航空会社はヨーロッパの航空会社と同じように空域の制限に直面しているわけではありません。コンロイは、中国東方航空とエールフランスが運航する上海-パリ便の例で、エールフランスは遠回りをしなければならなかったが、中国東方航空は直行便を利用できたと指摘した。
両社は同じボーイング777-300ERを使用した。両社の燃料消費量が同じと仮定すると、エールフランス航空の追加コストは15,650ドル、追加燃料消費量は6,000ガロン以上と試算された。
隠れた影響:空港の発着枠
あまり議論されていないのが、空港の発着枠と航空会社の運営に与える影響だ。
発着枠は、COVIDの開始とそれに伴う渡航制限ですでに混乱に陥っていたが、航空会社が経営を立て直す準備が整ったところで、新たな難題が待ち受けている。ロシア領空が閉鎖されたことで、事前に割り当てずみ発着枠の維持が不可能になっている。
IATAのワールドワイド空港スロット部門責任者のララ・モーガンは、Simple Flying取材に対し、状況を説明している。
「路線の再構築中、空域の閉鎖に突然直面したんです。フィンエアーは3時間から4時間のルート変更を経験しています。ヨーロッパに乗り入れる日本の航空会社は、2時間から3時間のブロックタイム変更を見ています。北極ルートでヨーロッパに戻り、東に向かい続ける方が短時間で済むため、実際に世界一周する航空会社もあります」。
航空会社は混乱に対処するため、発着枠に余裕ある路線の終点で到着時刻を調整している。必然的に、これがホームベースとなる。昨夏は、世界の航空会社のキャパシティがパンデミック前の70〜80%程度で推移していたため、容易に実施できたが、今年の夏は、問題が発生する可能性がある。
ララは、こうした問題を解決するため、創造的な方法を模索している航空会社があるを指摘した。
「2019年と2022年のスケジュールをみると、航空会社がベース空港をいつもの時間に出発し、2~3時間後に日本に到着していることがわかります。そして、スロットタイム変更に苦労しているため、その航空機が到着する2~3時間前の前の出発時刻でスケジュールを組まなければならなくなっているのです。
「そのため、1週間のスケジュールをこなすために、さらに2機を動員しなければならず、機材運行計画に大きな影響を及ぼしています」。
ララは、フライトクルーでも問題を指摘する。ロシア領空を回避するため必要なブロックアワーの飛行に、航空会社によっては、合意ずみ最大乗務員時間を超過する事態に直面しているところもある。労働組合との新協定でこれに対処した会社もあれば、追加の乗務員を配置しなければならず、運航にコストと複雑さが加わっている会社もある。
航空会社が発着枠を失う可能性は?
空域閉鎖の結果、航空会社が非常に困難な状況に対処していることは明らかだが、スロット割り当ての柔軟性が高まれば、このような状況から少しは解放されるかもしれまないとララは指摘する。
「スロット・コーディネーターには、これがスケジューリングに対する自発的なアプローチではなく、反応であることを理解してもらいたい。これについては、さまざまな程度の合理性を見てきました」。
問題は、すべての航空会社が物理的にロシア領空から締め出されているわけではないことだ。EU、英国、米国の航空会社は空域に入ることができない。しかし、他の航空会社にとっては、それほど明確なものでもない。例えば日本は、ロシアへの支払いをすべて遮断する制裁措置をとっている。そのため、ある航空会社がロシアを上空飛行して緊急着陸が必要になった場合、地上支援も給油もできず、支払いもできないことになる。他の航空会社の保険会社は、ロシアをオーバーフライトすると違反になると明言している。
したがって、NOTAMが閉鎖されようが、他の理由で閉鎖されようが、航空会社はロシア空域に入ることができない。このことは、スロット不使用の明確な正当化理由であるとIATAは考えている。しかし、スロットコーディネーターの中には、航空会社がNOTAMクローズアウトでない限り、自発的にスロットを使わないというスタンスの人もいる。発着枠の不使用は、次の対応シーズンで没収される可能性があり、実際にそのような事態を招いている。
ララによると、IATAは、一部航空会社が発着枠を失うことになることを懸念している。発着枠をカバーするのに十分な航空機がない航空会社は、航空機をリースして運航を確保すべきだという意見もコーディネーターの中にはあるという。しかし、これには問題がある。リース機は無限にあるわけではないし、エンジンや部品供給のサプライチェーンの問題もあり、実行可能な選択肢とはいえない。
戦争や領空閉鎖のような問題で、航空会社が没収される事態が生まれると思わせる思うとぞっとする。
「しかし、航空会社は、最も需要の高い路線をカバーするために、別の空港からのフライトをシフトさせる可能性があります。そうなると、第3の空港に影響を与えることになるわけです」。
正常な状態に戻れるか?
今日、航空業界で耳にするのは、いかに「正常な状態への復帰」に向かって前進しているか、航空会社がCOVID以前のスケジュールにほぼ戻っている、キャパシティと飛行旅客数が増加している、といった内容だ。アジア、そして最も重要なことですが、中国が戻ったことで、より標準的な夏を迎えることが期待される。
しかし、ロシアの領空閉鎖が待ち構えている。より長いルートがやはり必要であり、スロットコーディネーターの中には航空会社の規定を調整しようとしない、あるいはできないところもあるため、サマーシーズンに向けて「通常」からはまだかなり遠い状況だ。ララは次のように述べた。
「見通は平常に戻りつつある。しかし、スケジューリングの観点からは、すべてのフライトでスロットが使用されており、かなりばらつきがあります」。
2023年の夏を最高の業績にしたい航空会社にとって、スロットコーディネーターの協力で長距離路線への影響を若干和らげることができるかもしれない。しかし、メッセージは明確だ。この戦争が終結し、空域が再開されるまで、業界は「元通り」になるまで相当の時間がかかるのだ。■
One Year Of War: How Russia’s War In Ukraine Is Affecting Aviation
BY JOANNA BAILEYAbout The Author
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Managing Editor - Joanna has worked in publishing for more than a decade and is fast becoming a go-to source for commercial aviation analysis. Providing commentary for outlets including the BBC, CNBC,
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