航空会社にとってエアバス、ボーイングの売れ筋ナローボディ混合フリートのメリット、デメリットとは?



航空会社にとって混合フリート運航はメリットとデメリットがある



イアンエアーが実証しているように、オペレーションを簡素化してコストを削減するには、機材統一での運航が選択肢となる。

 しかしプラット・アンド・ホイットニーPW1100Gエンジンの前倒し検査の事例のように、単一機種での運航にはリスクも伴う。

 一部エアラインには、単一メーカーに依存するリスクを回避し、混成フリートでの運航を選択する動きもある。

 世界には、エアバスA320neoとボーイング737 MAXというライバル2社の航空機ファミリーで路線を運航するという、混合フリートで運航する航空会社が少なからず存在する。当然ながら、エアライン多数がコスト削減のために運航を簡素化し、コックピットの型式を減らそうとしているため、この場合、両メーカーの航空機を導入するメリットが問題となる。

 イージージェットトランサヴィアアレジアント・エアなど格安航空会社には、一方のメーカーに忠誠を誓い、新しいタイプの航空機を徐々に導入していった事例もある。


コスト削減


機体タイプを統一する主な利点として、コスト削減がある。たとえばライアンエアーは、ボーイング737に統一することで、運航を簡素化している。同社は、737クラシック(737-200、737-300)、737ネクストジェネレーション(NG、737-700、737-800)、737 MAX(MAX 8、MAX 8-200、737 MAX 10を発注中)ファミリーを運航してきた。

 ボーイング737を選択し、ライアンエアーはプロセス多数を簡素化した。例えば、パイロット、客室乗務員、エンジニアの訓練を2種類行う必要がないため、労務関連の業務が大幅に軽減された。生意気にも、マイケル・オレアリーはCNBCのインタビューで、ヨーロッパの多くの航空会社がエアバスA320ファミリーの航空機を運航しているため、「お互いのパイロットをつまみ食いしている」とまで発言している。

 とはいえ、単一機種で訓練を受けた乗務員を確保することは、運航上の困難が生じた際の冗長性にもつながる。ライアンエアーの2023年度の平均運航距離は766マイル(1,232キロメートル)、1日平均の航空機利用時間(FH)は9.40時間であることを考えれば、病気などパイロット関連の遅延が複数の拠点にドミノ効果を引き起こす可能性がある。ボーイング737型機のパイロットを探すのに奔走して遅延を回避するより、同じ免許を持つフライトクルーが待機している方が、問題を迅速に解決できる。

 ライアンエアーは、2023年度営業報告書で、単一機種の利点を次のようにまとめている:

 「主に単一の機種で運航することで、当社は、訓練、メンテナンス、スペアパーツの購入と保管に関連するコストを抑えることができ、また、乗務員や機材のスケジュールを柔軟に調整できる」。

 長年にわたり、ボーイングは737の発注でも割引の恩恵を受けてきた。1998年にボーイング737-800型機を初めて大量発注した際、ライアンエアーは「一定の価格譲歩を受けた」と、2002年度報告書で述べている。

 「ボーイングからの商品・サービスの購入、または航空機の購入に関する特定の支払いに充当できた」。

 同様に、イージージェットは、ボーイング737の全機をエアバスA319型機に切り替えるため、エアバスから割引を受けた。 

 『Guardian』紙によれば、同社はメーカーのどちらかからより良い取引を得るため、1年間にわたり競争させた。その結果、イージージェットは最大10%のコスト削減を見込んでいる。


機種を統一するデメリット


単一機種での運航にはリスクもある。過去1年間、プラット・アンド・ホイットニーのギアード・ターボファン(GTF)を搭載したエアバスA220またはA320neoを運航する航空会社は、エンジン関連の問題に対処を迫られた。その結果、エアバルティックのような全エアバスA220運航会社や、GTFを搭載したA320neoファミリーを保有する格安航空会社多数は、年間を通じて航空機の運行停止を余儀なくされ、業績に重大な影響が出た。 

 2023年9月30日、エアバスA320/A321型187機を保有していたウィズ・エアは、PW1100Gエンジンの前倒し点検のため、2023年9月および2024年1月中旬から2024年会計年度末までに45機が地上待機になると予測した。同社は、「近い将来および長期的な運航と財務への影響は、経営陣の行動と現在確保されているOEM補償で軽減されている」と述べているが、今回のエンジン点検は、単一メーカーに依存するリスクを浮き彫りにした。

 フロンティア航空は、総保有機135機のうち、エアバスA320neo/A321neoが104機で、検査の前倒しは「当社の経営に悪影響を及ぼし、既存の航空機に関連するコストを増加させ、プラット&ホイットニー製エンジン搭載機の納入時期に、潜在的に重大な影響を及ぼす可能性がある」と警告している。2023年第3四半期時点で、PW1100GとCFMインターナショナルLEAP-1Aを搭載したA320neoファミリーの航空機を運航しており、同社は正確な影響を判断できない。同社が2023年第3四半期に証券取引委員会(SEC)に提出した書類には、次のように記されている、

 「当社の事業戦略の重要なコスト削減要素は、単一系列の航空機を運航することにある。しかしながら、当社の全航空機はエアバスA320ファミリー機に、エンジンをCFMインターナショナルとプラット・アンド・ホイットニーに依存しているため、同機種またはエンジンに関連する納入遅延、設計上の欠陥、機械的な問題、その他の技術的または規制上の問題が発生した場合、当社は影響を受けやすくなる」。


混成運航のメリットとは


一方でエアバスA320neoとボーイング737 MAXの両方を運航する航空会社もある。例えば、アメリカンエアラインズデルタエアラインズ中国南方航空大韓航空トルコ航空などだ。運航の複雑さや、メンテナンス、訓練、運航計画に関するコストの増加など、前述のデメリットは依然として有効であるが、両ファミリーを運用することで、航空会社はサブフリートを確立し、単一タイプのナローボディフリートを保有するリスクを回避できる。

 同時に、A320neoと737 MAX 8は仕様が異なる。例えば、MAX 8はシングルクラス構成で最大189人(MAX 8-200構成では210人)を収容できる一方、最大航続距離は3,500海里(6,480km)。一方、A320neoは最大194人が搭乗可能で、最大飛行距離は3,400海里(6,300キロメートル)だ。

 この2つのファミリーの違いは、A321neoと737 MAX 10でさらに明確になる。737MAXファミリーの最大機 MAX 10は、1クラスで最大230名を収容し、飛行距離は3,100NM(5,740km)であるのに対し、A321neoは244名と飛行距離(3,500NM、6,480km)で、A321LR(4,000NM、7,400km)とA321XLR(4,700NM、8,700km)ではさらに航続距離が伸びる。

 それでもなお、航空会社が機材にファミリーを混在させる選択する理由として、もうひとつ論拠がある。エアバスもボーイングも、人気のある製品については膨大な受注残を抱えており、航空会社は航空機の引き渡しを受けるために非常に長い列に並ばなければならない。航空機の納入延期や倒産は、納入枠が急遽空く可能性を意味し、長く待たずに迅速に航空機を取得するチャンスとなる。新型機は、温室ガス排出量を削減する最も簡単な方法の一つであり、業界が直面する圧力を考慮すれば、機材を入れ替え、別のメーカーの航空機を導入する誘惑がエアラインに生まれる。


What Are The Main Advantages & Disadvantages Of Mixed Narrowbody Fleets For Airlines?

BY

RYTIS BERESNEVIČIUS


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