ターミナル1・2共通記事です。
宇宙からの太陽光発電こそ米国が行うべき世界を変える賭けなのだ
カリフォーニア工科大学の研究者たちは、科学的に初めて、宇宙空間で発電された電力を地球に送り返してくるのに成功した。▼宇宙太陽光発電実証機は、長く望まれていた新しいエナジー源、宇宙太陽光発電(SBSP)の科学的根拠を証明するものだ。▼SBSPは、地上の太陽光を断続的にしている要因を排除し宇宙空間で太陽エナジーを回収することにより、クリーンなエナジーを供給し二酸化炭素排出量を削減する、まったく新しいベースロードエナジー技術を解き放つ。▼商業宇宙セクターの成長により打ち上げコストの急速な削減が見えてきたことで、今後数十年以内に経済的な事業になる可能性がある。▼欧州宇宙機関、中国、日本が、この研究開発を積極的に進めている。▼宇宙活動で世界のリーダーであるにもかかわらず、米国はSBSPで遅れをとり、地政学的な競争相手にこの新興分野を奪われる恐れがある。▼要するに、米国には、官民一体で複雑な工学的、経済的、規制的課題を解決し、宇宙太陽光発電を開発・商業化する包括的戦略が必要なのである。▼エナジー市場が比較的安定していた10年間を経て、現代経済のエナジー・サービス依存が浮き彫りになりつつある。▼石油ブームと不況の加速など、パンデミックによるエナジー市場の混乱は、エナジー供給への短期投資を弱体化させた。▼ロシアのウクライナ侵攻は、エナジー価格の変動をさらに悪化させ、ヨーロッパが大きなエナジー供給国を失い、世界が第2位の石油供給国を失う見通しを高めた。▼さらに言えば、世界的な地政学的競争、特に米中間の競争が再燃し、エナジーや宇宙を含む戦略的産業をめぐる競争が激化している。▼こうしたことはすべて、悪化の一途をたどる気候変動と、可能な限り早く二酸化炭素排出量を削減する必要性に常に迫られている背景のもとで起きている。▼風力発電や太陽光発電の成長、その他先進的なエナジー技術の出現を考慮しても、世界はあらゆるクリーンエナジーを必要としている。▼さらに、レガシー火力発電所の引退が加速中で、発送電システムやベースロード電源システムの必要性はますます高まっている。▼宇宙空間での太陽光発電は、こうしたニーズすべてを1つのパッケージで満たすことができる。▼すなわち、システムのランピングをサポートするために迅速に発送電でき、非常に高い容量係数でベースロード電力を供給でき、直接排出がゼロで、回復力があり、これらすべてを同時に達成することができる。▼科学的な第一原理は単純だ。宇宙空間での太陽光発電は、大気を通過する必要がなく、雲に遮られることもなく、夜間もないため、地表の約8倍も強力である。▼この太陽光発電を地球に送り返すことができれば、つまり波長の長いマイクロ波で送り返すことができれば、地上市場は24時間365日クリーンなエナジー源を利用できるようになる。▼もちろん、このような事業の複雑さは些細なレベルではない。▼SBSPは1970年代に宇宙物理学者のジェラード・オニールにより初めて一般化されたが、コストが高止まりしていたこともあり、進展は一時的なものに過ぎなかった。▼スペースXのような商業宇宙イノベーターの台頭により、SBSPの経済方程式は逆転し始めている。▼再利用可能なロケット、既製の衛星機器、規模の経済が、宇宙へのアクセスコストを引き下げている。▼商業宇宙ステーションや宇宙空間での組立・製造のような新たな技術革新は、大規模で複雑な衛星設備の建設をサポートすることができる。▼月や小惑星から採掘される宇宙資源の可能性は、材料費をさらに削減する。▼多くの地域、特に絶望的なエナジー事情に直面している地域が気づき始めている。▼欧州宇宙機関(ESA)は、SBSP開発の野心的なカシオペア計画に着手した。▼根底にあるのは、ESAによる2つの研究結果で、最初の実用規模の実証プロジェクトのコストは200億ドル以下である。▼コストがかかるとはいえ、この価格設定は、ジョージア州における新型原子炉2基の建設など、エナジー巨大プロジェクトと同レベルである。▼中国は、SBSPをエナジーと宇宙大国になるための手段と考えている。▼2028年に地球低軌道、2030年に静止軌道での実験を計画している。
今後数十年間で、数百ギガワットのベースロード発電所を建設できる。▼特定の構成であれば、SBSP発電所が電力市場間で切り替えを可能にし、システムの信頼性を高め、可変的な再生可能エナジー源を柔軟に補完することができる。▼エナジー資源の経済的優位性に恵まれない国々は、自国のエナジーを安全に生産できるだけでなく、余剰の宇宙発電を世界市場に送ることで、輸出市場を開拓することができる。▼グリッド規模の電力だけでなく、SBSPは遠隔防衛活動から軌道衛星、月や火星の地表にある基地まで、さまざまな種類の高度なエナジー活動を支えることができる。▼宇宙ステーションはロケット打ち上げを必要とするが、ライフサイクルでの排出量は他のクリーン・エナジー源に匹敵すると思われる。▼しかし、アメリカは現在、この豊富なエナジー源に参加するめどが立っていない。▼アメリカでSBSPに取り組んでいるのは、国防総省とカリフォルニア工科大学というほんの一握りの団体だけである。▼NASAはパワービーミングに焦点を当てたプロジェクトに資金提供しているが、宇宙用途に限られている。▼米国機関および民間セクターに研究開発・商業化のロードマップが存在しない。▼広範な協調と需要の推進がないと、ユーティリティ・スケールのSBSP開発を支援する投資は不十分なままに終わる。▼広範なアメリカのイノベーション・エコシステムは未発展だ。▼エナジー省、国立研究所、電力部門の顧客といった、商業化エナジー技術を開発する上で最も重要な主体が、開発から抜け落ちていることが注目に値する。▼宇宙産業だけでは、この技術を解き放つことはできない。▼さらに、国務省、連邦エナジー規制委員会、連邦通信委員会のような、宇宙エナジーシステムに対する重要な政策・規制の場は、まだ十分な法的基盤を確立していない。
包括的な戦略とはどのようなものだろうか?▼今年初め、両著者は『Space Policy』誌に論文を発表し、技術開発プログラムがそのような戦略の要だと主張した。▼私たちは、官民パートナーシップの活用を提案し、価格を下げながら技術のリスクを段階的に取り除いていくことを提案した。▼小規模活動から始め、積極的だが実現可能なプログラムにより、2040年代に実用規模のコスト競争力のあるシステムに到達する。▼最近のインフラ法案で新設されたエナジー省クリーンエナジー実証室は、そのようなプログラムの完璧なホストとなるだろう。
技術実証とコスト削減だけでなく、このようなプログラムがあれば、長期的規制の枠組みを確立する持続的な政策立案も可能となる。▼規制上の課題としては、他の衛星や地上ユーザーが現在使用中の電波スペクトルの利用、マイクロ波ビームの安全性やセキュリティに関する懸念への対応、規制の厳しいエナジー市場へのSBSPの統合などがある。▼なかでも最も重要な出発点は、バイデン政権と議会が、宇宙を利用した太陽光発電の開発を気候変動との戦い、エナジー安全保障の強化、2つの戦略分野における国際競争力の確保の国家的優先事項だと宣言することである。▼NASA、国防総省、エナジー省にまたがる省庁間調整により、政府投資を実験室での実現技術に向けることができる。▼民間主導のイノベーションは、学界と密接に協力し、イノベーションを実際の展開へ導き、段階的な展開でコストを削減できる。
最終的には、SBSPは21世紀のエナジー源のひとつになる可能性がある。▼風力、太陽光、原子力といった他のクリーンエナジー源を補完することで、米国とその同盟国のエナジー安全保障を確保しながら、今世紀半ばの世界的な脱炭素化を実現することができる。▼また、たとえ核融合のようなカーボンフリー技術が実用化されても、SBSPのユニークな特性が、SBSPへの投資を正当化するだろう。▼空想的に聞こえるかもしれないが、宇宙から送られる太陽光発電は、まさに今世紀の米国が行うべき、リーダーシップを定義し、世界を変える賭けなのである。■
July 2, 2023 Topic: Energy Region: World Blog Brand: Techland Tags: EnergySpaceSolarSpace-Based Solar PowerRenewable EnergyTechnologyEnergy Security
Alex Gilbert is a Fellow and Ph.D. student at the Colorado School of Mines, and Director of Space and Planetary Regulation at Zeno Power.
Leet W. Wood currently works in energy policy and regulation at a DC not-for-profit. He received his doctorate from George Mason University in 2019.
Image: Shutterstock.
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