世界第二位のリース会社トップがボーイングを公然と批判し、業界が注目する中、同社へプレッシャーが強まっている。
ボーイングの社長は大変だ。最大の顧客グループから「路線を誤った」と言われれば、逃げ場はない。
ボーイングが787の認証問題や777Xの遅延をめぐりFAAと揉める中で、こんなコメントが出た。
ボーイングは、787の是正計画をFAAに提出し、回答を待っている。777Xは、ボーイング社が1年間生産を停止するほど遅れている。
世界第2位の航空機リース会社AvolonのCEOドムナル・スラッタリーDomhnal Slatterは5月5日のAir Finance Dublinカンファレンスで、ボーイングが「道を誤った」と評した。
Reutersによると、スラッタリーはこう語った。
「ボーイングは市場における戦略的な位置づけを根本から考え直すべきだ」「新鮮なビジョンと、新鮮なリーダーシップが必要だ」
とはいえ、前向きな意見として、問題はいずれ解決されるとし、「ボーイングが解決できると信じている」と述べた。
ボーイングが自ら招いた危機
ボーイング777Xの就航が2025年初頭にずれ込む可能性もある。Photo: Getty Images
ボーイングの上級役員、コマーシャルマーケティング担当副社長ダレン・ハーストDarren Hurstとグローバル・サステナビリティ・パートナーシップ担当副社長ブライアン・モーガンBrian Morganの2人が会議で取り上げられた。スラッタリーの講演はこの日の最後で、その後のドリンク&ネットワーキング・セッションで参加者へ話題を提供した。
2018年のライオン・エアーのボーイング737 MAX 8の死亡事故、さらに2019年のエチオピア航空の事故は、ボーイングにとって一連の危機の始まりとなった。B737 MAXは、エアバスA320neoファミリーへ対抗するボーイングの回答として注目されていたが、逆にエアバスに市場の覇権を渡してしまった。
737 MAX 8は中国で規制当局の承認を必要とし、MAX 10は2022年末までの期限を設けている。
一方、エアバスはA320生産を2025年から月産75機に増強する計画を今週発表した。
航空会社より貸主が大きな顧客となった
アジアでの評判回復のため、ボーイングはB737 MAX中国で飛行再開させなければならない。Photo: Getty Images
民間航空機の最大の顧客は、いまや機体リース会社だ。2021年、業界のパイオニア、エア・リース・コーポレーションのエグゼクティブ・チェアマン、スティーブ・ウドバー・ヘイジーSteve Udvar-Hazyはこう語った。「リースコンテンツは納入機の約60%にまで成長した」。
スラッタリーの批判は、大手貸主でこれまで最も強い調子のものだ。同時に、市場がエアバス有利に傾きすぎる懸念も表明している。
3月末時点で、Avolonは592機の航空機を所有し、平均機齢は6年、総資産は305億ドルだった。
同社所有の航空機は62カ国、142社の航空会社が運航し、240機の航空機を受注・契約している。
このうち、ロシアに所在する10機について帳簿価額をゼロとする減損処理として304百万米ドルを計上した。このほかにも、ロシア制裁の影響で航空機4機を引きあげた。
ボーイングは多くの批判を浴びているが、業界の誰もが、悪評にまみれたままの同社は望んでいない。業界には、ボーイングとエアバスが共に最高の技術と航空機を製造する活気に満ちた健全な状態が必要だからだ。
それがいつ実現するかが、懸念事項なのだが。■
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