今回はターミナル1(民間機、新技術)、ターミナル2(軍用機)共通記事です。
ボーイングとエアバスに挑む新興企業が登場
Z-5デモ機が飛行テストに向かう
ピボットギアコンセプトが、新しいブレンドウィングボディの鍵
主翼胴体一体型機の時代がついに到来したのだろうか。カリフォーニアの新興企業ジェットゼロJetZeroはそう考え、中型の商用および軍用タンカー・輸送市場をターゲットにしたマルチミッションデザインを発表した。
1980年代後半にコンセプトとして登場し研究されてきたブレンデッドウィングボディ(BWB)は、有望な性能予測にもかかわらず、支持を得られなかった。ジェットゼロは、持続可能な中型旅客機を求める市場と、同じサイズの先進的なタンカー・輸送機を求める米空軍に同時対応し、BWBにとってかつてない市場需要ができたと述べている。
BWBコンセプトは、機体構造と空気力学を融合させ、重量と抵抗を減らしながら、胴体を揚力に貢献させる。ハイブリッドウィングボディとも呼ばれ、通常無尾翼で、従来のチューブアンドウィングデザインに比べ、湿潤面積、摩擦抵抗、形状抵抗が小さくなるため、高効率の構成となる。また、BWBは、上面に搭載されたエンジンの騒音のほとんどが機体が遮蔽されるため、現在の旅客機よりも静かな機体となる。
ジェットゼロのZ-5は、Zシリーズ最初の機体で、航続距離5,000nmと乗客最大250に最適化したデザインとなっている。全複合材製機体は、広いシングルデッキと高アスペクト比の主翼を
2030年代の就航を目指すジェットゼロの事業計画で重要となるのは、軽量化と出力要件の低減で、Z-5はCFM Leap 1やPratt & Whitney PW1100Gといった既存の単通路用エンジンの派生型を使用できる設計だ。また、機体には従来型システムが搭載され、開発を簡素化し、コストとリスクを低減できると同社は説明している。
Z-5は、2020年にプロジェクトが棚上げされるまでボーイングが研究していた新中型機(NMA)の市場を狙う。ボーイングは2030年代半ばの就航を目指し、従来型構成でNMAクラス航空機の低レベル研究を復活させたものの、メーカー自身が認めるように、新製品の実現はまだ数年先の話だ。
エアバスも、2030年代半ばにZEROe構想で研究した水素燃料コンセプトの1つで200席のBWBはあるものの、NMAカテゴリーの新型機開発からは何年も離れている。A321XLRは、A321neoの長距離バージョンで、最大220人を乗せ4,700kmを飛行する設計で2024年に就航する予定だ。
しかし、Z-5開発の短期的な足掛かりとなるプログラムは、米国国防総省が計画している、将来型タンカーおよび郵送機として評価を受けるBWB実証機だ。当初目標は、試作機のデジタルデザインを開発し、実証機の初期耐空性および試験計画を行い、最終的に「認証および試験用の大型試作機を製造する」ことだと空軍は述べている。
ジェットゼロは、3月末に245百万ドルの費用負担で提案書を提出しており、NASA支援対象のサブスケール実証機の飛行テストが今年中の予定であることから、同社はコンセプトを公表する時期が来たと判断した。
ジェットゼロの共同創業者であるトム・オリアリーは、「概念設計が完了し、インキュベーション段階から実証段階に移行することがマイルストーンとなる」と語る。「このコンセプト・デザインは、既存の単通路用エンジンと燃料消費量と排出量を50%削減し、タンカーとして実用化でき、市場の中間的なギャップを埋める混合翼体の開発につながりました。
「空軍の目標は、タンカーに転用可能な商用BWBの能力を実証すること」とオリアリーは続けた。「当社は、空軍の提案書と合わせ提出した、製造やミッションシステム含む供給ベース各社から支持の手紙をもらっています」。
Z-5は、燃料効率の高さから、最大距離のミッションでボーイングKC-46タンカーの最大2倍の燃料を運べる、とJetZeroは主張。また、同機は、現行の空港インフラを利用できる設計だ。空軍は今年半ばまでに採択案を選定し、2027年に実証飛行を開始する。
米空軍は昨年、最初の募集を発表時に、BWBは「能力向上と温室効果ガス排出削減の両面で、将来の米空軍機にとって唯一最もインパクトのある技術機会」と述べている。貨物機、タンカー、爆撃機などをBWBに変更すれば、現在の燃料価格で、年間燃料費を10億ドル削減できるという。
Z-5は、業界にとってセレンディピティな時期に登場したと、元エアバス・アメリカおよびインターナショナル・エアロ・エンジンのCEOで、ジェットゼロの諮問委員会メンバーでもあるバリー・エクレストンは言う。「環境、空軍、NASAからの追い風に加え、技術面での追い風もあり、以前は実現不可能だったことが可能になりました。ボーイングやエアバスがこの分野で何も新しいことをやっていない事実と照らし合わせると、『ここで何もしないでいるわけにはいかない』となるんです。業界はそれを必要としている。もし、現行製品より30〜50%良くなるとわかっているのなら、なぜやらないのでしょうか?」と言う。
ジェットゼロは、NASAの持続可能な飛行実証機(SFD)プログラムの初期段階2021年の契約で、翼幅23フィート、12.5%のサブスケールBWB実証機の飛行テストを準備中だ。この機体は、内部容積を最大化し、機体の回転を補助する斬新なランディングギア設計を主要な特徴とするZシリーズの評価に使用される。SFDの主契約は、1月にボーイングが受注した「Transonic Truss-Braced Wing」コンセプトの737サイズのデモンストレーターの開発です。
マクドネル・ダグラス時代のBWB経験者であり、ジェットゼロの共同設立者兼最高技術責任者であるマーク・ペイジが開発した「ピボットギア」コンセプトは、BWB設計が直面する重要課題である低速ピッチ制御と揚力性能を改善する。ジェットゼロの前身であるDzyne Technologies社が提案したBWB旅客機「Ascent 1000」で設計されたもので、ノーズランディングギアを前方に、メインギアを後方に移動し客室後方の未使用の内部容積に収める。
離陸時には、ノーズギアが数フィート伸び迎え角が約6度大きくなり、BWBのボディ自体が揚力を発生させ「エレボンの効果を増幅させる」(JetZero社)という。ポンプやアクチュエーターを不要とするパッシブ制御により、Z-5はピッチ姿勢に早く到達できる。これにより、離陸速度を遅くでき、離陸時の高推力要求を減らせる。また、前縁のハイリフトスラットが不要になり、後縁フラップも小さくできる。
Z-5は、従来のBWBコンセプトで批判された乗客の出入りや乗り心地、客室一部に窓がないことに対応するため、前方部にサイドウィンドウ、メインと後方部にスカイライトウィンドウを備える。内寸は公表されていませんが、エアバスA380に近い客室幅と乗り心地が期待される。Z-5では、従来型の客室レイアウトに比べ、前方および後方の出口に素早くアクセスできるアセント1000原則を採用する。
Z-5のシングルデッキ構成に加え、一次構造の複合材料の進歩により、非円形の胴体内に圧力構造を実現する設計課題が解消されたとジェットゼロは述べている。当初の設計では、持続可能航空燃料に従来型タンクをベースにしていたが、BWB構成では、液体水素燃料タンクを将来的に搭載する内部容積が十分に確保されているという。
ジェットゼロは、産業開発計画の一環として、「民間資金への働きかけと潜在的なプログラムパートナーとの関わりを同時開始する」と述べている。タンカー実証機の提案では、BWB構成に似た全翼機で設計・製造経験を持つ唯一の機体メーカー、ノースロップ・グラマンがこれに含まれる。
電動垂直離着陸機の新興企業ベータ・テクノロジーズBeta TechnologiesのCEOだったオリアリーは、「空軍のBWB実証機プログラムでの採択に当社は有利な立場にあると思っています」と語る。「BWBの開発に、産業パートナー多数に協力を仰いでいます。概念設計をするためには、あらゆる供給源と協力する必要がありました。だから、何でも相談したんです。『それはおかしい、一緒にやらない』と言った会社はありません。サプライベースのトップからボトムまで、全員です」。
「最大の戦いの一つは、もちろん、ボーイングとエアバスがそうならないよう必死に努力することです」とエクレストンは、競争的側面について指摘します。「私たちがボーイングやエアバスを出し抜けるほど賢いとは言いませんが、多くのパートナーを得て、真の信頼を得ています」。■
JetZero Unveils Midmarket Airliner And Air Force Tanker BWB Plan | Aviation Week Network
Guy Norris Graham Warwick April 21, 2023
0 件のコメント:
コメントを投稿