エアバス、ボーイング両社の最新状況をAviation Weekはこう見ている 同社のポッドキャストCheck 6より

 


エアバスとボーイングの最新状況 Aviation Week編集者による解説



イントロダクションとボーイングの決算分析

ジョー・アンセルモ: Check 6へようこそ。Aviation Week Networkの編集局長、ジョー・アンセルモです。 さて、今から30年以上前、砂漠の嵐作戦が始まった頃、当時の国防長官ディック・チェイニーは、アメリカの軍事作戦の激しさを表現するために「かつてないほどビジネスは順調だ(Business is booming like never before)」という、今では有名になった言葉を残しました。今日、世界の地政学的な混乱、ウクライナや中東での戦争、そしてサプライチェーンの絶え間ない混乱を目の当たりにしている私たちは、民間航空機の二大巨頭ボーイングとエアバスについても、ある意味で同じことが言えるのではないかと考え始めています。彼らのビジネスは、まさに「爆発的」です。

今週、両社は最新の四半期決算を発表しました。そこで、この数字の裏側にある真実を読み解くために、当社の専門家チームを招集しました。ワシントンからはビジネス・エディターのマイケル・ブルーノ、フランクフルトからはエグゼクティブ・エディター(民間航空担当)のイェンス・フロッタウ、そしてロサンゼルスからはシニア・エディターのガイ・ノリスです。

マイケル、まずはあなたから始めましょう。ボーイングの決算についてですが、デビッド・カルフーン(CEO)は、同社が「正しい道」に戻ったと我々に信じ込ませようとしているのでしょうか? 実際の数字と、彼が投資家に伝えた内容を教えてください。

マイケル・ブルーノ:そうですね、カルフーンCEOのメッセージは、非常に「一貫性を保とうとするもの」だったと言えるでしょう。彼は、ボーイングが依然として「回復途上にある」というストーリーを強調しました。 数字を詳しく見てみると、ボーイングの第3四半期の売上高は181億ドルで、これは前年同期比で13%の増加となりました。これは、市場予想をわずかに上回る数字です。最大の要因は、787ドリームライナーの納入が再開され、ペースが上がっていること、そして737 MAXの納入も、以前の極端な停滞に比べればマシになっていることです。

しかし、一方で「痛み」も依然として存在します。純損失は16億ドルに達しました。これは主に、防衛・宇宙・セキュリティ部門(BDS)における固定価格契約のプログラム、具体的には新しい「エアフォースワン(VC-25B)」や「スターライナー」カプセル、さらにはMQ-25無人給油機などで追加費用が発生したためです。 投資家が最も注目していたのは「フリーキャッシュフロー」でした。今四半期は4億4000万ドルのマイナス(流出)でしたが、これはウォール街が予想していたよりもずっと良い結果でした。ボーイングは「2023年通年で30億ドルから50億ドルのプラスのキャッシュフローを実現する」という目標を据え置いています。これは、彼らが第4四半期に膨大な数の航空機を納入できると自信を持っていることを示唆しています。

カルフーンCEOが強調していたのは、「サプライチェーンの混乱を管理できており、生産レートを上げる基盤は整っている」という点でした。もちろん、これにはガイが後で話してくれるであろうスピリット・エアロシステムズの問題などの「但し書き」が付きますが、全体的なトーンとしては「嵐は去りつつあり、あとは実行するだけだ」というものでした。

ジョー・アンセルモ: イェンス、大西洋を挟んだエアバス側はどうでしょうか。決算発表では、ギヨーム・フォーリ(CEO)からどのようなトーンが感じられましたか?

エアバスの決算とエンジンの苦悩

イェンス・フロッタウ: ジョー、エアバス側のトーンは、ボーイングと対照的に「慎重、かつ極めて現実的」なものでした。ギヨーム・フォーリCEOは、勝利宣言などしていません。 数字を見れば好調です。売上高は前年同期比で12%増の149億ユーロ。しかし、彼らが直面している最大の問題は、自分たちの工場の中ではなく、サプライヤーの工場、特にエンジンの製造現場で起きていることです。

フォーリCEOは、プラット・アンド・ホイットニー(P&W)のGTFエンジンに関する問題を非常に深刻に捉えています。ご存知の通り、粉末冶金の欠陥により、A320neoファミリー数百機が点検のため長期の地上待機を余儀なくされています。これはエアバスのせいではありませんが、彼らのビジネスを直撃しています。 さらに、彼は「複雑なサプライチェーン」についても言及しました。これは単にエンジンだけでなく、座席の供給、原材料、さらには航空機を構成する数百万個の小さな部品すべてを指しています。

エアバスは今年は720機の納入目標を維持していますが、これを達成するには、第4四半期に「垂直に近い急勾配」の増産を達成しなければなりません。9月末までの納入実績は488機ですから、あと232機をたった3ヶ月で届けなければならないのです。これは昨年より厳しい状況です。また、A320ファミリーの生産レートを「月産75機」にする2026年の目標についても、彼は「変更はない」と言いつつも、それがどれほど困難な道であるかを言葉の端々に滲ませていました。

ジョー・アンセルモ: ガイ、生産現場のスペシャリストであるあなたに聞きたいのですが、今のイェンスの話を聞いてどう思いますか?エアバスとボーイング、両社とも「もっと作りたいのに、部品が来ない」という同じ壁にぶつかっていますよね。

ガイ・ノリス: その通りです、ジョー。イェンスが言ったように、これはもはや「特定の部品が足りない」というレベルではなく、サプライチェーン全体の「体力不足」の問題です。 ボーイングの場合、直近の大きな障害はスピリット・エアロシステムズが製造した737の胴体部分でした。後部圧力隔壁に開けられた穴の問題です。これにより、ボーイングは修正作業のため納入ペースを落とさざるを得ませんでした。カルフーンCEOは「これは第3四半期の数字に影響したが、第4四半期には回復する」と言っていますが、現場では依然として細かな手直しが続いています。

一方で、エンジンについては、P&W問題がエアバスに打撃を与えている一方で、ボーイング(737 MAX)が採用しているCFMインターナショナルのLEAPエンジンも、完全に無傷ではありません。LEAPはP&Wのような大規模なリコールはありませんが、耐久性の問題やスペアパーツの不足が常に議論の的になっています。 航空機メーカーは今、まるで「モグラ叩き」をしているような状態です。一つの問題(例えば半導体不足)を解決すると、今度は別の場所(例えば着陸装置の鍛造品)で問題が噴出する。両社とも受注残は山のようにありますが、それを「現金」に変える製造ラインが、サプライヤーという細い糸で繋がっている脆い状態なのです。

マイケル・ブルーノ: ガイ、その点に関連して付け加えたいのですが、今回の決算で注目すべきは「在庫」の積み上がりです。 ボーイングもエアバスも、完成間近なのに「あと一つの部品」が足りないため引き渡せない機体を、滑走路脇に並べています。これは財務的には「棚卸資産」として計上され、キャッシュを圧迫します。彼らが必死に「第4四半期にはこれらを全部吐き出す」と言っているのは、そうしないと年間の財務目標が達成できないからです。

大型機市場の復活と貨物機バトル

ジョー・アンセルモ: ガイ、話題を変えて、市場の「明るい兆し」についても話しましょう。パンデミックの最中、誰もが「大型ワイドボディ機の時代は終わった」と言っていました。A380は退役し、4発エンジン機は姿を消すと。しかし今、逆のことが起きていますよね?

ガイ・ノリス: まさにその通りです。皮肉なものですよね。パンデミックの間、誰もが「これからは効率的な小型機(ナローボディ機)だけで、中距離や長距離を飛ぶ時代になる」と予測していました。しかし、蓋を開けてみれば、国際線の需要は爆発的に回復しました。ボーイングの決算発表で驚いたのは、787ドリームライナーへの自信です。彼らは現在、月産5機で生産していますが、これを2025年か2026年までに月産10機に引き上げる計画です。受注リストを見れば分かりますが、ユナイテッドやサウジアラビアの新しい航空会社リヤド・エアなどから、途方もない数の注文が入っています。

さらに、長く待たされている777Xについても、カルフーンCEOは「2025年の初号機納入に向けて順調だ」と断言しました。エミレイツのような大口顧客が、この機体を喉から手が出るほど欲しがっているのです。

イェンス・フロッタウ: エアバス側も同じですよ、ガイ。A350の生産レートを現在の月産5〜6機から、2026年には月産10機に引き上げる準備をしています。 特に注目すべきは「A350-1000」です。この最大モデルが、かつてのボーイング747やA380が担っていた役割、つまり「ハブ・アンド・スポーク」の主役として、主要路線で非常に重宝されています。また、A330neoについても、一時は受注が伸び悩んでいましたが、ここに来て再び注目を集めています。A321XLR(超長距離型小型機)の導入も控えていますが、それだけで全ての需要を賄えないことがはっきりしたのです。

マイケル・ブルーノ:もう一つ忘れてはならないのが「貨物機(フレイター)」の戦いです。これは今、両社にとって非常に重要な戦場になっています。歴史的に、貨物機市場はボーイングの独壇場でした。747F、767F、777Fと、彼らはこの分野で圧倒的なシェアを持っていました。しかし、エアバスはA350F(貨物型)を投入し、ボーイングの牙城を崩そうと真っ向から挑んでいます。

ガイ・ノリス:その通りです、マイケル。ボーイングも黙っていません。彼らは777-8Fという次世代貨物機を開発しており、すでに多くの受注を獲得しています。 面白いのは、これらすべての新型貨物機が「環境規制」によって突き動かされている点です。旧式で燃費の悪い貨物機は、2020年代後半には国際的な規制で飛ばせなくなる可能性があります。そのため、物流大手や航空会社は、今すぐに新しい、クリーンな貨物機を確保しなければならないのです。

ジョー・アンセルモ:つまり、旅客機でも貨物機でも、メーカー側は「売るものがない」のではなく、「作るのが追いつかない」という嬉しい悲鳴を上げている状況なわけですね。

外部リスクと将来への展望

マイケル・ブルーノ: ジョー、これらすべてのポジティブなニュースの一方で、私たちが注視しなければならない「逆風」も存在します。その一つがジェット燃料価格です。 現在、原油価格よりも、製油所のキャパシティ不足による「スプレッド(価格差)」が問題になっています。燃料費高騰は航空会社の利益を圧迫します。今のところ、旅客需要が非常に強いため、航空会社は運賃に転嫁できていますが、これがいつまで続くかは不透明です。もし景気が後退し、消費者が高い運賃を払えなくなれば、航空会社は新造機の導入スケジュールを遅らせるなどの判断を下すかもしれません。

ジョー・アンセルモ:地政学的なリスクについてはどうでしょうか? 冒頭で「ビジネスは順調だ」と言いましたが、中東の状況などは影を落としていませんか?

イェンス・フロッタウ:今のところ、直接的な注文のキャンセルといった動きは見られません。しかし、ギヨーム・フォーリも触れていましたが、中東はエアバスにとってもボーイングにとっても非常に大きな市場です。エミレイツ、カタール、エティハド、そしてサウジアラビアの航空会社。これらの企業の動きが地政学的な理由で停滞すれば、両社に大きな痛手となります。 また、中国市場も依然として「ワイルドカード(予測不能な要素)」です。ボーイングはようやく737 MAXの納入を再開しようとしていますが、米中関係の冷え込みが常にリスクとしてつきまとっています。

ガイ・ノリス: もう一つ付け加えるなら、労働力の問題です。サプライチェーンの混乱の根底には、熟練したエンジニアや整備士が業界を離れてしまい、戻ってきていないという事実があります。 ボーイングもエアバスも、そしてティア1、ティア2のサプライヤーも、新しい人材をゼロからトレーニングしていますが、これには時間がかかります。どれだけ高度な設計をしても、それを実際に組み立て、検査する「手」が足りなければ、月産レートを上げることは不可能なのです。

ジョー・アンセルモ: なるほど。つまり、要約するとこういうことですね。ボーイングもエアバスも、歴史的なレベルの受注残を抱え、製品に対する需要はかつてないほど高い。しかし、同時に、複雑すぎるサプライチェーン、熟練労働者の不足、エンジンの信頼性問題、そして不安定な世界情勢という、地雷原の中を歩いているような状態であると。

まさに「かつてないほどビジネスは順調(Booming)」ですが、それは非常に危ういバランスの上に成り立っているということですね。

皆さん、今日も素晴らしい分析をありがとうございました。マイケル・ブルーノ、イェンス・フロッタウ、ガイ・ノリス、ありがとうございました。

リスナーの皆様、今週のCheck 6をお聴きいただきありがとうございました。このエピソードが気に入りましたら、Apple PodcastsやSpotifyなどでぜひ評価やレビューをお願いします。また、AviationWeek.comでは、今回議論したトピックに関するより深い記事を読むことができます。それでは、また来週。

Podcast: How's Business At Airbus And Boeing?

Joe Anselmo Michael Bruno Jens Flottau Guy Norris May 01, 2026 

https://aviationweek.com/podcasts/check-6/podcast-hows-business-airbus-boeing



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