ボーイングCEOが語る新型機開発の現況、ComacC919へのコメント、FAA型式証明の進捗など最新情報。エアバスとのシェア競争にはガチにならない模様。


truss-braced wing

Credit: Boeing



ボーイングの商用機開発では、2035年から運用可能となる新型機につながるトラス翼コンセプト、より高度な自律性などの新しい技術に焦点を当てていると、同社社長兼CEOのデイブ・カルフーンDave Calhounが5月30日に発表した。

 ボーイングのノースチャールストン工場で行われたブリーフィングで、カルフーンは記者団に「当社はこの技術を真剣に狙っています」と語った。これは、ボーイングがNASAと共同研究中のトラス翼構造の機体に言及したもの。「2028年までに、うまくいけば、機能するかわかるだろう」。カルフーンは、新型航空機で同社が探求を始めた技術が多数あることを明らかにした。その航空機は「できる限り自律型に近いもの」とし、ボーイングは「新型中型機のデザインに戻る」つもりはないと強調した。彼は、「トラス構造翼は重要技術」と強調した。

 新しい航空機が単通路かワイドボディになるかは、「後で決めればよい」とカルフーンは述べた。「気長に待つしかない」。

 2022年11月、カルフーンは「ボーイングは今後数年間、新型機を市場に投入する予定はない」と発言したが、この姿勢に一部の航空宇宙アナリストは「ボーイングはエアバスに市場シェアをさらに譲るリスクを負っている」と批判していた。しかし、カルフーンは、違いを生む意味のある航空機を開発するためには、「多くが必要だ」と主張していた。

 また、ボーイング737 MAXナローボディプログラムは、50%の市場シェアに戻る必要はないとした。「重要ではないということです。それができないとは示唆していませんよ、当社はそれができると思っていますから」、とし、「市場シェア不足の大部分は、MAXの難航とその後の生産回復の遅れが原因」とカルフーンは主張した。

 さらに、737-7、737-10、777Xの認証取得作業が進行中で、「パイプラインはかなり充実している」と強調した。エアバスに遅れをとることについては、「ポートフォリオレベルで心配はない」という。737-8と直接競合するA220-500の可能性については、「胸騒ぎはない。相手は相当なことをやらなければならない。そして、(新機種を発表する前に)暫定的に何をするのか?それが問題だ」。

 エアバスのギョーム・フォーリーCEOは最近、同社が2035年から2040年の間に、従来型推進力を応用する新型ナローボディを検討していると発言している。エアバスのZeroE水素航空機も、同社計画によれば2035年に就航するはずだが、現行のナローボディより小型になる可能性が高い。

 カルフーンは、商業運航を開始したばかりのコマックC919で出現する可能性がある脅威を軽視している。「私は25年間、(中国の航空宇宙が)発展するのを見てきた」とカルフーンは言う。「C919は良い飛行機」であり、「中国の需要を満たす」だろう。しかし、生産能力を必要な水準まで引き上げるには、「長い時間がかかる」と警告した。C919が徐々に立ち上がっていく中で、「彼らは技術投資を続けていくだろう 」と見ている。

 ボーイングは現在、中国に航空機を納入しておらず、中国の航空会社が確定発注している737 MAXの運命は、同国の航空会社が運行停止した737を徐々に商業運航に戻しているため不透明だ。ボーイングの立場は、中国と米国の間の現在の貿易と地政学的な緊張により、さらに困難なものとなっている。「私たちが望んだ世界ではありませんが、特に供給が制限されている世界では大丈夫でしょう」。

 カルフーンは、2024年末までにサプライチェーンが完全安定することはないと考えている。「ゆっくり、着実に、サプライチェーンは再構築されています。しかし、それは本当に難しいことです」。「多くのサプライヤーは、たった1点の部品を作り、唯一の存在になっています」。彼は、ボーイングにはスピリット・アエロシステムズを買収するつもりはないと強調した。スピリット・アエロシステムズは、ボーイングのプログラムで著名な製造品質問題の発生源で、737製造における最新の不調は、標準外の製造によって約170機の再作業を必要とした。カルフーンは、ボーイングは「問題が起こるたびに失望している」ものの、スピリットとの関係は「建設的」だと述べている。一方で、「多くの(コラボレーション)」により、「能力のギャップは解決可能」とした。■



Boeing To Focus On Truss-Braced Wing, Autonomy For Next Aircraft, Calhoun Says | Aviation Week Network

Jens Flottau June 01, 2023


Jens Flottau

Based in Frankfurt, Germany, Jens is executive editor and leads Aviation Week Network’s global team of journalists covering commercial aviation.


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