アジア太平洋地区の航空需要回復の遅れは中国市場にあり。一方で、今再開されても対応できない旅行業界の事情もある。

 

 

  • 中国政府が再開に向け段階的アプローチをとる可能性

  • 短期的には交通量の大幅増加は考えにくい

 

 

 

国の国際航空市場の再開が、アジア太平洋の航空業界の見通しで主要なワイルドカードのままだ。中国の航空輸送量の回復は同地域の完全回復に不可欠だが、それがいつ、どのように実現するかで、不確実性がまだ多く存在している。

 中国はパンデミック以前はアジア太平洋地域の多くの航空会社に最重要市場の一つであった。しかし、中国本土の国際線キャパシティは、厳格なCOVID-19渡航政策のため、現在は見る影もない。

 アジア太平洋航空協会(AAPA)の事務局長スバス・メノンは、中国は航空業界にとって「部屋にいない象」のような存在だと述べている。11月3日にシンガポールで開かれたCAPA - Centre for Aviation's Asia Summitで、メノンは、中国関連の交通量は、国内および国際線含め、この地域で流行前は40%にも及んでいたと述べた。

 中国依存度が、アジア太平洋地域の回復が世界の他地域より遅れている理由の1つだ。CAPAとOAGのデータによると、アジア太平洋地域の国際線輸送力は2019年水準の52.6%に達した。だが北米の95.3%、欧州の85.3%の回復率を大きく下回る。

 中国本土の国際線キャパシティは、パンデミック前の8%で、アジア太平洋地域の主要市場で最低の回復率となっている。

 中国政府は、到着時検疫を義務付けるなどCOVID-19対策に加え、発着するすべての国際航空会社を特定路線の一握りの便に制限している。ここ数週間は若干緩和され、追加フライトが許可され、検疫時間も短縮された。また、COVID-19の陽性例を一定数以上搭載するとフライトを停止する、いわゆるサーキットブレーカールールが撤廃されたのも変更点として挙げられる。しかし、これら修正でも、航空会社のキャパシティに変化はない。

 Centennial Asia AdvisorsのCEOであるManu Bhaskaran氏、政治的な要因と医療システムのロジスティックスが再開のタイムラインに影響を及ぼすと述べている。11月11日にバンコクで開催されたAAPA年次総会で、同氏は、政治面では、2023年3月の全国人民代表大会まで大規模な動きが発表されることはないだろうと述べている。

 中国政府は「非常に慎重で保守的なアプローチ」を取るだろうと、同氏は指摘した。「再開を急がず中国はおそらく、段階的に規制を撤廃していくだろう」。

このため、来年末までに中国発着の国際線が急増することはないだろう、と同氏は予測する。

 他のアジア航空会社と同様、COVID-19以前、中国本土は全日空(ANA)にとって重要な市場であった。当時、中国本土と香港の市場を合わせ、ANAの国際線旅客数の25%、収益の15%を占めていたと、ANAのアライアンス・国際担当副社長、宮川純一はAAPAイベントで述べた。

 ANAの中国本土への運航能力は流行前の20%しかないが、3月末までに約30%まで増やす目標と宮川は述べた。

 フィリピンにとっても中国市場は極めて重要であると、Cebu Pacificの最高商務責任者Alexander LaoはCAPA会議で述べた。中国本土は、COVID-19以前はフィリピンにとって2番目に大きな観光客の供給源であり、1位になる勢いだった。

 中国がCOVIDゼロ政策を近いうちに広く撤廃するとの楽観的な見方は少なくなっていると、ラオは述べてる。「航空会社の問題は、中国が(短期的に)再開しない場合、新しい市場や顧客の供給源はどこに、見つけるのかということです」。

 シンガポールのチャンギ空港グループの航空ハブ開発担当マネージングディレクター、リム・チン・キアットは、CAPA会議で、中国がいつ再開するかはまだ「全員が当てずっぽうで見ている」と述べた。しかし、これは今のところ必ずしも問題ではない、と言う。「短期的には、我々の仕事は我々のために切り開かれている」。「中国が開国するのを待っている間、十分すぎるほどの仕事がある」。

 中国の航空輸送が回復すれば、国際線の回復に追いつくために今でも緊張状態にある航空システムでさらに圧力がかかる可能性がある。

 ラオはアジア太平洋地域の多くの部分でネックがあり、「中国復帰前からあった」と述べた。彼は、中国の国際線の潜在的な増加を処理するために、地上業務の人員とリソースが不十分な空港があると疑問視している。

 中国本土市場の再開が漸進的で段階的なアプローチとなれば「旅行業界に朗報」と太平洋アジア旅行連合のCEOであるOLiz OrtigueraはCAPAイベントで言った。

 Ortiguera は旅行業界が各地で人手不足に直面しているので彼女に「中国が[他の市場] と同時に再開しなかったのはありがたい」と"話したあるホテルの幹部の言を引用した。

 「今こそ、中国が開放されたときのために準備をし、キャパシティを確認しておく必要がある」と彼女は語った。■

 

China's Return Is Key Issue For Asia-Pacific Region Airlines | Aviation Week Network

Adrian Schofield November 17, 2022

 

Adrian Schofield

Adrian is a senior air transport editor for Aviation Week, based in New Zealand. He covers commercial aviation in the Asia-Pacific region.


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