GETTY
破綻した航空会社には、意外なほど共通の理由がある。
パンナム、ブラニフ、ピープルエクスプレス。最近では、ノルウェージャン・エアやWOW。航空業界には成功例も多いが、驚くような失敗例もある。失敗した航空会社が他社に買収され、路線、機材、社員が新たな人生を歩むこともある。USAエアウェイズがそうだった。また、その航空会社で働いていた人や、利用していた人にとって、その航空会社が思い出のひとつになってしまうこともある。
あらゆるタイプの航空会社が失敗してきたが、失敗の理由はすべて似通ったパターンだ。航空会社の失敗には重要な理由が5つあり、理由を知り、回避することは、将来の失敗を減らすのに役立つ。その5つを紹介したい。
コスト抑制に失敗
筆者が勤めていた航空会社で新しく最高財務責任者を募集した際のことだ。候補者が当時勤めていた会社より同社が小規模だったため、躊躇していた。候補者のCEOは、「しかし、わが社は60億ドル企業であり、コスト面でも大企業だ!」と言ったそうだ。冗談のような話だが、このような状態は、世界各地の破綻会社の多くに共通している。
航空会社の大部分はプライステイカーだ。つまり、自社で価格設定をコントロールできず、市場が設定した価格に適応する。しかし、各社はコストのほとんどをコントロールしている。失敗した航空会社は、達成可能な収益と発生コストのギャップに適切に対処していなかった。これは、より多くの収益を期待できるビジネスモデルを選択したものの実現しなかったときに、そのビジネスアプローチをサポートする資金を使い切っていたからかもしれない。非効率的な契約を結んだり、「今投資すれば収益はついてくる」というアプローチを取ったからかもしれない。どんなビジネスモデルでも、ほとんどの航空会社は効率的になることができ、コストコントロールは航空会社にとって重要である。ユナイテッドの「ネクスト」では、コントロール可能なコストは4つの重要な柱の1つだった。
成長を急ぎすぎた
航空会社は、規模が大きくなればなるほど、固定費をもっと広く分散させることができるという、スケール・エコノミーに優れたビジネスだ。航空会社の失敗の中には、急速に成長しすぎて、成長を管理できなくなったことが原因もある。この「先手必勝」アプローチは、結局、会社の配慮を散らし、乗客に不満を抱かせ、路線が十分に成長するより前に外部資本を必要とすることが多い。管理できる成長と加速した成長のバランスが、繁栄する航空会社と衰退する航空会社の違いとなる。
急成長で、乗務員訓練に大きな負担がかかり、ネットワークの多くが「スプールアップ」モードになる。ASMを増やし、ASMあたりのコストを下げようとするあまり、会社は収益曲線に大きく遅れをとることになる。また、十分なリソースを持たずすべてを守れなくなり、競争的な戦いをすることになる可能性も出てくる。成長は良いことだが、過度な成長は命取りになる。
路線の逸脱
ピープル・エクスプレスがニューアークからブリュッセルまでボーイング747を飛ばしたこと、小さくて若いアメリカ・ウエストがフェニックスから名古屋まで飛んだことを忘れられる航空ファンはいるだろうか?こうした行動は、以前の成功から大きく逸脱し、各社を財政的に破綻させた。WOWも同様で、小型のナローボディのエアバスA320やA321でのフライトに成功していたのに、アイスランドからアメリカ西海岸に飛ぶため非常に高価なエアバスA330ワイドボディをリースした。導入機材は他の機材よりも優先的に路線投入された。アイスランドの季節性は適切に考慮されていなかった。他方で短距離用の小型機では、季節により就航地を変えてコントロールできた。
ひとつ成功しても、他の成功は予測できない。イースタン航空のパイロットは、同社倒産で職を失い、一緒に新しくキウイ航空を立ち上げたが、初日から財政的に大失敗した。飛行機の操縦ができることと、財政的に成功した航空会社の経営とは、関係がない。航空会社の中には、過剰なまでに野心的な機材構成にこだわり、会社のすべてに負担をかけつつ、事業範囲を拡大した会社もある。すべての人にすべてを提供しようとするのも、失敗のもとであり、失敗した航空会社が踏襲している誤りである。高収益のニッチを見つけた航空会社は、ニッチから脱却する決定の前に、熟考する必要がある。ライアンエアーやサウスウエストが成功し続けているのは、これを理解しているからだ。
細部へ気を配らなかった
航空会社というのは、いいときは比較的利益率の低いビジネスだ。数百ベーシスポイントのコスト増が、利益と損失の分かれ目となる。航空会社の失敗には、細部まで十分な注意を払わなかったことが一因となることがある。例えば、スケジュールの効率や、機材が飛行の間に地上で過ごす時間「ターン・タイム」などが挙げられる。また、あらゆる契約書に目を通し、どこにコストアップやエクスポージャーの可能性があるかを知ることも、一例である。しかし、最も大きな例は、会社がどこで利益を上げ、どこで損失を出しているかを知り、その結果を改善するため物事を変える意欲を持つことだ。
筆者がスピリット・エアラインズのCEOに就任したばかりの時点で、オンライン旅行会社のエクスペディアは、売上の3%、販売コストの25%を占めていた。会社はエクスペディアの利用が気に入っていたが、エクスペディアがスピリットしか選択肢がないときに最安値だけを売り、スピリットに多大な料金を請求していることを認識できていなかった。そこで、わずかな収益をリスクにさらす価値があると判断し、エクスペディアとの契約を解除した。5年ほどして、スピリットは大幅リストラされた契約でエクスペディアに復帰した。アメリカンエアラインズでのキャリアの初期に、当時のCEOボブ・クランドールが、大規模な従業員イベントで、ある支店長に、その支局が前月にウェスに費やした金額を尋ねるのを聞いた。そして、「もし、あなたが支店を運営していて、ボロ布にいくら使っているか知らないのなら、あなたは自分の支店のことをよくわかっていないことになる」と、観衆に語りかけた。航空会社の経営には、細かな点まで気を配らなければならないし、気を配らなければ、コントロールできなくなることもある。失敗した航空会社には、真正面にぶつかってくる車を見ていない会社が多い。
データより感情に基づく意思決定
「あの路線はうまくいくはずだ」と凡庸なルートプランナーが口にする。、過去12ヶ月間、赤字だったのに、その路線をネットワークに残しておくのである。業績に結びつかないビジネス目標を決めてしまうことが、多くの航空会社が失敗してきた原因だ。例えば、「お客さんは無線LANが大好きなんです」と言っても、無線LANには相当なコストがかかり、誰もその料金を払わないので、航空会社のマージンは縮小してしまう。機材決定から、座席の構成、ネットワークの決定、従業員の行動まで、失敗した航空会社は、数字に従ったり、何が本当に起こっているかを示すダッシュボードを作成せず、直感で行動することが多いのが共通する。何かが間違っているとわかっていれば、解決できる可能性は高い。しかし、何をすべきかについて感情に任せ議論するのであれば、財務状況の悪化を覚悟しなければならない。
もちろん、航空会社の破綻理由は他にもある。スコットランドのロッカビー上空で起きたパンナム103便の爆発事故は、同社の終焉直前の事件となったが、それ以前にも、上記5項目のうち少なくとも4項目で同社は苦しんでいた。大胆なアイデアを持った大物が航空業界にごろごろしているが、アイデアのすべてがうまくいったわけではない。今日、最も成功している航空会社は、ここに示した5つの項目のいずれにもひっかからない。苦労せず、直感のまま戦略を立てるような航空会社が最終的に失敗する。■
Five Big Reasons That Airlines Fail
Ben BaldanzaContributor
May 26, 2022,05:02pm EDT
Follow
I am the former CEO of Spirit Airlines, where my strong team transformed the company into the highest margin airline in North America and created a new model for air travel in the US. I now serve on the board of JetBlue Airways, am Chairman of Six Flags Entertainment, am an Adjunct Professor of Economics at George Mason University, and co-host the top 1% podcast Airlines Confidential.
0 件のコメント:
コメントを投稿