ボーイング737エコデモンストレーター・エクスプローラーで先進デジタル通信を試験し、飛行管理の概念が変わりそう(Aviation Week)

 

ボーイング737エコデモンストレーター・エクスプローラーでデジタル通信を試験(Aviation Week)

ガイ・ノリス 2025年12月10日

クレジット:https://aeropeep.com/whats-the-promise-of-trajectory-based-operations-tbo-what-changes-to-air-traffic-management-atm-are-expected/

ーイングの最新エコデモンストレーター・エクスプローラー(ユナイテッド航空所有737-8)は、より安全で効率的な運航を実現する先進デジタル通信システムを実証する飛行試験に欧米で成功した。

10月から11月上旬にかけて米国、英国、北西ヨーロッパで実施された9回の飛行を含む試験キャンペーンは、インターネットベースのマルチリンク通信システムであるインターネットプロトコルスイート(IPS)の最新評価となった。

IPSは、飛行経路管理をデータ駆動で空間・時間・高度の3次元で制御する先進的な航空交通管理概念「軌道ベース運用(TBO)」につながる基盤技術と見なされている。TBOは現行の区間単位管理ではなく飛行経路全体を管理し、米連邦航空局(FAA)の次世代航空交通管理計画「NextGen」や欧州の航空交通管理近代化計画「SESAR」の中核を成す。

ボーイングの最高技術責任者(CTO)トッド・シトロンは、TBOによって可能となる交通の最適化は、航空空間の容量を増加させつつ、燃料使用量と排出量を最大10%削減する可能性を秘めていると述べている。

「IPSは、セキュリティ向上を提供するとともに、複数のリンクを同時使用し混雑とコックピットへのデジタルトラフィックを軽減する能力を通じて、軌道ベース運航を真に強化・支援する一連のプロトコルだ」とシトロンは本誌に語った。「つまり、既存の利点を伴う軌道ベース運航の導入において重要な要素だ」。

写真提供:ポール・ウェザーマン ボーイング

「今回の試験では、欧州でも実証できた。さらにマルチリンク機能の試験や衛星通信リンクの統合も可能となり、IPSのこの側面を実証できた。これはIPSの運用に向けた成熟化で必要なステップの一つだ」とシトロンは語る。

ボーイングは、飛行試験データが「技術的枠組みの変更と将来の実装に向けた標準化委員会による策定に活用される」と述べている。IPSは2019年と2021年のエコデモンストレーターで先行試験され、2022年にはエアバス、ボーイング、欧州航空安全機関(EASA)、米連邦航空局(FAA)の合同タスクフォースにより、2035年までの航空データ通信調和に向けたネットワークソリューションとして推奨された。

従来のプロトコルが過負荷になりやすく、これに代わる、より大容量の新しいネットワークを提供する IPS の試験は、衛星通信プロバイダーのインマルサットが欧州宇宙機関(ESA)と提携して開発した衛星通信ベースのグローバル航空交通管理システム「アイリス」など通信データリンクシステムの将来的な世界的な展開に向けた重要な一歩となる。

ESA は、衛星通信プロバイダーの Viasat と共同で、コリンズ・エアロスペースおよびハネウェル(いずれも航空電子ソフトウェアを提供)とともに、ecoDemonstrator キャンペーンに参加した。その他の協力機関には、タレス、エンブリー・リドル航空大学、NASA、SITA が含まれる。

「このシステムの技術的な実現可能性を実証し、想定外の問題がないか確認することを目指した」とシトロンは語る。「その点で今回のキャンペーンは大成功だった。特に、VHF リンクから衛星通信リンクへ、またその逆へ切り替える機能は、非常にうまくいった。ソフトウェアなどのいくつかの異なる構成を試す機会も得られた」「貴重な学びとなった」。

今回の試験では、737の標準通信管理ユニットを、最新の完全な[インターネットプロトコルバージョン6(IPv6)]IPS接続ソフトウェアを搭載したユニットに交換した。128ビットアドレスを持つIPv6は、32ビット長のIPv4アドレスに代わる次世代IPとして設計された。

メディア非依存性を設計思想とするIPSは、将来の接続インフラの一部を形成する。このインフラには、VHF音声やVHFデータリンクモード2といったレガシーシステムに加え、IPSベースの新規デジタルデータリンクが含まれる。具体的には、大陸域向けLバンド航空デジタル通信システム(LDACS)や、海洋域向け衛星通信(SATCOM)などのシステムが該当する。

「展開に向けて課題はまだある」とシトロンは言う。「航空機モデルに応じたソフトウェア更新がその例だ。地上リンクのみか衛星通信リンクの使用かにで異なる。また地上リンク部分のIP利用をサポートするため、航法サービスプロバイダー側のソフトウェアも必要だ」「実現可能な製品は登場しつつあるが、真の認証と運用開始には数段階を踏む必要がある」。

シトロンによれば、今後実施予定の試験(詳細は未定)では、TBO(全飛行時間)ベースの運用実証に焦点を当てるという。■

ガイ・ノリス

ガイは『アビエーション・ウィーク』誌のシニアエディターで、技術と推進システムを担当。コロラドスプリングスを拠点とする。


Digital Comms Tested On Boeing 737 EcoDemonstrator Explorer

Guy Norris December 10, 2025

https://aviationweek.com/aerospace/emerging-technologies/digital-comms-tested-boeing-737-ecodemonstrator-explorer



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