無人貨物機で物流の世界が大変化する可能性。技術は生まれている。法規制や物流業界の対応が必要となってきた。米国の事情。

 

パイカPykaの自律型電動貨物機ペリカンは、同社が農薬散布用に開発した機体を応用している。同社は、ゼロエミッションの短距離離着陸旅客機開発に向けた一歩と見ている。写真提供:Pyka

イケル・ノーシアMichael Norciaは、貨物飛行機を出がけるつもりはなかったと述べている。2017年にベイエリアの両親のガレージでPykaを起業したとき、ゲームプランは、航空スタートアップ起業多数が追い求めている聖杯、ゼロエミッションかつ無人操縦の旅客機への足がかりとして、電動自律型農薬散布機を作ることだった。


規制や安全性の懸念が少ないこともあり、貨物輸送より農業散布の方が初期の事業見通しが良いとノーシアは共同設立者と判断した。農地上空を飛ぶので、墜落しても農作物に被害が出るだけで、人に被害が及ぶことはない。

しかし、2021年にパイカのペリカンがコスタリカのバナナ畑に散布に成功すると、大型貨物運搬用ドローンを探していた企業がノックしてきたとノーシアはフォーブスに語っている。「各社が何度も当社に来て、『御社の技術はどこよりも進んでいる。これを改造して貨物機を作れないか』と言ってきた」という。

月曜日、パイカはペリカンの貨物版を発表し、荷物400ポンドを満載時の最大航続距離は150マイルに達した。機首から腹部にかけてスライド式のトレーがあり、66立方フィートの内部空間にソフトシェル付きの電子商取引用トートバッグが5つ入る。ペリカン・カーゴは12月に最初のテスト飛行を行い、パイカはローンチカスタマーであるスカイポーツSkyportsが2023年後半に英国で未公表の沖合島への毎日試験サービスを開始すると見ている。

オークランドに拠点を置く新興企業のCEOノーシアによると、スカイポーツと他の2社からペリカンカーゴの発注とオプションを80件受けているという。ノーシアによれば、「少数派」ではあるが、手付金つきの注文もあるという。ある顧客は、カリブ海で同機を使いたいと考えている。農薬散布機と同様に、パイカ公表しない条件で機体をリースしている。同社によると、この電気飛行機はエナジーコストとメンテナンスコストが低く、飛行時間あたり15ドルになる。また、荒れた土や草の滑走路でもわずか500フィートで離着陸できるため、船や地上交通に頼っている遠隔地にも必需品を提供できる、と同社は述べている。

30歳のノーシアは、「最初は孤立し、十分なサービスを受けられない農村部をターゲットにすることが、安全規制当局にロボット飛行機の飛行を許可してもらう最も簡単な方法です」と言う。「ペリカン・カーゴがもっと人口の多い地域でも使えるほど安全だと当局に納得してもらうための一歩なのです」。

「10時間かかる電子商取引の荷物を2時間で配達できれば、10億人に小さな、漸進的な利益となります」と、彼は言う。「しかし、1000人に莫大な利益をもたらすより、その承認を得るのは難しいのです」。

ノーシアは、自律型電気飛行機で貨物輸送に成功した者が、旅客市場でも勝者になる可能性が高いと言う。「貨物輸送で何百万時間もの飛行時間を積み重ねてから、乗客輸送に移行するのは非常に論理的な流れです」と言う。

旅客機への中間段階、あるいは最終目標として、貨物市場をターゲットにした航空業界の新興企業は他にもある。バーモント州のベータテクノロジーズBeta Technologiesは、ヘリコプターのように垂直離着陸できる操縦式電気飛行機をUPSに売り込んでいる。ベータ・テクノロジーズは、2024年に市場投入するため安全認可を得たいと考えている。サンフランシスコに拠点を置くエルロイエアElroy Airは、フェデックスFDXをハイブリッド電気貨物ドローンの発売顧客に想定し、ダラスで試験を今年計画している。同じベイエリアのスタートアップであるXwingは、セスナ・キャラバン含む既存の小型飛行機をロボット化し、貨物配送を行おうとしています。

いずれも、電動化やパイロットの排除でコストを下げ、航空貨物をトラック輸送と比較して短距離で価格競争力のあるものにしようとしている。マッキンゼーの航空コンサルタント、ロビン・リーデルは、地域航空貨物市場は現在、50ドルの急送封筒や緊急に必要な物資に限られていると言う。「地上での飛行時間を数時間短縮するため、10倍以上の料金を支払う人はあまりいません」と彼は言う。短距離輸送に使われる旧式ターボプロップ機は、通常、二次都市と、荷物を集めて仕分けするハブ空港の間を1日1往復する。

しかし、2つの点で混乱が生じる可能性があるとリーデルは言う。新しい電気飛行機が本当に安価に運用できるようになれば、小さなコミュニティとハブ空港間で1日にもっと多くの貨物便が飛ぶようになるかもしれません。また、倉庫や工場の駐車場など、現在の飛行機が着陸できない場所に着陸できるため、配送網の再構築につながる可能性がある。

パイカをはじめとするドローンによる貨物配送の志望者がコストを下げられるかで最大の要因は、機体運用に従事する人が何人必要になるかとだ。現在、規制当局は1台のドローンを同時に監督する安全監視員1人を想定している。人件費を削減するためには、1人の人間が複数機体を同時に安全に監視できることを規制当局に納得させる必要がある。(マッキンゼーは、それが小型の単品配送ドローンの運用コストにどれだけ影響するかをモデル化した)。

ノーシアは、パイカとその他電動航空機の競合他社との違いは、単純なことだと言う。大型の自律型電動飛行機を商業的に運用している唯一の企業であるということだ。

パイカは現在、中米で5農薬散布機5機を飛ばしている。2021年7月からは、ノーシアが「地球最大のバナナ生産者の1つ」と表現する社名不特定の企業向けに試験サービスを実施し、最近別の企業との協働を開始した。両社とも、それぞれ100機程度まで規模を拡大したいと見ているという。昨年3700万ドルのシリーズA資金を調達したパイカは、他の中米諸国やブラジルにも事業を拡大する計画だ。■

This Robot Electric Cargo Plane Could Be The Start Of A Wave That Transforms Shipping

Jeremy BogaiskyForbes Staff

Senior editor with eyes on the skies


Jan 30, 2023,07:00am EST


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