グラマン・アルバトロスの再生産を目指すオーストラリアに新明和工業含むメーカーも支援。新世代機として75年前の機体がよみがえり、ニッチ市場にアピールできるか注目。

 

Image: AAI


カンタスは飛行艇ビジネスを発展させており、アルバトロスがオーストラリアのアンフィビアン・エアロスペースAmphibian Aerospaceで生産が開始される



世界中が水素で動く飛行機や空飛ぶタクシーに取り組むなか、オーストラリアのノーザンテリトリーの首都ダーウィンでは、航空界の伝説がよみがえろうとしている。グラマン・アルバトロスが、オーストラリア企業、アンフィビアン・エアロスペース・インダストリーズ(AAI)により、G-111Tとして生まれ変わり、生産再開される。



アルバトロス・プロジェクトとは?


アルバトロスは、1947年にグラマン・マラードの改良型として初飛行した飛行艇で、航空ファンに知名度が高い。オーストラリアで製造されるG-111Tは、デジタルエイビオニクスとプラット&ホイットニーの最新鋭ターボプロップエンジンを搭載し、この機体をよみがえらせる。

 AAIは数年前にHU-16とG-111アルバトロスのFAA型式証明書を取得しているが、この非常に野心的なプロジェクトの立役者はAAI会長のKhoa Hoangだ。2021年12月の発表会で、同会長はアルバトロスG-111Tの世界市場は巨大で、「このクラスでは独占的な地位を占める」と述べ、次のように付け加えた。

「大型旅客機と競合するのではなく、補完するもので、だからこそ、オーストラリアで製造し、わが国の航空機製造能力の再興で完璧なプラットフォームとなる 」。


Image: AAI


ゼロ・エミッション機をめざす


当面はプラット&ホイットニーの従来型エンジンの使用が中心だが、ホアン会長は75年の歴史を持つアルバトロスでも、ゼロエミッション航空の将来を十分に見据えている。発表会の席上で次のように述べた。

「ゼロ・エミッション・ハイブリッドを搭載したアルバトロスや、44人乗りストレッチ型など、新機体製造用の次世代技術にすでに取り組んでいます」。

 AAIは、登旅客輸送、捜索救助、航空医療、貨物輸送、麻薬・法執行、人道支援、沿岸監視などの任務において、アルバトロスにグローバルな可能性を見据えている。広大な沿岸地域をかかえるオーストラリアは、改良型G-111Tの主要市場であり、ノーザンテリトリー政府の支援で、このプロジェクトは確かな後ろ盾を得ている。


Photo: AAI


アルバトロスの再生


今週、オリジナルのアルバトロスG-111がダーウィンに到着し、事態は現実味を帯びてきた。ダーウィン港の青い海の上を優雅に滑走するのではなく、大型トラックとトレーラーの荷台に乗ったアルバトロスは、5年以内に生産開始予定の新型機G-111Tのエンジニアリングプロトタイプとなる。


Photo: AAI


AAIはダーウィン空港に研究開発センターを設置し、CEOダン・ウェブスターをはじめとする主要スタッフが、今週到着したアルバトロス2機のオリジナル機材のうちの1機で作業を開始する準備をしている。


新しい産業の誕生

AAIと提携しているのは、ダーウィンを飛行艇の製造拠点にすることを目指す大手テクノロジー企業群でプラット&ホイットニー、ダッソー、そして海上自衛隊の飛行艇「US-2」を製造する新明和工業などだ。US-2は波高3mの荒海に着水し、わずか280mで離水できる。

 ウェブスターは、このような国際的な航空宇宙産業のリーダー各社が関わっているのは、「当社のやっていることとプログラムの実現性への大きな自信の表れだ」と述べている。

 「ノーザンテリトリー政府の支援により、AAIは、ノーザンテリトリーとオーストラリアに莫大な経済的利益をもたらす、高度に熟練した労働力と専門的なサプライチェーンの全く新しい産業を創造しようとしている」。

 航空機は素晴らしい技術の結晶だ。アルバトロスのような非常に成熟した機体が、任務に最も適しているという理由で再び生産される。約75年前に設計され、オーストラリア北部で製造される航空機が、世界初の水素で動くゼロ・エミッション機になれば、どれほど嬉しいことだろうか。■


Albatross Flying Boat Making A Comeback As The G-111T In Darwin

BY

MICHAEL DORAN


Comments

Popular posts from this blog

GE, P&W、エンジン部品の素材で重大な損傷に繋がりかねない不良が見つかる。FAAが改善命令を近く発出の模様。品質管理があきらかに不足しているのか。

航空会社にとってエアバス、ボーイングの売れ筋ナローボディ混合フリートのメリット、デメリットとは?

エアバスが中国COMACのC919に警鐘を鳴らす---「見て見ぬふりはできない」